第6話 父との会話

静寂が聖域を包み込んだ後、ゼリオンはゆっくりと続けた。「私の野望が家族を離散させ、そして今、私たちの前に新たな試練をもたらしている。しかし、ヴィヴィアン、私たちにはまだ希望がある。あなたの力で、私たちは過ちを正し、再び和平を築くことができる。」


ヴィヴィアンは混乱と怒り、そしてわずかな希望の感情が交錯する中で、ゼリオンを見つめた。「私が信じる和平は、力によって支配することではなく、理解と共感に基づいて築かれるものです。もしそれが本当にあなたも望むのなら、私たちは共に働くことができます。しかし、私はあなたの言葉を簡単には信じません。あなたの行動があなたの真意を示すことになるでしょう。」


ゼリオンは頷き、深い悲しみを含んだ表情を浮かべた。「それが公平な判断だ。私は過去に多くの過ちを犯してきた。今はその償いをし、あなたとイリオスが目指す和平のために尽力する時だ。」


イリオスは父アスタロスに目を向け、静かに尋ねた。「父上、私たちは人間と共に和平を築くことができると信じていますか?」


アスタロスは長い沈黙の後、ゆっくりと答えた。「我々竜は古来より、平和と調和を最も大切にしてきた。ヴィヴィアンとあなたが示す絆は、我々にとって新たな希望の光だ。もしゼリオンが真に和平を望むなら、我々もその道を歩む準備ができている。」


ヴィヴィアン、イリオス、ゼリオン、そして竜たちは、それぞれが抱える痛みと希望を胸に、新たな未来への第一歩を踏み出す決意を固めた。この瞬間から、彼らの旅は単なる和平を目指す旅ではなく、過ちを乗り越え、真の調和をこの世界にもたらすための使命となった。


ヴィヴィアンは一歩前に踏み出し、力強く宣言した。「私たちの旅はまだ終わりではありません。和平への道は困難かもしれませんが、私たちは恐れずに進んでいきます。共に、新たな歴史を作りましょう。」


聖域に集まった全ての者たちは、ヴィヴィアンの言葉に力を得て、それぞれの心に新たな決意を抱いた。未来への道は遠く険しいものかもしれないが、彼らは共に、より良い世界を目指して進むことを誓った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

竜話者がいる世界 青木タンジ @sakaaaaaan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画