第27話_ラスボス討伐計画

 生徒会副会長の世良よりメッセンジャーアプリのグループトークにて、生徒会メンバー全員に召集指示が入った。


 なぜ、全員招集なのか。

 涼介には心当たりがあった。ありすぎた。

 生徒会メンバーににらまれつつも、神尾公園の夏祭り参加を強行し、コロッセオ参加者に絡まれたうえ、動画まで撮られたという失態を犯した。

 涼介は、星太と共に公開処刑の如く、世良から説教を喰らうことを覚悟していた。


 重い足取りで学校へ向かっていると「おはよ」と笑顔で軽く手を上げる星太と合流した。

 「なんで呼び出されたんだろうね」と星太は笑った。

 「いやいやいや。間違いなく神尾公園だろ」

 「なんで?」

 「だって、動画撮られたんだぜ」

 「ああ。アップされていたよね。ちゃんと動画見た?動画見たけど、撮影者が笑っちゃうくらい下手過ぎて、僕たちって特定できないよ。絶対」

 「そうか?」

 「そうそう。大丈夫だよ。だから、きっと生徒会のメンバーにだって気づかれていないよ」

 「だと、いいけど……」

 そう言いながら、涼介と星太は生徒会室へ入った。


 真っ先に目に入ったのが、世良が腕を組んだまま仁王立ちしている姿。その顔は明らかに不機嫌そうなものであった。



 絶対、怒ってるよ……

 絶対、絶対……俺たちが原因だよ……



 涼介はそう思いながら生徒会室を見回すと、知らない男が2人いた。1人は茶髪……というよりは赤に近い色の髪を短く整えている男。もう1人は、黒髪、パーマ、メガネで大人っぽい雰囲気を纏っていた。鋭い細い目が特徴的な男。どちらも生徒会室には似合わない私服姿であった。

 涼介は星太の方を見る。星太は首を横に振った。

 再度、世良の方を見た。世良の黒髪にメガネ。一方、黒髪パーマでメガネの大人。キャラ被りで機嫌が悪いのかもしれない。


 生徒会室の扉が開き、生徒会長の木下が入ってきた。

 「みんな集まってるわね」と見まわした。

 木下が軽く咳払いをした。

 「早速ですが、お二方を紹介します。あの火神直樹さんと藤田一郎さんです」

 木下は、効果音のジャーンみたいな感じで手を広げて演出しているが、誰も反応しなかった。涼介自身も、どうリアクションすればよいのかわからない。

 「あれ?盛り上がるところなんだけど……」と木下が苦笑いをした。


 「木下さん。さすがに無理だわ……そのテンション」と赤髪の火神と呼ばれた男が笑いながら、一歩前に立った。

 「コロッセオ参加者で、スカウトマン・プロ―トス1位の火神だ。よろしく」

 涼介は「1位?」と首を傾げたが、生徒会の上田が「え……プロ―トス1位」と声を上げた。その反応に火神は満足そうな笑みを浮かべた。

火神は「で、こっちは……」と、隣の黒髪パーマメガネの藤田と呼ばれた男を指さした。

 指された藤田は、ため息をつきながら「藤田だ。宜しく」と言った。

 藤田のあいさつに、火神は納得していないといった顔をしながら「スカウトマン・トリトス1位ってくらい言えや」と言った。

 その言葉に、再び上田が声を上げ「トリトス1位」と目を丸くした。

 藤田はため息をつきながら「順位なんて、何の自慢にもならんよ」と言った。


 木下が再び軽く咳払いをする。

 「火神さん、藤田さんに来ていただいた理由があります」

 木下は、生徒会メンバーを見回した。

 「みんなで協力してラスボスをやっつけます。決行日は8月18日、日曜日」

 生徒会室がざわついた。

 涼介は、とっさに生徒会の先輩であり、武道場の師範代、生徒会武闘派の久原のほうへ視線を向けた。さすがの久原も驚いていた。


 木下は言葉を続ける。

 「プロ―トス1位の火神さんがいる。トリトス1位の藤田さんがいる。そして、私たち生徒会には『ラスボスを退けた唯一の男』がいる。火神さんのグループ、藤田さんのグループ、そして生徒会全員で力を合わせば、バケモノレベルの強さを持つラスボスだって倒せるはずだわ」

 木下の言葉にかぶせるように「それで、どいつだ?ラスボスを退けた男って……この中にいるんだろ?」と火神が言った。

 その言葉に、藤田のメガネも光ったような気がした。

 「もちろんいるわよ。でも、それは今度にしましょう。まだ、準備段階ですから」

 「……いいじゃねぇか。紹介してくれよ。どんな戦いだったか聞きてぇ」と火神が言った。

 その言葉に木下が微笑む、

 「詳細のお打ち合わせは後日に。今から、生徒会での打ち合わせがありますので」

 「ええ、そうですね。では、私たちはこれで失礼するよ」と藤田が言った。

 「え?帰るの?話聞かないの?興味ないの?」と火神は食い下がったが、藤田が「帰るぞ」と言い、火神の腕を引っ張り、生徒会室を出ていった。



 木下が大きく息を吐いた。

 「と、いうわけで……ラスボス討伐するよ」と木下が笑みを浮かべた。

 久原が口を開こうとしたが、世良が間に入り久原を制した。

 「時間は短いが、ラスボス討伐戦へ向けて準備に入る。私と会長とで、すでに討伐戦のシミュレーションをしている。詳しくは直前で話をするが、討伐戦はペアで行動することになる。そのため、討伐戦までの間、他の参加者からの襲撃を警戒するとともに、こちらで決めたペアのチームワーク強化を図る時間としたい」


 世良は木下の方に目配せをした。木下は、頷いた。

 「では、ペアを発表する」と言い、世良はメガネの位置を治す。

 「まず、会長の木下と私、世良」

 「久原と和久井」

 「上田と古賀」

 「美馬と伊藤」



 涼介は声には出さないが、心の中で「マジかよ……」と思いながら、美馬の方を見た。

 美馬は世良の方を見ず、手元にあるアニメ雑誌を真剣なまなざしで熟読していた。

 生徒会の中で、一番謎な美馬との組み合わせに、涼介は頭を抱えた。




<登場人物>


■崎山高校

・伊藤涼介(ゴーレム):高校1年生。久原道場の元門下生


・高山明:高校1年生。同級生。思い出作りに燃える。

・長谷川蒼梧:高校1年生。同級生。美形。

・桜井千沙:高校1年生。同級生

・笹倉亜美:高校1年生。同級生

・小森玲奈:高校1年生

・池下美咲:高校1年生


・木下舞(デコピン):高校3年生。生徒会会長。学校内の人気絶大。

・世良数馬:高校3年生。生徒会副会長

・久原貴斗:高校3年生。生徒会議長。武闘派。久原道場師範代。

・上田琴音:高校3年生。生徒会総務

・美馬龍之介:生徒会2年生。生徒会会計

・和久井乃亜:生徒会2年生。生徒会監査

・古賀星太(ベルゼブブ):高校1年生。生徒会所属。涼介の幼馴染。久原道場門下生



■株式会社神楽カンパニー

・神楽重吉:神楽カンパニー代表取締役会長

・白い仮面の男:スカウトマン・プロ―トス

・鳴海玲奈:スカウトマン・デウテロス。社員。

・石田:スカウトマン・ヘクトス

・北上慶次:スカウトマン・エナトス、ラスボス



■コロッセオ参加者

・田中一成:予備校生

・火神直樹:赤髪

・藤田一郎:黒髪パーマメガネ



■特殊武装部隊(十二神将)

・日高司:特殊武装部隊隊長

・名前不明:特殊武装部隊隊員

・花村美咲:特殊武装部隊隊員

・伊藤康介:特殊武装部隊隊員、伊藤涼介の兄

・岡田紗弥:特殊武装部隊隊員

・名前不明:特殊武装部隊隊員、アメリカ出身

・鈴木翔:特殊武装部隊隊員

・名前不明:特殊武装部隊隊員

・名前不明:特殊武装部隊隊員

・野崎文雄:特殊武装部隊隊員、エンジニア

・名前不明:特殊武装部隊隊員、アメリカ出身、エンジニア

・イシャ・ラナウト:特殊武装部隊隊員、インド出身、エンジニア


■不明

・水野七海:日本刀を持つ女

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