@qwettiopojhdscbj

「とてもとてもおいしい。

とてもとてもにがい。


それをたべてしまいました。

たべてたべてたべて、おなかいっぱいです。



『普通』の人間がいました。

『普通』の人間は。」



小さい頃から私は、幸せだったのだと思う。

「だった」というのは、私がそれを覚えていないからだ。

覚えていることといえば、小学生だった12月25日の夜中に目を覚ましたらプレゼントがあったことである。

その時の私は、確かゲーム機が欲しかったのだろう。しかし、「プレゼント」はアナログゲームだった。

正月かその月に近い時に祖母から貰った「プレゼント」は欲しいものではなく、幼かった私は「それ」を拒絶した。


私は自信で満ちていた。私はとても容姿が良いのだと。


小学生の時、私は校庭で遊ばされていた。

地球儀型のもので、回して遊ぶものだ。

子供ならではの度胸試しに近いものでもある。

見事に私は耐えたのだが、吹っ飛び、べたっと地面と触れ合うはめになった。

そんな日に限って、お気に入りの服を着ていた。顔面のことよりも、服のことの方が心配で仕方なかった。

あぁ、思い出せる。

担任の先生にお姫様抱っこされたことを。

次の日、アンパンマンのような顔で教室に向かった。

呼吸が辛かった。独特の血の匂いが嫌だった。詰まる状態が嫌だった。


その後にも、11人に囲まれたりと色々あったがどうでも良いことである。


中学生になった私は、相変わらず『普通』で退屈な日々を過ごしていた。


そんな中で創作ダンスをすることになった。

天地がひっくり返ったとしても盆踊りでさえ上手くできないであろう私がよりによって、とても甘い曲を出来るわけがない。

では、何が出来るのかとなった。しかし、知らないうちに、とある人が歌うスイートマジックを踊ることを余儀なくされた。

案の定、私の体育の成績は2だった。


高校生になった。

この頃の私にはとても好きなものがあった。それは今も変わらない。

中学生の頃、クラスメイトから電子音が歌う曲を教えてもらった。

『普通』の私は、あっという間にのめり込んだ。


とある雨の日に、学校から家に帰る途中、ボンネットに乗った。

一瞬のことで、気がついたら「地面と触れ合った」状態の私がいた。

今思い出しても、乗客の人が不憫でならない。乗客の人が降りて来ず、運転手を引き摺り下ろして来なければ、どうなっていたのだろう?

そんなことをふと想う。


そんな普通を過ごしてきたが、

そんな普通を過ごしてきたからこそ、

世の中一般の『普通』や『常識』が未だにわからない。


とても私には息苦しい。

私は今も昔も変らず独りだ。


それはきっと私が『普通』ではないからである。

今もこれからもただただ腐ったものを食べなければならない。

そう決まっている。

普通だと気づかなければ一生、苦いものを知らずに甘いものだけ食べていられたのに。


もうこれ以上は喰べれない。


だから私は、喰べることをやめた。


そんな噺。

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