第10話・自動販売機

 私は自動販売機に転生していた。

 清涼飲料水を売っている至って普通の自動販売機だ。

 私が設置されたのは暑い夏の日だった。

 電源を入れられ、中身の清涼飲料水を入れられて。

 最初のうちは炭酸飲料やお茶がメインの売り上げだった。

 冬になると、温かいお茶類やポタージュがメインになる。

 たまに変わり種も入れられながら。

 開けられちて、入れられを繰り返す。

 電源が切れることはない。停電にならない限りは。

 販売するときには吐き出さねばならない。

 そんなことを繰り返し10年の時が流れる。


 交換の時期が訪れる。

 ずっといた場所に哀愁を感じながら、撤去されるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る