磁石人間

羽弦トリス

第1話感電

平田隆史は今年5歳になる息子を連れて公園へ行った。

滑り台、ブランコ、ジャングルジム。

子供が、平田に手を振りながら滑り台をすべる。

今の時期が、一番かわいい年頃だ。

「パパ〜、背中押して!」

と、ブランコに乗る。息子の背中を押して、ブランコを揺らす。

「あっ、ソウマ君」

「あっ、マミちゃん」

と、隣のブランコに息子と同じ保育園児の友達が近寄ってきた。

その子の、パパに挨拶した。

しばらくは、2人でブランコ遊びをしていた。

マミちゃんのお母さんに、2人の子供を見てもらい、平田と中山健二と言う、マミちゃんのパパと一緒に公園の外で喫煙した。

「最近は暖冬で、冬の実感が湧きませんね」

と、中山が言うと、

「そうですね。もう、季節は夏か冬ですね。春や秋は感じませんね」

と、ポケット灰皿にタバコの灰を落としながら話していた。

何かと、保育園のイベントの話しをしながら。

2人は5分程で、ブランコのある場所へ戻った。

平田と中山は自販機で飲み物を買って5人でベンチに座り、ジュースを飲んだ。

平田の嫁さんは、看護師なので休日出勤も珍しくない。

「奥さん、大変ですね。看護師って過酷ですものね」

と、中山の嫁さんが言った。続けて、

「私はスーパーのパートなので楽ですが、看護師はそうはいきまさんから、改めて中山さんの奥さんの凄さを感じます」

「まぁ、うちは共働きじゃないとやっていけませんから」

「でも、平田さんは銀行マンじゃないですかぁ」 

と、健二はマミちゃんの頭を撫でながら言う。

「銀行員なんて、薄給ですよ」

「色々あるんですね」

と、会話をしていたら子供達がシーソーに乗りたいと言うので、中山家族はそちらへ向かった。

「ソウマ君、一緒に行こうか?」

と、健二が言うのでソウマは平田に、

「パパ、いっていい?」

と、尋ねると、

「いいよ」

と、答え、ソウマは走ってシーソーに向かった。

平田は、ちゃんと姿が見えるベンチに移動してソウマの見守りをした。


しばらく、シーソーを楽しむソウマを見ながら缶コーヒーを飲んでいた。そして、空き缶をベンチに置くと、何かが手に当たった。

何だろうと、確認すると、何かのスイッチが付いていた。

『はて、何のスイッチだろう?ON、OFFとある』

と、思いながらスイッチをONにした。

すると、バチッ!と、いって平田はベンチから転げ落ちた。

一瞬、感電してしまった。直ぐにOFFにしてベンチに恐る恐る触ると何も起きなかった。

『なるほど、イベント何かの電飾に使うのだろう』

と、考えていた。

しばらくすると、ソウマが走って近付いて来た。

「パパ、ママが帰って来た!」

と、叫ぶ、

「マーマー」

と、ソウマは妻のミサキに向い走り出す。

ミサキは公園に入ってきて、

「ちゃんといい子にしてた?ソウマ」

「うん。今ね、マミちゃんのパパとママと一緒にシーソーしてたの」

「パパ、いつもありがとね。明日の日曜日は休みだから、たまにはこれで飲んできて」

と、ミサキは夫に一万円札を渡した。

「いいのか?」

「中山さんのパパと焼き鳥屋さんにでも行っておいでよ」

すると、中山一家がミサキに挨拶した。

「中山さん、お久しぶりです。今日はソウマの面倒を見てもらいありがとうございました」

「いいえ、たまたま一緒に遊んでいただけですよ」

と、健二の嫁さんが言った。

2人は子供の手を繋ぎ、世間話をしていた。

そして、2人とその子供達は喫茶店に向かった。

残された、平田と中山はニコリと笑い、平田が、

「一杯、どうですか?」

と、言うと、

「いいですね。私がいつも通う焼き鳥屋でビールでも」

と、2人は居酒屋に向かおうとした。

平田はズボンにくっついた砂をパタパタと払った。 

しかし、黒い砂はしつこく取れない。

「あぁ〜、平田さん。背中に砂鉄がついてますから、私が落とします」

と、中山は平田の背中の砂鉄を落とした。

そういう、中山も手のひらは砂鉄だらけであったが本人は気にしていない。

パパさん達は歩き始めた。 


その様子をある人間が、観察し、ニコリと笑いコーラを飲んだ。

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