散歩 とある美術館
つき
エッセイ
古い物が好きだ。
自然の造形物や、又は匠の品などが年月を経た物、と言えば、しっくり来るだろうか。
今この瞬間とは、違う空気を
どれも決まって、渋く、だけれど柔らかな光を放っているのもいい。
そんな私が先日、諸用で仕方なく出掛けた遠方の駅にて、徒歩三十秒の所に建っている、とある美術館を見付けた。
歩くのが
和とモダンがマリアージュした様な、明るく気持ちの良いロビー。
その奥に湯気を立てているのは、茶釜?
和カフェが併設されていて、お抹茶がいただけるらしい。
正面の壁に鎮座するのは、黒くドッシリと佇む、古めかしい扉だ。
ここが展示室の入り口のようだ。
私は、会計を済ませて
ドキドキしながら扉の前に一歩踏み込んだ。
すると、どう見ても重厚そうな扉が、左右にサーッと素早く開いたではないか。
私はこの、今昔折衷の美術館の設計者に、
いいね!を押したい気持ちでその不思議な雰囲気の自動ドアをくぐる。
最初の展示室は、真っ暗だった。
そして悠久の昔に造られた品たちが、各々、仄かなライトに照らされていた。
とても美しい。
この美術館は、何という素敵なコンセプトなのだろう。
所蔵品は種類も時代も、良い意味で、てんでばらばらで、その収集は多岐に渡っているようだ。
まるで趣味の良いセレクトショップのよう。
それを、
〝竹”や〝筆”や〝山”など、企画毎に漢字一文字のテーマを決めて、展示している。
私好みだ、どれも飽きずに見られる。
よくある美術館の、絵画のみ、陶器のみ、掛け軸のみ、同年代の品のみなど、
同じ種類のものばかり並べてある展示では、正直、途中でつまらなくなって来るのだ。
ここは解説文もとても楽しい。
私の様な、
1000年前の和歌つづりや、近代のボンボニエール、国宝や指定文化財などなど、貴重な逸品が幾つもある。
一通り見終わって、私はここがすっかり気に入ってしまった。
出口から、椿の咲く日本庭園を少し歩いて、
又、最初のロビーに戻って来る。
やはり、素敵な空間だ。
どうやらお茶とお団子のセットは、早々に売り切れてしまうらしい。
家から少々遠いのが難点だが、
次回は、お茶をいただきに来ようと思う。
fin
散歩 とある美術館 つき @tsuki1207
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