55 3人目のホムンクルス

 翌朝、一晩考えて結論を出した結果ネヴェアにホムンクルスを作ることに決めた。

 作ることは昨日のうちに決めていたんだが何に悩んだのかって使用する遺伝子の選択に時間がかかった。

 サユキの問題があるので両性にするのはほぼ決定なのだがネヴェアやフェリの遺伝子を使ったホムンクルスを渡すのはどうなんだ?と悩んだのと両性にするには男性の遺伝子が必要だったからだ。

 ネヴェアは俺が使う分には気にしないが自分そっくりな相手を自分が使うことを嫌がり、フェリは知らない男と自分が混ざることを嫌がった。

 ということで意見を聞きつつ俺のわがままを出来るだけ通した結果フェリ、俺、サユキの3人を使ってホムンクルスを作ることになった。

 フェリの強い要望でインキュではなくサユキを使用することになり俺の遺伝子も出来るだけ減らされもう両性にした意味もほとんど無さそうだがサユキいわく射精さえすれば効率よく精気を吸い取れるので問題はないらしい。

 これでインキュと同じくMPがある限り精気を吸われても大丈夫で、外からMPを補充できる精気供給機ができる。

 フェリにホムンクルスの誕生を見せるにはまだ早いと判断し準備部屋の外に出てからネヴェアにホムンクルスの核を渡す。



「ネヴェア、この核にMPを100流し込んであの辺に放り投げろ。」


「はいよ、魔力を流し込んで投げればいいんだね。」



 そう言ってネヴェアが核を投げた瞬間視線が固定される。

 草むらに投げられたお陰で最初は見えなかったが徐々に大きくなった肉塊から胸が大きくなって小さな物が生えたフェリが現れた。



「旦那が何が現れても攻撃しないようにって念を押してたのはこういうことかい。」


「そういう事だ、立ち上がる様に命令して名前をつけてやれ。

 その後俺の命令も聞くように命じてくれ。」


「名前!?あたいがつけるのかえーっと、立ち上がれホムンクルス。

 あんたの名前はジュリアだよこれからよろしくね。」


「はい…」


「この男は私の主人であんたの主人でもある、この男の指示はあたしの命令だとおもいな。」


「はい…分かりました。」


「ジュリアかいい名前じゃないか、ネヴェアが大剣の時に一緒に組んで戦いやすい武器は何だ?」


「武器は長柄じゃなければ何でも良いかな、むしろ盾を持って敵を抑えてくれる方が重要だね。」


「盾を持つならクルスに教育係を頼むか。とりあえずお下がりを持たせて街で武器を買う事にしよう。」



 今必要な服や靴などはゴブリン達の魔石狩りで大量にあるフラッシュカメレオンの皮で作る。

 着せてみたらジュリアの気配が薄くなった気がするがレベルが上がるまでは丁度いいだろう。

 敵の注目を集めないといけない盾持ちには致命的なのでレベルが上ったら作り直さないといけないな。

 逆にネヴェアやフェリの装備はこっちで作り直したほうが良いかも知れない。

 今日からは魔石より先に盾用のウォータークラブの甲羅と防具用のロックオクトパスの皮をゴブリン達に集めてもらおう。


 そうしてジュリアの事を話し合っていると不機嫌そうなドライアドが話しかけてきた。



「あんた達蜜の採集に来たのかと思ったらなんて化け物を生み出してんのよ、あんた達に精霊の実や蜜を渡してよかったのかしら?」


「だから人間じゃないって言っただろ?ゴーレムみたいな物なんだよ。

 世界の敵になるような事をするつもりは無いから安心してくれ。」


「人間はすぐに気が変わるから信用は出来ないけど疑わしいだけで殺すわけにもいかないもの今回は見逃してあげるわ。」


「ありがとう、それで蜜はもう採取しても大丈夫かな?」


「ええ、魔石のおかげで花達も元気になったから好きになさい。」


「それじゃあクルス、ダリア、ジュリアは花から蜜を採取してくれ、クルスはまずジュリアにやり方を教えてやれ。」


「「「はい…」」」



 辺りを見回して花畑を見てみると確かに昨日よりも植物に元気がある気がする、花の重みで頭を垂れているものは見当たらないし土が見えていた場所も新たな草が生えている。

 周囲の木々には機能は無かった木の実まで生っていて精霊の凄さを物語っていた。



「そうだ木の実といえば精霊の実はひどい目に会ったぞ、あの激甘が普通なのか?」


「そんなわけないじゃない、ちょっとしたイタズラよ。

 お詫びに私の加護を付与しておいたから許してちょうだい。」


「加護?ステータスには何も増えていないようだけど。」


「あら?貴方が最初に食べなかったのね。

 最初に食べた人に加護が付いてるはずだから確認してみなさい。」


「なら加護が付いてるのはフェリか、後で聞いてみるよ。

 それで加護ってのはどういう効果があるんだ?」


「私の場合だと土属性への適性ね、水と光にもほんの少しだけ適性が付くけど誤差だから気にしなくていいわ。

 適性がある属性の魔法を覚えやすくなったり、使った魔法の威力が上がったり、風属性の魔法を受けた時に少し威力を弱めたりね。

 逆に風属性とは相性が悪くなるから気を付けたほうが良いわ。」


「すでに俺が風の魔法を覚えてたり覚えてるやつに食わしてたらどうするつもりだったんだ…」


「大丈夫よ貴方が属性を持っていないことは見れば分かるしそこのネズミが食べちゃっても死にはしないもの。」


「つまり考えてなかったってことか、まあいいか今回は良い方に転んだしな。」



 フェリは戦うにしても体を鍛え直さないといけないのでまずは魔法を覚えさせるつもりだったし土属性を持っているのはサユキのストーンウォールだけなので丁度いい。

 サユキに依存気味のフェリなら同じ属性な事を喜ぶだろう、夢にうなされたり思いだして苦しんだりしないようにサユキとインキュに魅了させ続けていたら見事に扉を開いてしまったようだ。

 ドライアドと雑談をしていたら採取を終えたクルス達が集まってきた。



「蜜も採り終わったし俺達はこれで街に戻らせてもらうよ。」


「魔石の魔力でなんとかなるうちに来てくれることを祈っているわ。」


「どれくらいの頻度で人が来るのか分からないしこればかりは分からんなぁ。

 何年も来ないつもりはないけど本当に祈るしか無いね、それじゃまた会おうドライアド。」



 別れを告げて街へ帰るために湖の北側を回って森の中を歩く。

 ジュリアのレベル上げのためクルスに教育させながら戦闘多めで進んだので帰るのに丸三日かかってしまった。

 Lv1でも大盾を構えてウルフの攻撃を耐えて上手く斧を当てる動きは完全にクルスの物と遜色無い、記憶力がいいだけじゃなくてそれをすぐに自分の動きとして実行できるのは本当に羨ましい。

 この3日間召喚獣達のおかげで中級のヒールであるミドルヒールを覚え、防具を作ることが出来た。

 レベル自体は昼間森の中を長時間歩くよりも寝るまでの数時間のほうが稼げるのだがこの森はモンスターの種類も多いし経験を積んで損はないだろう。記憶力もいいから忘れることもないだろうしな。

 門が見えてきた所でいつもの街に入るメンバーにネヴェアとジュリアを増やして草原を歩いていく。

 ネヴェアの腕はまだ治っていない、先にフェリを治すようにネヴェア自身が言い出してスカラの頑張りで徐々に修復されていっているがまだ時間はかかりそうだ。

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