45 山登り

 北門から出て森へ入りフォレコ、トラッド、インキュを呼び出す。

 今回の依頼対象がいるのは街のから北北東側にあるネイシー山と呼ばれている低い山だ。

 半日ほど森を北へ歩いて行くと今まで木々に塞がれていた視界が一面岩場へと変わった。

 視界は開けており高低差も余り無く緩やかな坂が何kmも続いている、高さ数メートルの大きな岩や丘で近場の視界はさえぎられているが何百メートルか先のロックウルフの群れは見えるのでまずはあれに向かうとしようか。

 進んでいく途中雨宿り用の物か何もいない浅い横穴が何個もあったり水たまりで水を飲んでいたネズミが逃げていったりとダンジョンには無い生態系を楽しみながらロックウルフのいた方向へ歩いていたがどうやらあちらもやる気だったらしい。


 一回り大きなロックウルフに率いられた10匹の狼が一丸となって近づいてきた。

 こちらは6人で対峙しスカラは俺のリュックの上、シドーはフォレコの影に隠れている。

 フォレコが群れの端に襲いかかり戦闘の火蓋を切ると正面からぶつかり合う、クリスの両隣に槍を構えたダリアとインキュが控え牽制をして5匹を引き受けサユキの魔法を受けた狼が倒れて呼吸を荒くする。

 トラッドの魔法を受けた狼は転びはしたがすぐに立ち上がり2匹が離れて俺の元へ回り込んで来た。

 1匹はスカラが倒してくれるだろうが残りの1匹の対応が間に合わないな。

 俺は急いでゴーレムを喚び出し遅れて向かって来るロックウルフの対応を任せた。


 フォレコとシドーがそれぞれ1匹づつ早々に倒しクリス達に加勢して戦闘が終了するとロックウルフの死体の処理をしてから準備部屋へと運ぶ。

 水場が無いので毛皮に血がついても洗えないが準備部屋に置いておくだけで綺麗になるなんて本当に便利だ。

 しかしあれだ部屋が狭い、レオゲンの街ではウルフの肉も普通に食べられているので毛皮を剥いだ肉も置いてあるのだから当たり前だが部屋の隅に重ねていても場所を取る。

 これは部屋を広げるしか無いな、悩む必要もないので2万ポイントを使って部屋の拡張を行う。これで20畳の大部屋となった。

 こうなると冷蔵庫も欲しいが時を止められる鞄を探してみるのが先か?


 今日は解体している間に日も暮れて来たのでこのまま準備部屋で夜を過ごそう。

 明日はアースタイガーが早々に見つかるといいな、ウルフの群れをすべて解体していてはすぐに日が暮れてしまうだろうし見つけるまで放置するしか無いのが勿体無い。

 血抜きができなくて肉は駄目になるが後で皮だけ剥ぐために準備部屋に積み重ねておいたら死体の山がいくつになるやら。





 翌日、ゴブリン達も久しぶりに連れてゲートを出る。


 昨日はゴーレムを喚び出したおかげで俺の元まで辿り着くことは無かったが今日は接近されることすら無いだろう。

 まぁ戦闘中はゲートに入っていれば安全なので危機ですら無かったが。


 さらに奥地を目指し山を登っていくがロックウルフの小さい群れは襲っては来ずに離れて行きこちらと同数以上じゃないと襲っては来ない。

 戦いたいなら走って追いかけるか人数を減らさないといけないという事か、今はアースタイガーを探しているので余計な相手をしなくていいから逆に助かるな。


 少し窪地になって岩塊が多く乱立している場所にたどり着いた時にようやくアースタイガーを見つけた。

 見通しが悪いので迂回しようと思ったのだがクルスから岩陰にアースタイガーを見つけたと報告された。

 言われてみればフォレコが向こうに行こうとしていたような気がする。


 意を決して岩場に近づいてみたが思ったより狭くそして岩が登りやすそうな形をしている、これは安全を取って俺はここに居てフォレコ達に倒してきてもらおうか。

 アースタイガーの依頼はもう受けなくてもいいかも知れない、ロックウルフの方が遭遇回数も多いし重い物を運んでも苦じゃない俺にはその方が儲けられるようだ。

 ゴールドランクの依頼であるロックライノクスですらロックウルフ50匹を持って帰るのと変わらない、まぁ向こうは一匹で良いのだけど未だに会えていない事を考えるとやはり乱獲したほうが早い気がする。

 日帰りで強いモンスターと戦おうと思うとやっぱりダンジョンには勝てないよな、ドロップが1種類しか落とさないから金にしづらくはあるが。

 ロックライノクスなんてダンジョンじゃ角しか手に入らないが買取価格が高いのはむしろ皮なせいで取って来ないのは怪しさ満点だもんな。


 などと考えているとゴーレムがアースタイガーを抱えて帰って来た。

 解体が始まった死体を見るに飛爪の傷もないしフォレコが顔を殴って叩き落とすか何かでもして下側からシドーのウォーターランスが突き刺さったのだろう。

 出来るだけ毛皮を傷付けない様に戦ってくれるのは有り難いことだ。

 依頼は3匹の討伐なので残り2匹を倒してきてもらう、待っている間ゴブリン達に護衛してもらっていたのだがロックウルフ6匹の群れに2回襲われそのうち俺の元までたどり着いた1匹を盾で思いっきりぶん殴ったら5m以上吹っ飛んでいった。

 流石Lv35のステータスだ飛びかかってきたウルフも冷静に対応でき、器用さのおかげか鼻っ柱を思いっきり殴ることが出来た。

 俺もそろそろホームセンターで買った斧じゃなくて剣でも持つか、裸の斧をベルトに刺しているより咄嗟に取り出しやすそうだしね…

 盾で殴ったのも斧が取り出せずに手間取ったせいだ、両手で使う用の柄の長い斧だから思いっきり引っかかった。


 アースタイガー3匹を倒して依頼分を終えるとロックウルフを倒しながら街の方へ道を戻る。

 ゴブリン達とトラッド、ゴーレムにはまたダンジョンへ戻ってもらい見た目6人パーティでの移動だ。シャドーキャットの能力がかなり便利だ闇のブレスレットも欲しいし次の狩り場候補によさそうだ。

 ロックウルフは大体6匹からの群れが多いので効率よく襲われたいなら6人でパーティを組んで準備部屋でクルス達に解体してもらえば1日100匹くらい目指せるかも知れない。

 ただシャワーがあるので血はなんとかなるがはらわたを一時的に入れておく物が今は無く外で処理してもらわないといけないのでバケツとタライも買い物リストに入れておこう。


 日も暮れてきたので狩りを終わりにして準備部屋に戻る、1日あれば街まで戻れる距離までもう少しといった所か日数も余裕があるし明日は午前中移動して午後からダンジョンでレベル上げをしてもらおうかな。





 次の日はロックウルフの相手はせず森との境目まで進んで早々に準備部屋に戻り防具を作って過ごした。

 未だにウォーターミンクの皮で作ったグローブとブーツだったのをナイトメアホースの物に交換し残りでマントを作る。

 皮が大きく1枚で作れるのでゴブリン達の分を更新しても余ったので念願の寝具を作って両親にも渡した。

 マットレスとシーツの間に入れておくと寝付きと寝起きが良くなるそうだ。

 早速夜に使ってみたがいつもは眠くなるのに1時間以上かかるのにスマホをいじっていても30分もせずに寝落ちしていたので効果は抜群だった。

 寝落ちに気を付けないといけないかも知れないが不眠に悩まされることが無くなるのがとても嬉しい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る