第1章 出会いと旅立ちと

第1話 夕暮れの丘

 晴れた空に茜色の夕日がとてもきれい。

 

 そう思うと、今更ながらに泣けてくる。

 ぐすっぐすっ……

 目に映る夕日がしゃぐしゃに歪んで見えた。小高い丘の上でティアはぼんやりと夕日を眺めていた。


 ――これからどうしよう。帰る場所、無くなっちゃった。


 理不尽な理由で神殿を追い出され、ティアは途方に暮れていたのだ。

 そして、今までの出来事を思い出していた。




 厳かな聖なる神殿。清浄なる香が満たされた空間。白い大理石で造られた建物。

 ここで私は働いていた。ついさっきまでだが――


 けど、私は神殿に仕える神官でもなければこのリューゲル王国で唯一、神の言葉を伝えることのできる聖女様でもない。

 ただの下働きの娘だ――


 私は生まれてすぐに神殿の前に捨てられていた。いわゆる捨て子というやつだ。

 それでも産みの親はきっと、少しでも私の幸せを願っていてくれたと思っている。昔は周りと比べて色々と複雑だったが、今はそう思うことにした。


 そうでなければ、神殿が運営する孤児院にはすぐには入れなかった。そこでは日常生活を送るうえでの常識は覚えられるし、読み書きも教えてくれる。

 

 これがもし、貧民街の裏路地に捨てられていたらこの年まで生きてはいなかったはずだ。もし、仮に生きていたとしても今より悲惨な生活だったと想像ができる。


 幸いにも孤児院を出た後もあっせん先のひとつとして、下働きとしてだが神殿で住み込みとして働かせてもらっていた。ありがたいことだと思ってはいるが・・ここまでは何とか良かった。


 ……だが、神殿に入って間もなく私は聖女様に嫌われてしまったのだ。

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