出資者へのインタビュー
私は良秀の
固く閉じ、開く予兆も無い、ただ上を向いて
けれどその内より、光が透ける様な品でした。
花開いたら、どんな姿になるのだろう。
まだかまだかと、開くはずもないその作品を前にして、
作品の買い取りには、少々狡い手を使いました。
アレは元々学祭の展示物でありました。ので勿論、値が着いている訳でもなく、展示が終われば何処ぞにでも
考えるだけでも腹の立つ。
アレほどの物に価値が付かないなど、あって良いはずも無し。
私は教師に、良秀の親に、そして良秀に交渉しました。
「これだけの額で申し訳ない。」
当初の値はさして高くは出せませんでした。そうですね。自分がこれほど、と思った額の三分の一程度の額でした。
下手に出しては、訝しまれてしまうと思った故での事でしたが、あの大人らは何と言ったと思います?
「この程度のモノに、そんな額、受け取れません。」
これだから、価値の分からぬボンクラは。
ただ一人、良秀だけがすんなり此方に応じてくれました。
「貴方が本当に、その程度と私を見たならば、この品は売れません。」
えぇ、えぇ。随分と大人らに雷を落とされておりました。けれど頑と譲らず良秀は私に言ったのです。
「貴方がこの子に感じた値段は幾らでありましたか。」
「三倍だ。だが今はそれ以上だ。」
これにはさしもの良秀も驚いた様でした。
けれどあの時私は感動していたのです。
良秀は既に、作家であった。自ら生み出したモノに責任があった。矜恃があった。そしてそれを解する耳目と頭ができあがっていた。
「言い値を出そう。私は君の、出資者になりたい。」
良秀とはそれ以来の縁となります。
半年後、彼が親に縁を切られて上京してより、私にとっては我が子の様になりました。
故にこそ、あぁ、あの子は全く不孝者だと思います。
地獄が
けれどそう、そうですね。えぇ、既にご覧になりましたでしょう。
地獄でしょう。アレは正しく、地獄の姿でありましたでしょう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます