15日目(投稿ミスではありません)
それから迎えた土曜日。俺たちは朱里ちゃんたち3人のスマホを買うために家電量販店にやってきていた。…木金はどうしたって?普通に過ごしてただけだけど?
「…わぁ。機械いっぱい!見てお兄ちゃん!」
「うん、いっぱいだね。はぐれないように気をつけてね」
着いてすぐに結衣ちゃんは周りが物珍しいのかあっちこっちに駆け回っていた。他のお客さんもいるけど、今のところは微笑ましそうに見てくれてるから迷惑ではない、と思いたい。
「…なら、お兄。うち、お兄と手、繋ぎたい。…か、勘違いしないでよね!お兄が迷子にならないようにするためなんだから!!」
「…日向?舜さんに迷惑かけちゃダメでしょ?」
「…羨ましいんでしょ、お姉。うちの方がまだ素直に言えるから」
「なっ!?そ、そんなわけないでしょ!わ、私はただ、舜さんの迷惑にならないようにって思っただけで…」
「はいはい二人とも、そこまで。他の人のことも考えないとね?」
「「ご、ごめんなさい!!」」
俺の後ろでそう言い合っていた二人を止めた。最近はこういうのも多くなってきて、これも一つの成長なのかなって思う。まだ2週間くらいしか一緒に過ごしてないけど、感慨深いものがあるな。
「謝らなくてもいいよ。じゃあ、3人で手を繋ぐか。朱里ちゃんもそれでいい?それとも、もうそういうのは恥ずかしい?」
「そ、そんなことないです!…ドキドキするだけなので」
「…そ、そっか。じゃあ、はい」
そう言って俺は朱里ちゃんと日向ちゃんに手をさしだした。朱里ちゃんは暫くそれを見つめた後躊躇いがちに手を取った。日向ちゃんはもう離さないとでも言うかのようにギュッと抱きつくように引っ付いてきた。
「あ〜!お姉ちゃんたちだけズルい!ユイもお兄ちゃんに抱きつきたい!」
「…ぐふっ!…ゆ、結衣ちゃん?急に抱きつくのはやめようね?」
「は〜い。…痛かった?」
「ううん、大丈夫。結衣ちゃんも怪我とかしてないよね?」
「うん!」
そんな風に話していると、戻ってきた結衣ちゃんが俺の背中に飛びついてきた。仲間外れにするみたいな感じになっちゃったから仕方ないんだけど、もう少し落ち着いてほしい、かな?
そんな風に四人で見て回っているとあっという間に目的のスマホが並んでいるところを見つけた。…けど、どれを買うのがいいんだろう?こういうのって選ぶのが難しいな。今どきの電子機器って高い=高性能ってわけでもないってことみたいだし…。
「…こ、これがスマホ。…高い!?こんなのやっぱり受け取れません!」
「…うちも、これはちょっと…」
「ゆ、ユイも。こんなの身につけるのは勇気がでないから…」
ここまで来て値札を見た3人はやっぱり遠慮が出てきたのかそんなことを言い始めた。それも、普段は明るい結衣ちゃんもスマホの値段に動揺してなのか遠慮するようなことを言い出したし…。よし!あんまり使いたくなかったけど、3人の安全には変えられないよね?
「…えっと、まさか断るわけないよね?だって3人がスマホを持ってくれるって約束してくれたもんね?」
俺がそう言うと3人は困ったように目を見合わせて頷いた。そうして並んでいるスマホを真剣に見比べ始めた。
「…あの、では、これをお願いします」
「…これ?本当にこれでいいの?」
「はい!…その、色んな機能があっても私たちには宝の持ち腐れにしかならないと思うので」
それからしばらくして、それぞれ赤、黒、白の色違いのスマホを手にした3人がいた。決まったことを代表して朱里ちゃんが意思表示してくれたけど、3人の手の中にあるのは簡易型と呼んでも間違いがないものだ。電話とメールのやりとりくらいしかできないようなやつだ。
「なるほど。確かに単純な所からの方が覚えやすいか。それに、何か不都合があるならまたその時に買えばいいだけだしな」
一先ず緊急時の連絡手段が手に入ったんだ。これで何かあれば俺にも連絡してくれるでしょ。退屈とかでも送ってくれるかな?
そうして3つのスマホを無事に受け取ることができた。そのまま俺達は連絡先を交換した。ついでに咲にも教えてあげようとしたのは止められた。…自分の口で聞きたいからって。
それから帰宅して夕飯の時間。最近は3人で協力して作るようになっていて、俺は見守るだけになっていた。…3人とも給食を作ることになって気合いが入ってるな。
「お兄ちゃん!ユイ、お兄ちゃんに電話したい!」
「ん?分かった。なら、俺は離れた場所にいた方がいいのか?」
「…ううん。どっか行っちゃヤダ。…やっぱりユイ、電話しない」
夕飯を終えて少ししたら突然結衣ちゃんがそんなことを言い出した。最初ならやっぱり雰囲気を出した方がいいかと思って俺が聞くと結衣ちゃんはそんなことを言い出した。離れなくてもいいなら別にこのままでもいいんだけど…。それに、もし使おうって時に使い方が分からないとかってなったら困るからね。
「ねぇ結衣ちゃん。俺に電話かけてみてよ」
「えっ?…お兄ちゃん、行っちゃうの?」
「ううん?ここにいるけど、せっかく結衣ちゃんにも携帯買ったんだから、使ってみてよ」
「うん!」
そうするとすぐに操作したかと思ったら俺のスマホに着信があった。相手は確認するまでもなく結衣ちゃん、だと思ったのに別だった。日向ちゃんからの電話だ。俺が日向ちゃんの方を向くと彼女は顔を背けてしまった。…とりあえず電話に出てみる。
「…どうしたの?」
「…これで結衣よりも先にうちがお兄に電話したことになる、よね?」
「ん?まぁ、確かにそうなるのかな?」
「お、お兄!?な、何で聞いて…」
「…いや、電話してきてくれたのは日向ちゃんでしょ?」
…日向ちゃんは順番を気にしてるのかな?それも、俺にとっての…。結局まだ咲、朱里ちゃん、日向ちゃんからの告白の返事もできてないんだよな。だから最近もまだ曖昧な態度になっちゃってる…。早く決めないと全員に迷惑がかかるって分かってはいるんだけどな…。
「お兄ちゃんどうしよう!?ユイのスマホ、壊れちゃった!」
「お、落ち着いて結衣ちゃん。…どうしてそう思うの?」
「だって、だって!…ユイ、お兄ちゃんに電話できなくなっちゃった…。うぐっ、ひっく。ご、ごめんなさい…」
「な、泣かないで。それは壊れたわけじゃないから。ね?」
結衣ちゃんはジワッと涙を浮かべて俺に謝ってきた。…そっか。結衣ちゃんは初めてだったんだし、繋がらないこともあるって知らないんだ。ちゃんと教えてあげないと。これは俺のミスだ。
「先に教えておくべきだったね。実は電話ってできなくなることがあるの」
「…そう、なの?」
「うん。その状況は色々あるんだけど、今は俺が日向ちゃんと電話してたからだね。俺のスマホは一つしかないから、他の人と電話してる時は繋がらないの」
「…壊れて、ない?」
「うん。もう一回かけてくれる?」
「…う、うん」
俺は日向ちゃんの電話を一度切ってからそう言った。結衣ちゃんはまだ少し緊張してるのかぎこちない手つきでスマホを操作して電話をかけてきた。そうしたら今度は俺の方にちゃんと結衣ちゃんからの電話がかかってきた。
「ね?壊れてなかったでしょ?」
「!?お兄ちゃんの声がスマホから聞こえる!電話すごい!!」
…すぐ側で結衣ちゃんもいるから、二重に聞こえて不思議な感覚だけど、結衣ちゃんが喜んでくれてるならよかった。
それから洗い物を終えた朱里ちゃんも合流して3人に電話が繋がらない状況があることを教えた。…洗い物くらいは俺がやりたいけど、全部合わせて料理だってことで3人の中で順番になっている。みんながやりたいって言ってるなら止めはしないけど、なんか申し訳ない気持ちもある。…まぁ、朝食は俺と朱里ちゃんで作ることが多いからその時に美味しい料理を作ることで恩返し、ではないけど感謝の気持ちにしたいな。
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