2日目

 次の日の朝、俺はいつもより早い時間に目を覚ました。そして簡単に準備をしていると階段を降りてくる足音が聞こえた。


 「もう、ちゃんとして2人とも!帆立さんに迷惑かけないようにしないと!」

 「…ユイ、まだ眠い」


 そんな風に朱里ちゃんに引っ張られてみんながリビングにやってきた。…結衣ちゃんよりも日向ちゃんの方が朝は弱いのかな?まだ寝てそうだった。


 「おはよう。まだ時間あるし、ゆっくり寝てていいよ」

 「帆立さん!…もう起きてたんですか?すみません、私たちがゆっくりしてたせいでお任せしてしまって…」

 「そんなのは気にしなくていいよ。…だけど、寝てる2人の手を引いて階段を降りるのはもう止めてね。危ないから」

 「…はい、ごめんなさい」

 「うん、次は気をつけてね」


 俺は落ち込んでいる朱里ちゃんの頭を撫でた。そのおかげかほんの少し笑顔が戻った気がした。…やっぱり、可愛い子は笑顔がいいよね。


 「…む〜!ユイも!」

 「…しょうがないな〜」

 「えへ〜。ユイ、好き」


 そんな様子が羨ましかったのか結衣ちゃんが自分もと頭を差し出してきた。それを空いているもう片方の手で撫でてあげるとすぐに嬉しそうな顔になった。…癒されるな〜。


 っと、日向ちゃんはどこだろう?そう思った俺が周りを見渡すと俺がベッド替わりに使っていたソファに丸まっていた。俺はそんな日向ちゃんに毛布をかけてあげた。


 そこから俺は早めに朝食の用意に取り掛かった。まだ7時前だったし、ここまで早起きだとは予想してなかったから全く用意ができていなかった。そこから朱里ちゃんも手伝いたいということで2人で作った。…結衣ちゃんもやる気は見せてくれたけど、うん。


 「ご飯できたよ?起きて、日向ちゃん」

 「…んぅ」


 まだ眠そうだったけど、何とか日向ちゃんも起きてくれた。小さな手で目を擦っている日向ちゃんは可愛かった。


 それからみんなでご飯を食べて準備していたら、あっという間に出発の時間が迫っていた。それから到着したトラックの運転手さんによると、膝の上に乗せるのはダメみたいだった。それでも、子供1.5人で大人1人の換算だったみたいで全員車に乗ることができた。


 「…ここが、車の中?」

 「すご〜い!広い広い!」

 「…2人とも、はしゃぎ過ぎよ」


 そんな会話が後ろから聞こえてくる。…朱里ちゃんはたしなめてるけど、その表情には興奮がありありと見えた。こんなことでも喜んでくれたなら良かったかな?


 そうこうしていると、最初の目的地である服屋さんに到着した。…今さらだけど、やっぱり女性服用のエリアに足を踏み入れるのには躊躇いが…。3人だけで見に行ってもらうか。


 「…じゃあ3人とも、俺はここで待ってるから自分で選んできてくれる?とりあえず、下着と部屋着、寝巻きに外出用を最低でも10着ずつは選んでね」


 そうすると、また昨日と同じように結衣ちゃんがやってきて、俺の服を弱々しく引っ張った。


 「…一緒」

 「…ごめんね、結衣ちゃん。ちょっとだけ恥ずかしいな」

 「!…ユイと一緒、恥ずかしい、の?」

 「そんなことない!…分かったよ。じゃあ行くか」


 俺の言葉が足りないせいで結衣ちゃんを傷つけちゃった…。悲しそうな結衣ちゃんに俺は食い気味に否定した。


 …そこから時間をかけて服の買い物を終わらせた。周りからの視線は痛かったけど、3人は天使のような可愛さでした。


 「次はご飯かな?じゃあ…カレーにでもするか」

 「…かれ、え?」

 「…うん、カレー。美味しいよ」

 「…楽しみ」


 箸が必要ないかと思って選んだけど、カレーすら食べたことがないのか。分かってるつもりだったけど、やっぱり心が痛いな。


 「すみません!中辛一つと甘口三つお願いします!」


 お店に入ってすぐに俺は注文した。3人は物珍しいのか周りをキョロキョロ見ていた。


 くぅ〜。


 料理を待っていると向かいからそんな可愛らしい音が聞こえてきた。チラッとそっちの方を見ると朱里ちゃんが真っ赤な顔をして俯いていた。…ここは聞こえてない振りをしてあげるのが一番だよね。


 「お待たせしました。カレーの中辛と甘口三つです。…ごゆっくりどうぞ」

 「じゃあ、食べよっか」


 料理が到着してから食べ始めたけど、結衣ちゃんは何度か自分の分と俺の分を見比べているみたいだった。それが気になった俺は結衣ちゃんに直接聞くことにした。


 「結衣ちゃん、どうしたの?」

 「…同じ、じゃない?」

 「?カレーが?…辛さ以外は同じだと思うけど…こっちも食べてみる?」

 「…いい、の?」

 「もちろん。…はい」

 「あむ!…美味しい!一緒!」


 結衣ちゃんは中辛のカレーも美味しそうに食べてくれた。その笑顔を見るだけで癒される!…けど、贔屓ひいきはダメだよね。


 「朱里ちゃんと日向ちゃんも食べる?」


 俺がそう尋ねると2人もコクンと頷いた。それを見た俺は結衣ちゃんと同じようにスプーンに掬ったカレーを口元に差し出した。


 「はむ。…〜ッ!…へ、ヘラがヒリヒリます」

 「だ、大丈夫!?とりあえずお水飲んで!」

 「…ふぁい」


 朱里ちゃんは辛いのが苦手だったのか、少し涙目になっている。…ちょっと可哀想なことしちゃったかな?


 「日向ちゃんはどうする?辛いかもよ」

 「…うちだけ仲間外れはイヤ。…食べ、させて」


 …可愛い女の子からの上目遣いで食べさせてって!可愛すぎる!!


 「も、もちろんいいよ。…はい」

 「…あーん。…アレ?あんまり辛くないね」


 どうやら、辛いのが苦手なのは長女の朱里ちゃんだけみたいだった。日向ちゃんは逆に辛党なのか、少し物足りなそうにしていた。…まぁ、直前のやり取りで身構えてた部分もあるのかな?


 それから午後は家具の方を先に見ることにした。ベッドと机、クローゼットを3つずつ、テレビを2つ(3つでも良かったのに…)、ソファは大きめのものと小さいものを1つずつ。それから今よりも大きめのテーブルも1つ、椅子は多めの10脚。


 …これ以上はまた足りなくなったら買い足せばいいかな?ちなみに、今まではテレビは無かった。スマホがあれば要らなかったけど、せっかくだし。チャンネルの取り合いとかはよく聞くからそれぞれに買ってあげようと思ったのに3人から猛反対された。そこから間を取って2つになった。


 その後は生活用品を買い込むことにした。女の子に必要な物はよく分からないからみんなに選んでもらうことにした。最初は遠慮してたけど、足りなくなったらまた来ないといけないと話したら全力で頑張ってくれた…けど、悪手だったかな?思い詰めてなきゃいいけど。それで必要なものができても我慢しちゃうようにならないといいけど…。まぁ、俺がちゃんと気付けるようになろう!


 それから帰ってきたけど、3人は後ろで身を寄せ合って眠っていた。俺はその微笑ましい光景をしばらく眺めてから自室のベッドに運んだ。荷物も一通り運転手さんと協力して家に運び込んだ。


 そしてリビングだけ軽く整えた。流石に3人の部屋にベッドとかを運び込むのはまた後日にしよう。場所とかも決めてないからね。それはともかく、明日からはまた学校なんだよな。…ど、どうしよう?特に3人は小学生なんだよね?


 …まぁいいや、どうしようもないから。流石に3人を起こすのは心が痛いし。俺は気にしないことにして寝る準備を終え、ソファで横になった。

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