第65話 肉か魚か

 春の訪れを感じる穏やかな朝にベビーカーを押して公園まで来ると、一人のホームレスに出くわした。わたしはそっとベビーカーを彼から遠ざけ、何食わぬ顔をしなながらベンチに座った。彼の視線がこちらに向いていることを感じたのでスマホを手にする。日曜日というのにあたりには誰も人はいない。通報できるよう慎重にロックを外しながら警戒をした。ベンチなんかに座るんじゃなかったと思いながら息子の顔を見下ろすと、彼はこの世の何者にも恐れを感じていないような表情をしていて、ベビーカーの幌に吊り下げてあるカタツムリの人形を掴んでいた。――それが防犯ブザーであればよかったのに――。


「早織じゃないか」


 ホームレスの男性がわたしの名前を呼んだ。わたしは背筋に冷たいものが流れ込んだような驚きと気持ち悪さを感じながらも無意識にベビーカーを守る体制をとった。


[memo]

・季節への書き込みが足りない

・ホームレスの姿

・ステーキ 三田 あの店のシャトーブリアンで

・中とろ 不器用に分かれた割り箸をひっくり返して渡した


(没作より)


※パンツァー型で書いてから、これくらいのメモを残して次の日のわたしに続きを託す。そして結局書かれずに没となるわけです。最早何をオチとしていたのかすら思い出せません。(2024.4.5)

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