第2話 春の嵐は、少女の幽霊を連れてくる

ばあちゃん。僕は、ばあちゃんが怖い。それは、小さい時に、言うことを聞かないと、よく蔵に閉じ込められたせいだし、留守がちなお袋に変わって、面倒を見てもらったせいでもある。だから、ばあちゃんの言う事は、絶対なのは、わかっている。だけど。

「客だ」

ばあちゃんが、客が来ていると言う。初対面の人間を家に入れる事なんてできない。が、それは、あくまでも、初対面だからだ。

「客ではないよ」

僕は、否定した。

「前の学校の生徒だよ」

今の学校に赴任する前に居た子で、何かと問題を起こした子だった。僕も巻き込まれそうになったけど、以前から出していた移動願いが叶って、巻き込まれる前に、逃げるように、学校を変わっていた。だから、あちらから、僕の家に来るなんて事はあってはいけない。

「家にお通ししろ」

「ダメだよ。知らない人だ」

「嘘を言うな」

「嘘ではないよ。ばあちゃんは、知らない人だ」

「人ではない」

「は?人だよ。何言っているの?」

僕は、そう言われて、ドッキとした。人ではない。何故、ばあちゃんは、そう思うのか?僕は、何も言っていない。僕が、彼。そう、外で、待っているのは、前の学校の生徒。男子学生だ。彼は、何かと校内で、問題を起こしている。ばあちゃんが人ではないと言っている理由が、ある。それは、僕が最も、嫌いな理由だ。彼は、霊が見える。校内で、霊と話をしているのを何人も、目撃している。そして、僕は、霊の類は、大の苦手なんだ。勘弁してくれー。ばあちゃんが人ではないと言うのも、納得行く気がする。

「お前に話があるらしい」

「僕は、ありません」

僕は、ばあちゃんを振り切り、自分の部屋に、飛び込んだ。せっかく学校を変わったのに、家にまで、追いかけてくるなんて、どういう事なんだ。

「晴!」

思い通りにならないと、ばあちゃんは、癇癪を起こす。

「上がってもらったからな」

大声で、寝室から叫ぶ。なんて、元気なんだ。寝たきりだったり、歩き回ったり、とても同じ人物とは、思えない。

「お前の家のばあちゃん化け物だよな」

小さい頃、近所の子供によく言われた。自分でも、そう思っていたけど、他人に言われると腹が立つ。神出鬼没。その言葉がよく合う。

「家に来られると困るわけ?」

僕が、机に向かって、明日の準備を始めると不意に、後ろから声がかかった。

「え?ど・・・どして?」

「上がれって言われたけど」

「誰に?」

「妖怪みたいな・・」

妖怪みたいな婆さん。それは、僕のばあちゃんの事だ。って・・・。君は?

「勝手に上がらせてもらいました」

僕の前に、霊が見える高校生が立っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る