駄文制作機の矯正〜書くのが初めてすぎて駄文を作ってしまう自分を矯正する〜

雨の陽

Upward revision record.1 戦闘シーン

魔王城下郊外の僻地。

悍ましいほどの瘴気で禿げた大地にて、2体のバケモノは相対する。


両方ともヒトの形をしてはいる。してはいるのだが、その身に渦巻く魔力の奔流はバケモノのそれと形容するしかない。


威嚇するかのように放出する魔力に、この戦いを見届ける観察者の立場にあるダブン・キマグレは、くっと何かを堪えるように歯を食いしばった。


なぜ己はこんなところにいるのだろう。何度も考え、その度に放棄した思考だ。

決して己は、こんな魔境に居座っていいような存在ではない。

しかし、逃げられない。己の未熟さに打ち勝つためには、この過酷な試練すらも乗り越えなくてはいけないのだ。


諦めて、観察に戻ることにする。



己の左手、視覚的には白い魔力を迸らせている一人目のバケモノは、この世界の勇者と呼ばれる人間。名をユーシャ・ツカイマワシ。その身に宿す魔力総量はヒトの範疇を遥かに凌駕しており、一撃で都市一つを半壊させる極大神聖魔法を乱発できるほどだ。加えて聖剣も有しており、大抵の魔法攻撃で消費した魔力は聖剣が即座に回復させる。要するに、永遠に都市が半壊し続けるのだ。バケモノである。


それに対して己の右手、紫色の魔力を放出している二人目のバケモノは、魔族の王マオー・コンカイカギリ。あらゆる魔法を最高レベルまで極めた挙句、生物の限界を超えて成長し続ける魔導の大賢者だ。どう強いのかは説明がつかない。

手を振れば大地が割れ、言の葉を紡げば昼夜の概念が消失する。加えて、体術も結構いけちゃう系のバケモノである。



この二体のバケモノ達の全力衝突が、今まさに始まろうとしている。

重ねて問おう。なぜ己はこんなところにいるのだろうか。諦めると言ったが、あれは嘘だ。だって、無理に決まっている。こんな奴らの戦いに巻き込まれたら一瞬で消滅する未来しか見えn「魔王マオーよ!」………急に喋るなよ。



「私の名はユーシャ!ユーシャ・ツカイマワシだ!よく覚えておけ!これが死にゆく貴様への、唯一の手向けだ!」


「あぁ、しかと覚えたぞ、ユーシャ・ツカイマワシ!この魔王マオー・コンカイカギリに挑んだ、愚かにも勇敢な者として、生涯記憶に残しておいてやろう!それが貴様の、この世に残る唯一の誉れだ!」



名乗りから始まるとか、頭の中戦国時代なのだろうか。いや、戦国時代に名乗りがあったのかは知らんけど。

とにもかくにも、ここに人魔の長達による決戦の火蓋が切って落とされたのだ。




はじめに仕掛けたのはユーシャ。居合の構えをとったかと思えば、その体勢のまま魔王の懐へ一瞬で潜り込んだ。ユーシャが得意とする歩法の一つだ。

相手の意表をつき、一撃で万物を断つ不可避の斬撃——————。


しかしマオーは、その絶対不可避を容易く躱す。彼が用いたのは空間転移の魔法の一つ、空:圧縮テレポート。2点間の座標空間を文字通り"圧縮"させるというものだが、座標の知覚が甘いと虚空間と呼ばれる超多次元空間に飛ばされて一瞬で塵と化してしまう代物である。


戦闘中に、しかもそれを回避程度に用いるような贅沢は、マオー以外には到底できる代物ではない。


結果両者の間隔は開き、同時にマオーが空:圧縮テレポートに向けて発動させる。


わざと座標をずらして虚空間へと引き摺り込むつもりで放ったマオーだったが、ユーシャの姿がかき消えたことで不発に終わった。

自らの本能が放ち始めた警鐘に従い、咄嗟に空:圧縮テレポートで20メートル前方へ移動する。瞬間、マオーが直前までいた座標は、巨大な光の柱に包まれて大穴を残すのみとなった。


ユーシャが持つ最大にして唯一の魔法攻撃、聖:極光ライトだ。触れたもの全てを不浄と断定し消滅させる広範囲破壊攻撃を、初手から出し惜しみせずに最大威力で放ってくるユーシャを前にして、マオーは一瞬気圧された。


その隙をユーシャが逃すはずもなく。未だ残留する光の柱を突っ切り、マオーの喉元に聖剣の刃を沿わせたユーシャは勢いのまま剣を振り抜く。


手応えはあった。


だが。


分かたれた首から、詠唱が紡がれる。


「万象を潰滅せよ…闇:潰獄ダーク


大振りの攻撃を放ち、硬直から逃れられぬユーシャには回避行動をとることはできず、かろうじて左腕で魔法を受けることで精一杯だった。


聖:極光ライトの対極に位置するこの魔法は、効果的には聖:極光ライトと同じ結果をもたらすが、過程において溶解と腐敗を伴う。


加えて、溶解と腐敗は伝播する。


即座に肩口から下を切り落としたユーシャだったが、無理な受け身と左腕の喪失により完全に体勢を崩してしまう。


そこにダメ押しとばかりにマオーの首から下…分断されて生命機能を失くしたはずの身体が、ユーシャに抱きつき、魔法を発動させる。


もがくユーシャの抵抗も虚しく、マオーの身体は至近で大爆発を起こした。


火:共焼フレイム。本来なら発動者は跡形もなく爆散し、今回も例に漏れず自爆魔法の名そのままの効力を発揮したが、マオーの身体は頭部と分かれている状態。

脳がなくとも魔法を発動できるマオーからすれば、魔法発動のトリガーが増えたあの状況はむしろ暁光であった。



「我の身体もろとも消し飛んだか…我はこの状態から再生することができるが、骨すら残らん貴様では到底無理な話か。…なかなか骨のあるやつだった」


「私が死んだとでも思っているのか?あの程度も耐えられなければ、私は勇者を名乗ってなどいない」


マオーが驚愕を顔に浮かべるより先に、ユーシャが聖剣を突き刺した。




決着がついた。時間にして数秒ほど。細かく描写しなければ、数行と持たないであろう短い大決戦の結果は、勇者ユーシャ・ツカイマワシの勝利で幕を閉じる。


ユーシャが最後の爆発に耐えられたのは、爆発する寸前に聖剣を挟み込んだからだ。

爆風の威力で吹き飛びはしたものの、爆風で舞い上がった砂埃と相まって、マオーに自分を倒したと勘違いさせることができたのだ。


かといってダメージを無効化できたのかというと決してそんなことはなく、今は満身創痍で倒れ伏している。


そんなユーシャの状態を描写している己は何をしているのかというと。


はい、まだ遠くで隠れながら観察してます。

なぜかって?怖いのだ。

今のあの状態でも、彼は己を捻り潰すほどの力を持っている。そんな奴に近づいて、介抱するほどの度胸は己にはない。


一応この場からでもGM権限的なノリで治すこともできなくはないが、己の上司はそれを許すほど甘い人物ではないのだ。

だからせめて、彼が眠ってから近づいて治癒する。それが最善のはずだ…………。



あぁ、死にかけてるぅ!このまま放置してたら永眠するぅ!

死なれたら上司に間違いなく怒られる。彼の名前を決めた時から、彼は上司のお気に入りなのだ。


「見捨てるわけにはいかねぇんだよぉ!!」


「は?お、おい!君は一体どこから湧いて出たんd「うっせぇ、助けに来たんだよ!文句あっか?!」いや、ないが…」



彼には生き延びて、使いまわされる義務がある。

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