第8話 受験勉強
<アキラ視点>
ミラヴェニア魔法高等学校。
この国においては、最も権威のある学術機関だ。
16歳から18歳までの間、みっちりと魔法を仕込まれ、卒業生のうちある者は研究者になり、官僚になり、実業家になり、変わり者は冒険者となり未知なる世界を探検する。
卒業するといわゆるエリートコースの人生を歩め、羨望のまなざしで見つめられるのである。
そのため、受験の季節になる12月には全世界から受験生が集まっている。
「で、その学校に僕が受験しろというのかい?」
「そうよ。この村にはちょうど15歳の子どもがいなくてね。あなたにも受験資格があるなって思ったわけよ。村ごとに毎年、3人まで受験生を輩出できるシステムだから、受けなきゃもったいないなあって。この村から入学生が出たってなると、それこそ村の自慢になるわけで」
「なるほど。僕は確かに音楽は趣味的にかじってはいるけれども、それが、魔法の役に立つのかな?」
「魔法の素養は、古語、音楽、勇気の三本柱と言われているわ。三本柱の一本でも特技があるのなら、やっていける可能性は十分あるわ」
「なるほど。じゃあ、古語と勇気を身に付けないいけないわけか」
「まあ、勇気は心の問題だから、努力でなんともならないとして、受験がある10月までに古語だけはみっちりと鍛えておく必要があるわね」
そういうわけで、僕はナーシャ先生に古語を習い始めたのだった。
といっても、僕の居た世界のように予備校などが発行しているテキストなんていうような、誰が教えても同じように学問を習得できるというような便利なものはないらしく、ナーシャの持っている知識の中から、少しずつ口伝される形になっていた。
学習効率としてははっきりいって、元来た世界ほどは効率の良いものではなかったが、他に学習手段のない僕は、ノートをこまめにとり、少しずつ理解を深めていった。
8月から勉強をはじめて、あっという間に12月になった。
はっきり言って、古語は勉強不足の突貫工事であったが、とりあえず、受けさせてもらえるものは受けることにした。
受験会場のミラヴェニア魔法学校には、色んな肌の色や、魔物にしか思えないような種族が受験にあつまっていた。
「色んな人がいるんだなあ」と僕がつぶやくと周りのリザードマンのような生き物が「どうせ、名家の人間種族しか合格しねーけどな」とくぎを刺してきた。
それを聞いた僕は、なるほど、元来た人間社会と大差ないかもしれないと思ったのだった。
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