第3話 いざ女子寮へ

<エリーゼ(元エリック視点)>


僕は、その体がふくよかでやわらかくなったことを実感していた。


大きく膨らんだ胸、低い目線、股間にあるはずのものはついていない。


細長い指、肩にわさわさとかかるブロンドの髪の毛。


「僕、本当に女の子になっちゃったんだ……」


小雨が降る中、ソプラノボイスが響き渡る。


「LALA♪」


この身体でも魔法使いに求められる声質は意外と悪くないかもしれないと思った。


ただし、すぐ息切れをする。


ロングトーンができない。


ボイトレを怠けているように見受けられ、ポテンシャルが十分に引き出されていない。


鍛錬を積めばこの体でも、強力な女声魔法の数々を唱えられるかもしれない。


そう思った。


「入れ替わりの禁呪か……」


そんな禁呪の噂は聞いたことがある。


そして、人にこのことを喋ったら死ぬというのもおそらく本当だ。


ただ、この魔法は僕が知るものであれば、持続効果は限られている。


1年過ぎれば、元に戻れるはずである。


例外は2つ、妊娠した場合と入れ替わった片割れが死んだ場合。


そのいずれかにあてはまる場合は、二度と戻れなくなるという。


まあ、自分の体はそんなやわじゃないから死なないだろうし、男である自分が妊娠をするような行為をとることはあるまい。


どちらのケースにもあてはまらないと思った。


元の体に戻れるチャンスが来るのは時間の問題だろう。


ゴーンと学校の時計台の音が鳴る。


21時だ。


男子寮に戻らなければ、いや、今の自分は女子だから女子寮に戻らねばならないのか。


あわてて、地図魔法を唱えて、女子寮の入り口を探し当てる。


入り口は閉じられているが、鍵開け魔法を使う。


魔法の英才教育を受けてきた僕にとっては、これくらい朝飯前だった。


ジャージを着てタオルを肩にぶらさげた女子が歩いている。


髪の毛が湿っている。


どうやら風呂上がりのようだ。


小雨の中、体が濡れてしまっている自分に気づく。


お風呂……入りたいな。


男子寮にも壁にかけてあったお風呂スケジュール表をそそくさと探す。


「やばい21時30分じゃないか。早く準備しないと」


魔法を使って自分の部屋を探し当て、バッグをそそくさと探す。


「うー。散らかってる」


彼女の荷物をそそくさと探すが乱雑に散らばっていて、畳まれていない。


くしゃくしゃのバスタオルとフェイスタオルを見つけると僕はお風呂に向かうことにした。

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