第46話 再会

 少しずつだが、光の穴が大きくなってきたように思う。まだ遠いけれど。

 目標が近くなったことで、アドレナリンでも上がったのか、気分がよくなり、進むスピードが上がって、痛みも和らいでくる。……死んでもアドレナリンって分泌されるのか?

 よくわからない。体は死なないようにできているから、もはや元通りの人間ということはないだろうが……リクではないが、これはこの世界における「生命」の神秘といったところか。解明されれば、面白いのかもしれない。

 六道輪廻といえば、人間道にも連なるらしいから、人間の体の仕組みが反映されていてもおかしくないのかもしれないな。生前の姿になれることだし。

 考えていると、やはり出口は近づいてきたような気がする。もう一踏ん張り、と歩を進めていく。

 どうも気を逸らすと出口が近づくらしい。では気を逸らしてみようか。




 ということでふと考えてみる。

 思考に出たのは、ナガラのことだった。

 悪が栄えた試しなどない、とほざいて私を撃ち殺したやつは、あの後一体どうなったのだろうか? 私を殺人鬼に導いたやつだが、容姿が同じためか親近感でも抱いているらしく、やつのことが気になる。

 やつはまだのうのうと生きているのだろうか? それとも死んだのだろうか? まさか私と同じように六道輪廻を巡っているわけじゃないだろうな? 巡っていたらそのうち出会しそうで嫌だ。

 自分とそっくりそのままの容姿のやつなんて、気味が悪いじゃないか。自分が二人いるみたいだ。ドッペルゲンガーというんだったか。




 ……ん?




 自分が二人? ──何か引っ掛かる。

 そう、二人、二人という字をどこかで見た。どこで見たか、というと、──そう、病院で、研究日記で──




 途端、頭を突き抜けるような痛みが襲う。平衡感覚を失うほどに痛みが貫き、私はついに──転んだ。

 砂利が眼前に迫ったところではっとするが、もう遅い。立て直すなんて無理だ。

 来るべき痛みに備えて、思わず目を瞑る。頭が真っ白になるような気がした。






 しかし。




 十秒、二十秒、三十秒……

 いつまで経っても痛みが来ない。いや、それどころか、足の痛みまで消えている。それに、妙な浮遊感を感じる。地に足がついていない?

 そこで恐る恐る目を開けてみる。するとそこで太陽を直視したような目の眩み方をした。

 一度そこから目を逸らし、何度かぱちくりとして、見直す。

 そこには、見知った顔があった。悲しげに微笑む、黒髪に健康的な肌色の青年。どうやら彼は、私をその逞しい腕の中に抱えているらしい。所謂乙女が夢見るような「お姫様抱っこ」状態にあるわけだが、私はそこに何の感動も覚えない。

 あるのはただ、疑問だけ。

「何故、貴方がここにいるの?」

 その人はここにいるはずのない人物だった。

 もっと明確に言うと、地獄道や餓鬼道ではなく、天界道に引きこもって、六道輪廻の統治を行うべき人物だった。

 シェンとやらを私が殺してしまったから、その代わりになった人。




「リウ……」


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