戦国日本ハーレム統一記

パンジャンドラム

プロローグ 我は死なり、世界の破壊者なり

『我は死なり、世界の破壊者なり』

 

「逃げろ!」

「うわぁあああああ!」

「クソ、クソぉおおおおおおおおおお!」

 元亀元(1570)年、義弟の裏切りによって、うりあおいの家紋は敗走していく。

 泥にまみれた家紋を多くの敗残兵が踏んでいく。

 後方では死体が山と化していた。

 馬に乗って逃げていく第六天の魔王は、血が出るほどに唇を噛んでいた。

(あ奴め……絶対に許さん!)

 血走った目で恨んでいるのは、信頼していた義弟。

 戦国乱世の為、裏切られるのはある種、慣れっこであったが、まさかこうも身近な身内に裏切られるとは思いもしなかった。

 

 敗走していく兄の軍勢を、妹は複雑そうに見送っていた。

(生きてて……兄上)

 妹の立場は、非常に複雑だ。

 裏切ったのが夫で、裏切られたのが兄なのだから。

「……」

 義兄を心配そうに見送る愛妻を、戦国一のイケメン武将は、静かに見つめていた。

 その手にあるのは、袋に小豆を入れて両端を縄で縛った物。

 敗走した本陣で見つけた物だ。

(……逃げるのが早かったのはこれが原因か……)

 事実上の愛妻の裏切りである。

 しかし、夫は攻める気にはならない。

 最初に反故ほごにしたのは、自分なのだから。

「……」

 愛妻に恨まれるのは嫌だが、この世は戦国時代。

 計略や背信、陰謀渦巻く厳しい時代だ。

 そんな世の中である以上、愛妻に嫌われたとて生き抜かねばならない。

(……済まん、いち。私はやっぱり朝倉を裏切れない)

 心の中で詫びた後、義弟は軍配団扇ぐんばいうちわを振るう。

「織田を根絶やしにするんだ! 絶対に京に生きて帰すな!」

 憎悪と憎悪がぶつかり合う。


[参考文献・出典]

『バガバッド・ギー ター』

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