勇者パーティーを追放された聖騎士、暗黒魔法と光魔法に目覚めリミットブレイクする。~聖騎士と暗黒魔法で万能かつ最強!冒険者の称号を総なめ溺愛無双する!すべてのヒロインも俺のもの!~

森の王

一章 追放の聖騎士

第1話 追放



「聖騎士ヒイロ。あんたを追放するわ♡」


 ある探索の帰り道でのこと。俺は幼なじみの勇者アルネに追放を宣告された。


「あんたみたいな罪深い奴はもう聖騎士とさえ呼びたくない。ただのヒイロよ。一線から身を引いて、せいぜい養生してなさい♡」


 アルネは俺の幼なじみで十年来の付き合いとなるパーティーの勇者だった。


 編み込んだ赤い髪。きりりとした眼差し。

 竜の刺繍の入った勇者装束がよく似合っている。


 アルネは子供の頃から一緒に遊び、育ってきた。冒険者になるべく共に村を飛び出した仲でもある。


『あたしはあんたのために勇者になるわ』

『じゃあ俺は聖騎士だ。背中は守ってやるよ』


 そんな幼い会話から始まり、もう十年も共に冒険者を続けてきた。

 なのに今は、顔を真っ赤にして俺の追放を宣言している。


 正直、意味がわからなかった。


「どういうことだ? 俺はずっとお前らを支えていたと思っていたのに……」


「どうもこうもないわ。【あんたはとにかく追放】って満場一致で決まったってだけ♡」


 アルネは時にわがままもいうが、基本的にいい奴だ。


 彼女のわがままは、困っているおばあちゃんを助けたり、ミミックに挟まっている探索者を救出するためだったり、基本的に善行だ。


 非情なのはむしろ俺の方で、俺が現実的、冷静な意見を出して支えてやらないといけなかった。


 アルネは放っておくと身を滅ぼすような、熱くるしいくらいの良い奴だった。


 だから今回の【追放の宣告】は、あまりに理不尽だ。


 何か、事情があるのだろうか?


「聞き捨てならないな、アルネ」


 俺もまた引き下がるわけにはいかなかった。彼女の表情から洞察を始めるも、顔が赤いということ以外はわからない。


「何よ……。弁明は聞かないわよ♡」

「俺を追放するのはおすすめしない。まずこのパーティに俺が必要な理由は5つほどある。今までの戦闘記録も解析しているからな。タンク貢献やフィニッシュ数、リカバリー数ではパーティで足を引っ張っているとは思えない」


「あ、あんたの努力は全部しってるわよ♡ 必要な理由は5つじゃ足りないけど。でもでも、数とかデータじゃ……、ないの! とにかくあんたは追放なの♡」


 勇者アルネに追従するようにして、重騎士ウェンディ、僧侶ミアハが俺をみた。


「あーしもアルネに賛成だ♡」

「私もー。ヒイロは抜けるべきと思うのよね♡」


 三人のまなざしが俺をみた。

 何故か慈しむような眼をしている気がするが、気のせいだろうか。


「お前ら……」


 俺は自分の過失について考える。


 俺の仕事は〈聖騎士〉だ。


〈聖騎士〉は目立つ能力はないが、どんな仕事もこなせる万能職である。騎士として前衛をこなしたり、聖魔法による【小結界】や【防御バフ】、【回復】などもこなせる。


 攻撃力は勇者に劣り、前衛としての防御力タンク力は重騎士に軍配があがり、回復や結界術は僧侶には及ばない。


 よく言えば万能、悪く言えば器用貧乏な点だ。


 もっというならば、アルネは勇者の中でも竜殺しの称号を持っている。

 大陸内においても、上位勇者といっても差し支えない。


 俺がいなくてもなんとかなる、というのは彼女の驕りではないのだ。


(俺はたしかに器用貧乏だ。聖騎士としても目立った存在ではない。だが働きという点では十二分な働きをしている。俺という人手を手放すことはパーティの損失だ。アルネが理解できないほどアホなわけはないのだが)


 やはり、何か理由があるのか。

 さらに三人に問い詰めてみる。


「俺はちゃんと仕事をしていたはずだ。いったい何が不服だったんだ?」

「せ、聖騎士の代わりはいくらでもいるもの……」


 聖騎士がパーティの弱点の穴埋めをする存在でしかないといえば、そのとおりだろう。

 だが職業の持つ役割以上に……。


 人として仲間として、友人として過ごしてきた時間もあったはずだ。


「いままで一緒に冒険してきたじゃないか。パーティの仲だって悪くなかった!」

「いままで一緒に冒険してきたから、ここらで潮時だってことよ♡ さっさと村に戻って養生しなさいよ!」


 何故かアルネの顔は真っ赤だ。

 頬が染まり、目線がせわしなぐ揺れ動いている。


 恋する乙女に見えなくもないが、彼女の言葉を正面から受け止めれば『怒り心頭』と解釈するべきだろう。


 俺はさらに冷静になる。


「俺の言葉選びが悪かったなら謝る。たしかに数字やデータに拘りすぎていた」


「そ、そういうことじゃないのよ! あんたはさ……。えーと、うーんと。あんたの悪いところは……。うまくでてこないけどぉ……♡」


 アルネは編み込んだ髪を指で弄りつつ、目線を激しく上下させ言葉を探していた。


 彼女の嘘をついているときの仕草だ。


「そうだわ! あんた……。聖騎士なのに〈ホーリー〉が使えないでしょ!」


「ああ。俺の〈ホーリー〉は本当にピンチなときにしかでないんだ。だが効果は覿面でギリギリの状態から体力全開になる。先日の討伐だって、皆を〈蘇生レベルで回復〉させていた」


「知ってるけど。わかってるけどさ。とにかく私はあんたを追放しなきゃいけなくて……」


 しどろもどろのアルネに助け船を出すように、今度は重騎士ウェンディが手を挙げた。


「あーしからもあるぜ♡」


 さらに僧侶ミァハもまた、ウェンディの隣に並び立つ。


「私もいるよ♡」


 俺は女の子三人に囲まれてしまった。


 どうやら追放は決定事項のようだった。






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