054 影ちゃん
『条件を満たしました。〈フレアヴァルプスLv.12〉が〈フレアヴァルプスLv.13〉になりました』
『条件を満たしました。各種ステータスが上昇しました』
『条件を満たしました。スキル〈気配察知Lv.7〉が〈気配察知Lv.8〉になりました』
『条件を満たしました。スキル〈威圧Lv.6〉が〈威圧Lv.7〉になりました』
『条件を満たしました。スキル〈並列思考Lv.3〉が〈並列思考Lv.4〉になりました』
『条件を満たしました。スキル〈飽食Lv.1〉が〈飽食Lv.2〉になりました』
やっ………やったぁ〜!!
レベルアップだぁ〜久しぶりぃ〜!
フッ…私はまた一段と強くなってしまったか…。
頭の中に響く声によってレベルアップしたことを告げられ、私は歓喜に舞い踊る。
これに伴うスキルのレベルアップやステータスの上昇はもちろん嬉しいが、今はそれ以上に、おまけのようについてくる体力と魔力の全回復に心底から喜んでいた。
私は、全身に満ちる感覚ならどちらも全快しているだろうと確信しつつも、ステータスを確認する意味も込めて自分を鑑定する。
『《フレアヴァルプス Lv.13
ステータス
名前:なし
魔力:1185/1185(+395)
体力:863/863{+200}
基礎攻撃力:611
基礎魔法力:757(+252)
基礎防御力:492
基礎抵抗力:406
基礎敏捷力:924
スキル
〈魔力感知Lv.7〉〈魔力操作Lv.7〉〈視覚強化Lv.6〉〈嗅覚強化Lv.6〉〈暗視Lv.6〉〈気配抑制Lv.6〉〈気配察知Lv.8〉〈記憶Lv.6〉〈鑑定Lv.7〉〈威圧Lv.7〉〈思考加速Lv.8〉〈並列思考Lv.4〉〈魔力循環Lv.5〉〈魔闘気Lv.6〉〈魔鎧Lv.5〉〈飽食Lv.2〉〈魂思考〉〈魂記憶〉〈第六感Lv.7〉〈自動回復Lv.6〉〈魔力補充Lv.4〉〈体力回復Lv.6〉〈尖牙Lv.7〉〈尖爪Lv.8〉〈火魔法Lv.6〉〈風魔法Lv.4〉〈土魔法Lv.4〉〈光魔法Lv.1〉〈火耐性Lv.7〉〈毒耐性Lv.4〉〈痛覚耐性Lv.6〉〈恐怖耐性Lv.4〉〈虫殺し〉〈アラネア殺し〉〈渡り者〉》』
おぉ〜やっぱり全快してる!!
スキルも幾つか上がったし、特に気配察知のレベルが上がったのはありがたいなぁ〜!
最近もう全然スキルのレベル上がらないから、こうやってレベルアップついでにスキルも強くなってくれるのは本当にありがたい。
渡り者の、取得経験値量が上がるって効果もう切れちゃったのかなぁ?
…まぁでも一応レベルは上がってるし、あれについては今はいいか。
渡り者のスキルの説明にあった、取得経験値量が上昇するという効果。あれは
とはいえ、鑑定で調べようにも何をしようにも、その
幽霊、というくらいだから肉体ではなくその内側、意識や魂などそういうものに関係があるのかもしれないと推測してみるものの、それを確証づける情報が一切無いので推測止まりなのである。
故に、今は効果がもう切れているのかどうなのかを判断する方法はほぼ無かった。
……あれ。そういえば鑑定と言えば、
っと、そうだそうだ。
まずはこっちだった。
鑑定のスキルについて、そういえば戦闘前に何かあった気がする、と思ったものの、私は気配察知で感じ取った気配で今一番大事なことを思い出す。
そう、シャドウヴァルプスちゃんだ。
唐突なレベルアップに歓喜していた私だが、このままあの子を放置という訳にもいくまい。というかレベルアップしたことによって、より確実にあの子を守ることが可能になった。
まぁ守るとはいえ、護衛のように一切合切守護するつもりは無いが。
せっかくただのヴァルプスではなく既に進化した状態で生まれているのだ。ゲームの時のシャドウヴァルプスがどんなだったかはあまりよく覚えていないが、闇魔法なんて見るからにカッチョイイ魔法も持っていることだし、上手いこと強く育ってもらって一緒に生きていきたい。
などと、色々考えて今後は楽に魔物を狩れそうだとか心の中でほくそ笑みつつ、振り返ってその当人…ならぬ当狐を見る。
シャドウヴァルプスちゃんは、そんな私の内心を知ってか知らずか、こちらの様子を伺うようにして見返してくる。
そこには警戒するような気配はなく、ただ私の動きに対して困惑しているように感じられた。まぁ、襲ってきた魔物を倒して一息ついたら到達に飛び跳ねだしたのは私だ。困惑するのも仕方ないだろう。
……と、そこまで感じたところで、私はほぼ確信するようにそう思った自分に対して驚いていた。
何故かは分からないが、まるで人の顔でも見ているかのように、なんとなく表情や態度からその雰囲気が読み取れたからだった。
前世では動物の表情など、それこそ舌を出しているかどうかというレベルでしか見分けがつかなかったのだが、これは私が狐となったからなのか。
それとも単に同じヴァルプスという種の魔物だからか。
表情を伺うように、その顔や態度からなんとなくその雰囲気を感じ取れたのだ。
……キツネ語が分からなかったらどうしようかと思ったけど、これならそう問題もない…かな?
と、そう思った瞬間。
「ギャォ〜………」
静かだった広間に、なんとも間の抜けるような声が響いた。
犬とも猫ともつかない、しかし若干犬寄りのような気もするその声を発したのは、目の前にいるシャドウヴァルプスだ。
わずかに低く、まるで伺うようにして発せられたその声は、事実、私のことを伺うようなものだった。
……おぉ…なん…となくだけど意味が分かる…。
これもヴァルプスだから?
まぁ、そうだろうなぁ…。なんとなくしか意味が分からないのは、魔物はみんなこんな感じなのか、それとも私が転生者だからなのか…。
…まぁどっちでもいいや。とりあえず意思疎通できるだけ十分だろう。何を言っているのか分からない、なんて状況よりは。
で、えーっと、近付いてもいいのか、かぁ。
うーん、まぁいいと思うけど…警戒されてるのかな?あ、死骸が怖いなら私がそっちに行こうか。
近付くよりも近寄られる方がいいのか、肯定を示すように若干頭を下げるシャドウヴァルプスの様子を見て、私はそちらへと歩み寄る。
やはり死骸が怖かったらしい。まぁ、目覚めて早々襲われればそりゃあ怖いか。
近付いてみると、後退りながらも、こちらの匂いをしきりに嗅いでくる。やはり動物は匂いを嗅ぐものなのだろうか。
私も嗅いでみる。
……なんか、なんて言うんだろう。
記憶の中で例えるなら動物園の獣臭と言った感じなのだが、不思議と不快感がない。不快感がないのはシャドウヴァルプスちゃんが同種だからか、それとも私が狐だからか。
…これに関しては、なんとなく後者な気がする。
ただ問題は、こうやって嗅ぐのと同時に、この空間にこびりついた腐敗臭がそれを塗りつぶす勢いで鼻に襲いかかってくるので、これ以上嗅ぐ気にはならなかった。
うん、この場所は臭い。
一通り私の匂いを嗅いだシャドウヴァルプスちゃんは、その匂いで一体どう言う判断を下したのか、一度喉を鳴らすように声を出すと、今度は私の前で頭を下げてそのまま地面に寝そべってしまった。
…これは、感謝ってことでいいの、かな?
まぁ元々助けるつもりだったし、別にいいけどさ。
それより、感謝してるってことはもう私と一緒に来てくれるってことでいいよね?
仲間的な。そんな感じでいいよね。
よし。じゃあこんなところに長居するのもあれだし、早く移動しよう!ここ臭いし、まだ魔物来るかもしれないからさ。
はい、立って立って!
もう体力も全快で飯食う必要も無いし、早く行こう!
急かすようにシャドウヴァルプスちゃんを立ち上がらせた私は、さてそうは言ったもののどっちに向かおうかと広い空間を見回しつつ考える。
……というか、シャドウヴァルプスってなんか長いなぁ。こう、もっと短い…そう、あだ名とか決めよう。
うーん……シャドウ…シャドウか。
よし。今日から君は"
よぅしよろしくね影ちゃん!!
あまりにも安直だが、当の影ちゃんは満更でもなさそうだった。あまり他人行儀にならず意識してフレンドリーに接してみたのが功を奏したのだろうか。
かなり積極的にいってみたけど、これはいい感じかもしれない!と手応えを感じつつ、私はじゃあ早速とばかりに歩き出す。
せっかく出来た仲間なのだ。
第一印象もいい感じだし、このまま仲良くなっていきたい。前世のようにはいくまい。
……まぁ、この狐の姿で前世の人間関係を教訓とするのはちょっと無理がある気がしなくもないが。
それでも、現状唯一の仲間にフレンドリーに接するのは悪くないだろう、と考えつつ、私は影ちゃんを伴ってここに来た通路とは反対方向にある通路に向かって歩き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます