047 腐蝕ヘビ VS 狐 ②
コロージョンサーペントはそれを身体をくねらせて躱し、同時に接近してこようとする。
しかし私が後ろに下がりながら放った
先の一戦で、コロージョンサーペントに接近されることの危険性はよく分かった。
圧倒的に体の小さい私は、アイツに近付かれるとその全身を見ることができず、尻尾の動きを追い切れない。
さらに至近距離での腐蝕ブレス。さっきは上手く対処出来たが、毎回毎回あのように綺麗に相殺できるとは限らない。
それは避けたい。
シュルルルル、と声を出すコロージョンサーペントを、威嚇するように睨みつける。
私も威圧を使ってみているのだが、効いている感じが全然しない。………やっぱりこのスキルダメだ。
相当な格下相手なら通用するのだろうか?
……私ってそんなに格下なのかな………。
……っと!危ない危ない!
自分で言っていて悲しくなってくるが、今は戦闘中。気を散らしてはいけない。
危うくコロージョンサーペントに距離を詰められるところだった。
……こうやって頑なに接近しようとしてくるあたり、やっぱりこれ以上の魔力消費はキツいっぽい。
……って、あれ?
あれ!?
おい、おまっ、魔力減ってるやんけ!!
コイツに遠距離攻撃があるなら毒魔法か、と考えていた矢先、鑑定で再度そのステータスを見てみると、なんとビックリ魔力が減っていた。
戦い始めた時点で156ほどだったコロージョンサーペントの魔力は、今は115まで減っている。
……何で減った?
あの腐蝕ブレスって腐蝕魔法だったっけ?
………えぇ?いや、そんなことないと思うけどなぁ…?
ていうかスキルに〈腐蝕吐息Lv.4〉ってあるし。
これさっきのブレスでしょ。
…まさか、このブレスでも魔力使うのか?
……いや、まぁありえない話じゃないか。今私が発動してる魔闘気や魔鎧も魔力使うし。
2発撃って40減ったってことは、ブレスしか使わないことを考えてもこいつの残弾はあと5発か。
────あ、耐久戦だこれ。
うん、そうだな。これ耐えれば勝ちだ。
引き撃ち…でもなんでも、とにかく攻撃を喰らわないようにしつつ、向こうの魔力が切れるのを待つ。
魔力を使おうとしなければ足が速くて遠距離攻撃のある私の方が圧倒的に有利だし、使えばそのうち魔力切れで意識がグッナイ。
前に一度魔力切れを起こしたことがあるけど、あれはそう易々と抗えるものじゃなかったと思う。
………フッフッフッ…。
最初に見た時はギリギリの戦いになるかも、と思ってた節もあったけど、これなら全然余裕で勝てちゃうかもなぁ。
ボーンイーターより楽勝の可能性すらあるのではないだろうか。
おっと、油断はいけないな。
気を引き締めねば。ほら、そうこうしてる間にもコロージョンサーペントがこちらに接近しようと毒液をぶっぱなしてるし。
……てうぉい!!
私に向かって放たれた濃い紫色の液体は、私がそれまで立っていた地面に当たると、僅かに煙を吐き出した。
腐蝕ブレスほどではないにせよ、物を溶かせる程度には強い毒であるらしい。
アピスが使ってた毒液と似たり寄ったり……かな?
っと、
…からの
今の一撃でこちらが怯んだ隙を狙って接近してくるコロージョンサーペントに対して、私は着地しつつも連続して魔法を放つ。
ほぼ牽制目的だったが、一発目の
「クシャァァアアア!!!」
フハハハハ!そう簡単に近付かせるかっての。
苛立ちを隠そうともせず、ブンと振るった尻尾で
一応それなりの強度を持たせて生み出した
やはりあの尻尾の一撃は喰らいたくないな。ボーンイーターの突進並に危険そうだ。
……というか、今更だけど逃げないのかな?
激高し、なおもこちらを追ってくるコロージョンサーペントに一旦背を向けて逃げつつ、考える。
対峙するでもなく逃げるのは、向こうがブレスでも魔法でも魔力を消費するなら、攻撃を回避しつつ対峙するより積極的に逃げて魔法を使わせた方がいいと考えたためだ。
…私ならそんな魔力も体力もない状態で自分の攻撃を尽く回避するような相手にであったら即逃げるけどなぁ。
魔物の本能とか、働かない?野生の勘的な。
余程自分の強さに自信があるのかな。
……あぁ、あるいはあれかな、ことここに及んでも私は格下だと思われてるのかな。
いや、多分そうなんだろうな。最初思いっきりビビっちゃったし。
……これはあれか、雑魚を蹴散らして気持ちよくなってたところにカモネギな私が来て、追加で気持ちよく殺してやろうとしたらなんか上手くいかなくてキレてるのか。
どこのゲーマーだコイツ。
いるいる、こういう冷静に状況を見れずにヤケになって突っ込む人。FPSゲームとかによくいる。
こういう人に限って暴言の語彙力低くてカスと○ねの2択を連打するだけのbotみたいな感じなんだよね。
……でもそのレベルのヤツだと分かってても実際に言われるとかなり心に来るんだよなぁ。
学校に通ってたときのことがフラッシュバックする。
………いや、今考えるのはよそう。あれはもう過去のことだ。今はもう関係ない。
人ですら無くなったし。うん、関係ない。
さて。まぁつまり何が言いたいかと言うと……。
深追いは死ぞよ?
痺れを切らしたコロージョンサーペントが放った毒魔法を回避しつつ、
僅かな時間差を置いて放ったそれらは、片方は躱されたもののもう一撃は身体を掠めて、その鈍い砂色の鱗に黒い傷を付ける。
コロージョンサーペントの毒魔法はレベル6もある。
それを踏まえるともっと色々な毒の攻撃をしてきそうなものだが、恐らく低レベルだろう攻撃しか放ってこないのは、まず間違いなく魔力の残りが少ないからだろう。
先程まで115あった魔力はさらに減り、ついに100を下回った。
いかに消費の少ない魔法を使っているのだろうとはいえ、それでも減るものは減る。
ただ追いかけるだけではこの広い空間を逃げ回る私に追いつくことは出来ないが、しかし追いつくために魔法を使うほどコイツは追い詰められる。
これが"深追い"という罪深い行動をした、その報いである。
私を追いかけるコロージョンサーペントが、さらに私の走る先に向かって2発の毒液を放ってくる。
さらに僅かに遅れて腐蝕ブレスを放とうと予備動作に入っているのを、私は魔力感知で捉える。
どうやら一気に決めに来るつもりらしい。
距離的には、腐蝕ブレスはギリギリだろうが、あの毒液を避けようとして進行方向を変えれば、恐らく多少なりともブレスを食らってしまうだろう。
そうなれば、その隙をついてさらに接近しようとしてくるはず。
思考加速で速まった意識の中で、考える。
……ここで決めようとしてくるなら、こっちもそれに付き合うのもいいのではないかと。
どのみち、毒か腐蝕、どちらかは相殺しないといけない。
まぁ多少のダメージ覚悟でこのまま突っ切ってもいいのだが、痛覚耐性があっても痛いものは嫌だし、できる限り避けたいし、何よりあんな臭いブレス喰らいたくない。
となれば、ここでブレスを相殺しつつカウンターを入れるのが良いのではないかと、私はそう思う。
決めるや否や、私は動き出す。
ブレスを相殺しつつカウンターで一撃かますなら、
もっと強力な一撃が必要だ。
走る勢いのまま身体を捻って後ろを向きつつ、私は
同時に並列思考を総動員して、たった一発の魔法を手早く構築していく。
コロージョンサーペントが、急減速した私に向かってこれ幸いと腐蝕ブレスを放ってくる。
その、液体にも見える吐息が放たれている大口目掛けて。
私は、今できる最高速度で発動した
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます