↓第28話 れんらくの取れない二人

 迷子たちが城につくと、ソルとアンヘルが話をしていた。


「あ、メイコさん!」


 アンヘルが声をかけてくる。なにやら曇った表情で、「これを見てください」とソルの端末を差し出した。

 そこにはビリーからのメッセージが表記されており、「大事な話がある」とのことだ。

 詳しいことは会ってから話すようだが、その張本人は現在、行方不明だ。


「こっちから連絡しても出ねぇ。いったいどうなってる?」


「ソルさん。ビリーさんと同じく、カミらんもいなくなったかもです」


「え? カミールのお嬢が?」


「とにかく行ってきます!」


 迷子はそわそわした様子で、城の中へ向かう。

 頭はカミールやビリーのことでいっぱいだが、ふと鼻孔に漂う匂いのせいで足が止まった。


「? いま一瞬けむりのようなニオイが……」


 ここまでの道中、火を焚くような場所はなかった。なのになぜ突然このような匂いが?

 気のせいかと思い、迷子は気を取り直して走り出す。

 続けてやってきたうららと執事の二人も、城の中へと入った。


「…………」


 雰囲気を察したソルとアンヘルは、顔を見合わせてみんなの後を追う。

 城の中では、迷子が大きな声で彼女の名前を呼び続けた。


「カミら~ん! カミらぁ~~~ん!!」


 広い廊下には、自分の声が虚しく反響するだけで、相手からの反応はない。


「カミっち~! ど~こ~だ~!」と、うららも叫ぶが、やはり人の気配を感じることはなかった。


「わたくしたちは上の階を探します」


 執事の二人は、そう言って階段へと走る。


「では、私は向こうを」


 アンヘルはキッチンのほうへと向かい、


「じゃあワシはこっちだ」


 ソルは中庭のほうへと駆ける。


「んじゃ、あたしは上だぜ!」


 うららは人差し指を立て、忍術を唱えるようなポーズをとる。

 すると垂直に高く跳躍して、音もなく姿を消した。


「カミらんどこですか……」


 迷子は長い廊下を一直線に走る。

 手分けして城の中を捜す一同。

 はたしてカミールとビリーはどこに消えたのか――

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