その星は自由に空を流れる1
「おはよ」
「レイ、お前なぁ!」
フクロウとお話しした翌日。いつも通り配信をする前に、私の所属するクラン【
すると、サブリーダーのマキオからいきなりお叱りを受けた。
「勝手にいろいろと何してんだ! 金縛りの調査をお願いしたはずなのに、フクロウに接触するだなんて。しかも配信して! γ見たか? 「レイちゃんがストーカー?」「盗撮じゃん」等ちょっと荒れてたぞ!?」
「ご、ごめんって。そんなに早口で喋らないでよ…」
私は昨日、凹凸平野にて噂される、金縛りの件で調査に向かったのだ。そこで偶然、襲われそうになっているフクロウくんを発見。
最初こそ助けに行こうかとも考えたが、それをフクロウくんはロールプレイ的に望んでいないだろうと思い、不要な行動だと慎んだ。
「でも、あの配信はフクロウくんにとっても良かったと思うよ? だってあれがなかったらまだフクロウ狩りは続いてたでしょ」
最初こそ、すぐに離れて金縛りの調査へと向かおうと思ったのだが、遠くから悪い意味で有名な狼紅蓮が、誰かを探しながら近づいてくるのを見つけ、今一部のRSFクランが行っているフクロウ狩りの真っ最中なのだと気づいた。
そこから配信するまで時間はかけなかった。ここで自分を狙うクランにどう対処するのか、フクロウくんの行動でフクロウ狩りが減るチャンスだと思ったから。
結果的に、医者とは思えないほどの鬼畜っぷりを披露してくれた。
「……言い訳か?」
「……ごめんなさい」
「はあ…。確かにγや掲示板を見る限り、フクロウ狩りは終わったと言っていい。ただそこに
「うん、わかった」
配信マークに気付いていた、とフクロウくんは言っていたけど、やっぱり嘘だったのかなぁ。
でも、そもそも配信に映りたくないならそう設定するし…。やっぱり良く分からないや、フクロウくんのこと。
「……だからもっとお話ししたいなぁ」
「レイ」
「なに?」
「金縛りの件、一応聞いとくが、何かわかったことはあるか?」
「ああ、バグでも何でもないよ。仕掛けられたモンスター用の罠に、巻き添えを喰らったプレイヤーが金縛りだ、って言ってただけだと思う」
「罠?」
「ほら、フクロウくんが使ってた麻痺罠」
フクロウくんが林地帯の空き地にて使用した麻痺罠を思い出す。ヘイトを管理し、追ってきたプレイヤー全員を罠に嵌めた時は、私もコメントと大盛り上がりをしてしまった。
「あれは煙幕の効果中に設置したんじゃないのか?」
「そんな早業無理だよ。私もスキルレベルは低いけど、罠スキルを持ってるから知ってる」
「つまり、金縛りの張本人はフクロウってことか…」
「うーん…。私はどっちかと言うと罠に嵌まったプレイヤーが悪いと思うなぁ」
「ほう?」
「あれが誰でも通る場所に置かれてたら流石に怒るけど、あの空き地にはプレイヤーがほとんど来ないし、小型モンスター用だから、威力も低めで、どこに埋まってるかは見れば分かるもん」
「確かに、対人用の罠というわけでもないしなぁ」
「罠に気付けなかったプレイヤーがそれを言えなくて、金縛りに遭ったんだって主張したのが事の発端じゃない?」
フクロウくんの肩を持つような発言をしているなと自分でも気付いていたが、何でなのかは自分でもよく分からない。
「なるほどな。公表するかはレイに任せるよ」
「いいの?」
「ああ」
フクロウくんとお話しする時用のネタが、また一個出来た。
今度はいつ会えるのかな。
私から会いに行っても良いのかな。
でも運命的な再会をしてみたい!
「レイ?」
「……ん、なに?」
「これから
「––私は行かないよっ」
「な、は?」
「もう不道森林は十回目だもん。私抜きで余裕じゃん。私は虫取りに行くんだ〜」
「虫取り…?」
「この黄色大帝でね!」
私はインベントリからショッキングイエローの虫取り網を取り出し、高らかに掲げた。
ルナちゃんの配信にいたフクロウくんが、ショッキングピンクの虫取り網を持っていた時は、ここにもショッキング仲間がいたのかと感動したものだ。
ネーミングセンスも心なしか、似ている気がしないでもない。
「……わかったよ。好きに楽しんで来い」
「はーい」
マキオの了承も得た事だし、早速虫取りに行こう。今日は虫取り雑談配信という事で決定!
装備と髪型を変え、場所は始まりの草原にしようかな。
「もしかしたら、またフクロウくんに会えるかも…?」
なんてね。
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