安眠枕に転生したけど、魔法とスキルで無双します。

ひたかのみつ

第1話 転生したら安眠枕でした。

俺は異世界に転生したらしい。

一瞬のことでよく覚えていないけど、たぶん家具屋からのの帰り道、暴走トラックにぶつかって……

気が付いたら見知らぬ大自然の中に居た。


「ここは、森の中の廃墟か? って、いや本当にどこだよ!? 」

見たことも無い空間に一人置き去り。

異世界転生ってやつだな。


まぁいいか、前世で出来なかったことも

きっとここなら出来るだろうし!

「さて、スキルとか、俺は何を使えるんだろう? ていうかさっきから何か変だ。 体が動かないし、視点も低い…… 」


今見えるのは、地面から生える雑草と、木の幹、割れた石壁の残骸だ。


『スキル:複眼を使って視点を切り替えますか?』

「うわ! 脳内に直接声が?! 」

これがスキルの案内というやつか……

「よし、見せてくれ」


俺が謎の声に頼むと、急に視点が空中に移った。

なるほど、移動範囲の狭い幽体離脱みたいな感じか?


「で、肝心の俺はどこに? 移動範囲内に、人影が無いんだけど? 」

『スキル:鑑定を使用して範囲内の情報を詳細化しますか? 』


再びスキルを使ったら、今度は植物の名前や特徴など、いろいろ分かるようになった。 そして、俺の位置も印付きで【自分】と表示されたのだが……


白くてふかふかの身体。 触り心地の良さそうな布地。 適度な厚みと、首と頭にフィットしそうな、しなやかな曲線。


「これって、枕じゃん!? しかも高いやつ! 前世で見たのを思い出したぞ、3万円は超えていた安眠枕だ!! 」


そう、俺はどうやら、安眠枕に転生してしまったらしい。

鑑定によるステータスは――


▶ステータス

名前:(無し)

レベル:1

種族:安眠枕

称号:転生者

数値:攻撃10 防御10 魔力100 体力10 敏捷5

スキル:複眼Lv.1・鑑定Lv.1・自動回復Lv.1・成長促進Lv.1・栄養吸収Lv.1・コーラLv.1・睡眠促進Lv.1・空間収納Lv.1・剣技Lv.1・


といった感じだ。


「いや、安眠枕ってまじか…… 」

俺は複眼を解除して体に戻り、改めて枕になってしまった事実を噛みしめる。


スキルは転生者らしく、たくさん覚えていたが、戦闘に使えそうなのは剣技だけだな。 剣、持てないけど。


てか、スキルのコーラって何だ? 気になる…… 使ってみよう。

「スキル! コーラ! 」

突然、目線の先の地面から、コーラが湧きだした。


「うぉ! 名前の通りコーラを生成するスキルだった…… でも枕には要らないだろ…… 」

たぶん、転生間際に体験したものが、家具屋のお試し枕と、ファミレスのコーラだったから、こういう転生になったんだろうな……


これからどうしようかと、考え始めたら、草むらが揺れだした。


複眼で視点を変えると……

「って巨大なあり?! こぼしたコーラに呼び寄せられてんじゃん! 」

鑑定によれば

敵の名前:ファイアアント

自分以外のステータスはそんなに見れないらしいな。

もしくはスキルレベルが低いからか?

しかし、スキルは分かる。

蟻のくせに土魔法と火魔法を覚えている……


蟻の一匹がこちらに興味を持ち始め、俺の方に向かってきている。

「ちょいちょい! やめろって! 」


今の俺には攻撃手段が無い。

だけど、どうにかして倒さないと!

安眠枕とはいえ、せっかく得た異世界転生ライフ、そう簡単に終わらせてなるものか!


「何か、使えるスキルは…… そうだ! スキル:空間収納! 」


俺は転がっている大きな岩に意識を向けて収納し、スキル:複眼で視点を上空に移動させる。

「正確な位置は…… ここだろう! 」


蟻の真上で、収納から岩を出す。

蟻はぐぎゃっと声をあげて潰される。 

「やった! 倒せた! 」


蟻の体液で布に汚れがついてしまったが、すぐに綺麗になった。 自動回復のおかげかな?


しかし、残りの蟻が一気に俺に目線を向ける。

もしかして、いまので脅威認定されちゃった?! 

まずいぞ、数は相当多い。 集団で来られたらまず勝ち目は無い。


『レベルが2に上がりました。 スキル:栄養吸収により、敵の能力の一部を吸収。 火魔法1、土魔法1、火耐性1、土耐性1を獲得しました』

「キターーーーーー! 」


俺は迷わず、火魔法を放つ。

白い安眠枕ボディから、赤い炎が噴き出し、蟻の群れを焼いた。


「同じスキルを持っているから、やはり効き目が悪いな…… よし! 」

俺は土魔法で屋根付きの壁を作り、蟻の群れだけを封じ込める。


「いけ! 名付けてピザ窯攻撃! 」

壁に開けた穴から、火魔法をぶち込む。

中は高温になり、さすがの蟻たちも倒されたようだ。


その後も念のため、魔力が空になるまで火を出しておいた。


「ふぅ、なんとかなったな…… そして、随分数を倒したってことは? 」

『レベルが10に上がりました』

「やっぱり! 」

『ステータスが上昇しました。 スキル:硬化・スキル:酸耐性を獲得。 火魔法2・自動回復2にスキルレベルが上昇しました』


おぉ!

かなりの成長!


「でも…… 安眠枕だから、動けないんだよなぁ。」

自分が枕だから、使って休むことも出来ないし……


しかし希望は見えた。

このままコーラを餌に狩りを続ければ、移動系スキルが手に入るかもしれないし、安眠枕から、人間に進化とかもあるかもしれない!

そしてなにより、レベルを上げて強くなるのは楽しい!!!


俺は安眠枕として、この異世界で最強になることを決めた。






あとがき

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