安眠枕に転生したけど、魔法とスキルで無双します。
ひたかのみつ
第1話 転生したら安眠枕でした。
俺は異世界に転生したらしい。
一瞬のことでよく覚えていないけど、たぶん家具屋からのの帰り道、暴走トラックにぶつかって……
気が付いたら見知らぬ大自然の中に居た。
◆
「ここは、森の中の廃墟か? って、いや本当にどこだよ!? 」
見たことも無い空間に一人置き去り。
異世界転生ってやつだな。
まぁいいか、前世で出来なかったことも
きっとここなら出来るだろうし!
「さて、スキルとか、俺は何を使えるんだろう? ていうかさっきから何か変だ。 体が動かないし、視点も低い…… 」
今見えるのは、地面から生える雑草と、木の幹、割れた石壁の残骸だ。
『スキル:複眼を使って視点を切り替えますか?』
「うわ! 脳内に直接声が?! 」
これがスキルの案内というやつか……
「よし、見せてくれ」
俺が謎の声に頼むと、急に視点が空中に移った。
なるほど、移動範囲の狭い幽体離脱みたいな感じか?
「で、肝心の俺はどこに? 移動範囲内に、人影が無いんだけど? 」
『スキル:鑑定を使用して範囲内の情報を詳細化しますか? 』
再びスキルを使ったら、今度は植物の名前や特徴など、いろいろ分かるようになった。 そして、俺の位置も印付きで【自分】と表示されたのだが……
白くてふかふかの身体。 触り心地の良さそうな布地。 適度な厚みと、首と頭にフィットしそうな、しなやかな曲線。
「これって、枕じゃん!? しかも高いやつ! 前世で見たのを思い出したぞ、3万円は超えていた安眠枕だ!! 」
そう、俺はどうやら、安眠枕に転生してしまったらしい。
鑑定によるステータスは――
▶ステータス
名前:(無し)
レベル:1
種族:安眠枕
称号:転生者
数値:攻撃10 防御10 魔力100 体力10 敏捷5
スキル:複眼Lv.1・鑑定Lv.1・自動回復Lv.1・成長促進Lv.1・栄養吸収Lv.1・コーラLv.1・睡眠促進Lv.1・空間収納Lv.1・剣技Lv.1・
といった感じだ。
「いや、安眠枕ってまじか…… 」
俺は複眼を解除して体に戻り、改めて枕になってしまった事実を噛みしめる。
スキルは転生者らしく、たくさん覚えていたが、戦闘に使えそうなのは剣技だけだな。 剣、持てないけど。
てか、スキルのコーラって何だ? 気になる…… 使ってみよう。
「スキル! コーラ! 」
突然、目線の先の地面から、コーラが湧きだした。
「うぉ! 名前の通りコーラを生成するスキルだった…… でも枕には要らないだろ…… 」
たぶん、転生間際に体験したものが、家具屋のお試し枕と、ファミレスのコーラだったから、こういう転生になったんだろうな……
これからどうしようかと、考え始めたら、草むらが揺れだした。
複眼で視点を変えると……
「って巨大な
鑑定によれば
敵の名前:ファイアアント
自分以外のステータスはそんなに見れないらしいな。
もしくはスキルレベルが低いからか?
しかし、スキルは分かる。
蟻のくせに土魔法と火魔法を覚えている……
蟻の一匹がこちらに興味を持ち始め、俺の方に向かってきている。
「ちょいちょい! やめろって! 」
今の俺には攻撃手段が無い。
だけど、どうにかして倒さないと!
安眠枕とはいえ、せっかく得た異世界転生ライフ、そう簡単に終わらせてなるものか!
「何か、使えるスキルは…… そうだ! スキル:空間収納! 」
俺は転がっている大きな岩に意識を向けて収納し、スキル:複眼で視点を上空に移動させる。
「正確な位置は…… ここだろう! 」
蟻の真上で、収納から岩を出す。
蟻はぐぎゃっと声をあげて潰される。
「やった! 倒せた! 」
蟻の体液で布に汚れがついてしまったが、すぐに綺麗になった。 自動回復のおかげかな?
しかし、残りの蟻が一気に俺に目線を向ける。
もしかして、いまので脅威認定されちゃった?!
まずいぞ、数は相当多い。 集団で来られたらまず勝ち目は無い。
『レベルが2に上がりました。 スキル:栄養吸収により、敵の能力の一部を吸収。 火魔法1、土魔法1、火耐性1、土耐性1を獲得しました』
「キターーーーーー! 」
俺は迷わず、火魔法を放つ。
白い安眠枕ボディから、赤い炎が噴き出し、蟻の群れを焼いた。
「同じスキルを持っているから、やはり効き目が悪いな…… よし! 」
俺は土魔法で屋根付きの壁を作り、蟻の群れだけを封じ込める。
「いけ! 名付けてピザ窯攻撃! 」
壁に開けた穴から、火魔法をぶち込む。
中は高温になり、さすがの蟻たちも倒されたようだ。
その後も念のため、魔力が空になるまで火を出しておいた。
「ふぅ、なんとかなったな…… そして、随分数を倒したってことは? 」
『レベルが10に上がりました』
「やっぱり! 」
『ステータスが上昇しました。 スキル:硬化・スキル:酸耐性を獲得。 火魔法2・自動回復2にスキルレベルが上昇しました』
おぉ!
かなりの成長!
「でも…… 安眠枕だから、動けないんだよなぁ。」
自分が枕だから、使って休むことも出来ないし……
しかし希望は見えた。
このままコーラを餌に狩りを続ければ、移動系スキルが手に入るかもしれないし、安眠枕から、人間に進化とかもあるかもしれない!
そしてなにより、レベルを上げて強くなるのは楽しい!!!
俺は安眠枕として、この異世界で最強になることを決めた。
あとがき
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♡や★のレビューをしていただけると創作の意欲が凄くわきます!
続きを読みたいと思って頂けたら
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