Sid.22 会話内容がバレてるかもしれない

 ドジっ娘先生のパンツをしっかり目に焼き付け、玄関先で見送りを済ませる。今日は黒レースじゃなく白の食い込みだったから、ドジっ娘先生。

 膝とは言え女性の肌に触れもした。感触は自分の膝と変わりなし。どうせなら太ももが良かった。


「目標ができたのですから、それに向かって努力してくださいね」


 見せると言って見たいと言った以上、その目標は叶えてもらいたいそうだ。やっぱ露出狂だな。


「ではまた」

「お疲れさまでした」


 地味なのに悪く無いと思う俺って、オバコンな上に地味専だったりして。

 でも、派手な人よりは落ち着いた感じの人がいい。見下して鼻に掛けて煩いだけの女子は要らんけどな。金切り声で人を馬鹿にするし。耳障りな上に表情が極めて醜い。

 部屋に戻りティーセットをキッチンに持って行くと。


「捗ったの?」

「それなりです」

「目標とかなんか言ってたけど」


 言えない。成績向上で中身を見せてもらうなんて。あまりに動機が不純すぎる。

 でも、絢佳さんのばるんばるんも拝みたい。それプラスいろいろ。


「まあ、限りなく百点を」

「何の先生だったかしら」

「化学です」

「そう。目標はあくまで目標だけど」


 頑張ること自体は無駄にならないから、目標があるなら達成するのも必要だそうだ。達成感はそのまま充足感になるからだそうで。自己肯定に繋がるとも。

 絢佳さんからもご褒美があれば、もっと頑張れるかもしれない。ばるんばるん揉み放題とか。死んでもいいから頑張ると思う。

 埋もれたいし掴みたいし、吸ってみたいとか思うし。

 煩悩塗れだ。


「見せるって何?」


 聞こえてたのかよ。玄関先で話すことじゃなかったな。

 さて、何と答えたらいいのか。まさか股間を、なんて口が裂けても言えないし。見せる、と言えば、あ、そうだ。


「珍しいペットを飼ってるそうです」

「そうなの?」

「それを見せてくれるって」

「どんなペットなのかしら」


 それはだな、男を狂わせる淫靡な二枚貝だ。そう言えば食い込み部分に、あるはずのものが無かったな。剃ってるのか元々無いのか。

 バカだ俺。


「その時になれば分かると思います」


 少し怪訝そうな表情を見せた気がした。

 もしかして話の内容分かってるんじゃ? だとしたら猛烈に恥ずかしい。知らないことを願おう。知っていたとしても、惚けてくれることを切に願う。


「じゃあ風呂入るんで」

「あ、二階のお風呂、お掃除してなかった」

「いいですよ。自分でやるんで」

「駄目。私がちゃんとやるから、少し待っててね」


 そう言うと二階へ上がるが、そのあとを俺も付いて行く。

 見上げると見事な揺れだ。スカートではないことで、内部を拝むに至らず。でも揺れ具合は素晴らしい。

 ちょっと絢佳さん、油断してる面はあるんだよな。洗面所でのことといい、テーブルに乗っけてることとか、俺が下に居るってことも含めて。

 意図して、だとしたら怖いけどな。でも、そうだったら押せば、ばるんばるんの御開帳とか、なんて。


 二階に上がると俺は自室へ、絢佳さんは風呂場へ向かう。

 前も後ろもなんて、実に完璧だ。


 掃除が済んで湯張りも終わった頃、ドアがノックされ「お風呂入れるから」と伝えられた。

 風呂に入って、あとは寝るだけ。

 ベッドに潜り込むと白い食い込みを思い出す。地味なのになぜ、そこだけ魅力を感じてしまうのか。見たいとか思ってしまうのもそうだし。

 今日は特に側で見せてくれたし。全然気にしないんだよな。俺を男と思って無いのか、やっぱりただの露出狂なのか。俺としては後者だと思う。


 それにしても。

 女子中高生ってのは、つくづくガキ、なんだな。ドジっ娘先生とか童顔先生とか、妙に差別されることがない。バカだからと言って蔑むわけでもないし。

 やっぱりある程度の年齢に達しないと、精神面での成長はないんだろう。

 十代女子ってのは、目に見える部分だけで人を判断するからだ。


 朝になり制服を着て洗面所に向かう。親父と二人の時は着替えたりしなかった。誰が見るわけでもないし、普段は親父すら居なかったからな。風呂上がりに全裸で家の中をうろうろしても、何ら問題は無かったくらいだ。今はそうはいかない。

 絢佳さんなら、とか思ったりもするが、ションベンガキに見せたら通報される。


 二階の洗面所は使わず一階に向かうと、キッチンから顔を出す絢佳さんだ。


「空いてなかった?」


 鉢合わせが嫌だから避けてる。


「俺はこっちで」

「遠慮なく言っていいのに」


 腕力にものを言わせての脅しはな。あれと本気で揉めたら、幾ら俺でも手が出かねない。壁を殴りつけたり、ドアを蹴ったりして恐怖感を与えるだろうし。

 男子を舐めて掛かってるからな。怒り心頭に発すれば何をするか、俺自身でも分からない。散々溜め込んでるんだから。


 顔を洗ってダイニングへ行き椅子に腰を下ろす。

 朝食は三人で。今日も親父は居ない。もう少しまめに帰って来ればいいのに。絢佳さんも夜が寂しいかもしれないだろ。親父の代わりに俺が相手したいけど。

 食事をさっさと済ませバッグを背負い、玄関に向かうと絢佳さんから声が掛かる。


「あのね、愛唯にビシッと言っていいから」

「いえ。残り一年ないんです。禍根の残るやり方は好みません」

「お兄さんとして」

「兄と認識されてませんよ」


 仲良くしてくれることを望んでるそうだが、ビシッと言っても説得力に欠ける。学年トップの成績で品行方正なら、多少は違うんだろうけどな。生憎、俺はエロだし成績は下から数えた方が早いと思うし。

 そんな奴に説教されて納得するわけがない。

 心底嫌われてるんだから触れないのが一番。迂闊なことをすれば、夜中に刺されかねない。


「いってきます」

「あ、うん。いってらっしゃい」


 困った感じだが、こればかりは仕方ない。時間すらも解決に導かないだろう。

 唯一の解決策は俺が居なくなること。だから家を出る。

 揺らいでるけどな。


 鮨詰め電車。いや、最近の寿司は隙間が多くて、少し振っただけで偏るんだっけ。昔の寿司はみっちり入ってたんだろうな。

 満員電車に揺られ途中乗り換え学校に。最寄り駅で下車し同じ学校の生徒を無視し、いや、無視され通学路を歩く。


 一階のエントランスから階段室へ向かうと、また女子とぶつかりそうになった。

 見覚えがあるぞ。昨日もぶつかりそうになった奴だ。

 睨むと眉尻を下げペコっと頭を下げてるし。こんな奴構っていられないから、さっさと避けて自分の教室へ向かう。

 偶然とはいえ二度目の遭遇とは。ラブコメなら運命の出会い、かもしれんけど、俺にそんなものは無い。


 いや、あった。

 絢佳さん。

 あれこそ運命の出会いだ。もっとも恋の成就は無いけどな。親父の相手だし。俺は子どもでしかないし。

 虚しい。


 教室に入っても誰も挨拶は無し。徹底してるよな。どいつもこいつも陰湿な奴らばっかりだ。幾ら成績が良くても性格が腐り過ぎだろ。

 なんで進学校って、こうも頭のイカれた奴ばっかりなんだ? 凄まじいまでの差別意識を持ってるよな。選民意識が強過ぎるのか?

 こんな奴らがいずれ世に出て社会を回すんだから、世の中から差別は無くならないし、格差は拡大する一方になるんだろう。


 反吐が出る。


 全ての授業を終えると補習だ。

 面倒だが、これを済ませないと留年確定。

 成績の悪い生徒を一か所に集め、纏めて補習授業ののちに追試。

 教室内を見ると落第レベルの生徒は三人だけ。俺と似たような奴が居るんだな。目を見ると死んだ魚の如しだ。俺同様、落ち零れてるんだろう。


 補習授業のあとは追試で一時間も残らされた。これを落とした科目分やるわけだ。

 部活を終えた生徒と同じ時刻に帰宅する状態に。これに付き合う教員も暇だねえ。放っておけばいいのに。三人しか居ないんだから。


 精気の無い目付きの生徒と教室をあとにした。

 話し掛ける気はない。憑りつかれそうだし。

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