ひと目見て心奪われた継母は歳の差19歳の爆乳美女だった

鎔ゆう

Sid.1 お姉さんですか? いいえ母です

 人生に於ける豊かさには二種類ある。


 ひとつは物質的な豊かさだ。

 分かりやすい例で言えば、港区のタワマン高層階所有とか。高級外車を所有しているとかだな。ブランド品で身を固めブイブイ云わせるのもそうだ。

 傍から見れば金に飽かせ、それを鼻に掛けただけのクソだが。

 俗に言うセレブと呼ばれる存在が豊かさの象徴である。

 精神面では極めて卑しい存在だけどな。だから日本では金持ちが尊敬されない。

 貧乏人の僻み根性と切って捨てるせいもある。所得税を九割くらい分捕れよ、と思うわけで。足を引っ張る思想で満たされてしまうのだ。

 自業自得だぞ。金を稼げるイコール偉い、と勘違いし庶民を見下すのだから。


 ひとつは精神的な豊かさだ。

 物質的には貧しくとも心が豊かであれば、何かと楽しく生きることができる。

 多くを望まず今ある状況に感謝し、他者を慮り慈愛に溢れる存在。

 そう言う人は例えば、公共交通機関で優先席に関係なく、他の人に座席を譲ることができる。

 駅や商業施設で、エレベーター待ちをしている車椅子の人に親切にできる。

 現実には我先に乗ってしまう愚か者が多いけどな。健常者の癖に、階段を使えと思うが、それを言うと袋叩きに遭う。

 心が貧しいからだ。

 精神的に豊かな人は常に他者に対して、余裕を持って対処可能だからな。

 徳のある人物とも言えるだろう。


 日本には殆ど居ない。

 大部分は精神的に貧しい。


 で、何の話だってか?

 それはだな、俺が精神的に貧しい存在だと自覚してるからだ。

 我が家は親父の奮闘の甲斐あって、金銭面で苦労したことがない。唸る程、では無いにしても金だけはある。それこそ億の金をポンと出せる程度には。

 代わりに親父は家に居ないことが多く、両親が離婚して以降は俺ひとり、部屋に居ることが多くなった。

 俺を引き取りながら家に帰って来やしねえ。


 小学五年生の時に母さんは、度重なる親父の不倫により金と快適性と親父を捨てた。

 まあ、金があればな。女も放ってはおかない。「マンション買ってやるぞ」なんて言えば、親父を好きでも何でもなくとも「パパ大好きぃ」なんて、物欲全開の女にコロッと引っ掛かる。科作って甘えた態度で接すれば済むからな。

 腹の底では「おめえみてえな、枯れたクソオヤジに本気になるわけねえだろ」と思われてるのに。バカだよな。


 母さんは当初、例え貧乏になろうとも俺を引き取る、と息巻いていたが。


「お前如きの稼ぎで有名私立に通わせられるのか?」


 親父の言い分は全て金。金、金、金。とにかく子どもを育てるには相応の金が掛かる。先立つ物も無しに子育てができるのかと。


「将来、翔真が事業を立ち上げたい、となった場合に、俺なら後ろ盾として充分だ」


 お前に何ができる、と言っていたようだ。

 対する母さんは貧しくとも工夫次第で、幾らでも豊かな人生を送ることができる、と言っていたらしいが。


「話にならん。翔真に貧乏生活をさせる気はない」


 金銭面で恵まれた環境を捨てる必要もない、と突っぱねてしまった。

 でもな、親父。

 今なら思うぞ。


 金じゃねえ。

 大切なのは心だ。

 心の貧しい奴には事欠かないが、豊かな人には会ったことがない。

 だからこそ、虚しい青春を送る羽目になったと少しは理解してくれ。


 私立中学に通うようになって、周りの連中のつまらなさ。世の中に、こんなにつまらない人間が居るのかと。

 公立中学であればピンキリで、面白い奴も居れば嫌な奴も居る。バカも居れば賢い奴も居る。バラエティに富んでるからこそ、人付き合いが楽しくなるんだよ。

 行ってないから分からないけどな。単なる俺の妄想かもしれん。

 それでも、私立中のボンボンは眩暈がする程につまらない。


 エリート、なんて呼ばれる奴は大概、話が面白くない。

 くどくどと知識だけをひけらかし、鼻高々で自慢しいで人間的な魅力は皆無だ。

 まあ、知恵はないよな。日本の教育は知恵を付ける教育ではない。知識を詰め込むだけだから。


 高校に進学した際も俺は普通レベルでいいと思ったが、親父はそれを許さず進学校を大プッシュ。

 行きたくなかったが、学費を出さないと言われてはな。

 今どき、最低でも高校は出ていないと人生詰んでしまう。


「家庭教師を各科目ごとに付けるからやれ」


 普通はひとりの家庭教師が全科目を見る。だが、親父は斜め上だった。

 国語専任、数学専任、英語専任ってな具合だ。毎回異なる家庭教師が家に来て、ひたすら叩き込まれた。英語なんてネイティブだったからな。日本語を使うと巨大な体躯で脅されたし。なんで外国人って無駄にでかいんだよ。声も態度も。

 しかもご丁寧に「色香に惑わされないよう、全て男性教師だからな。はっはっは」だってよ。

 親父は色香に惑わされやすいから、俺もそうだと踏んだのだろう。

 確かに否定できないが。所詮は俺も親父の子だ。簡単に引っ掛かるんだろうな。経験も乏しすぎて女子を前にしどろもどろだったが。


 かくしてトップレベルの進学校に入ったが、授業に付いて行くのも大変なんだよ。

 それを言うと「じゃあ家庭教師を付ける」だってさ。

 今度は大学進学のための家庭教師だ。同じく各科目ごとに入れ代わり立ち代わり。

 俺の人生勉強尽くめ。

 青春を虚しく過ごすだけに。女子とお友達、なんて思ってもな、進学校の女子って。口にはしないが相手にもしたくない。

 贅沢と思うだろうが、見た目の問題やら性格の問題も大きい。なんか面倒臭い。

 すぐ見下す。バカと思われた瞬間、シカトされ捲るからな。


 親父より頭の出来は悪い。たぶん母さんに似たんだろう。

 確か親父は日本トップレベルの大学卒。母さんは中堅レベルの大学卒。その差は歴然としていたようだ。


 こんな状況下で俺も高校三年生に進級した。

 目新しさなど一切ない、つまらない高校生活も残り一年だ。

 仲の良い学友、なんてのも殆ど居ない。そこそこの付き合いをする相手は二人。それだけだ。ぼっちに近い存在かもしれん。

 彼女は小学六年生以降、ひとりとしてできず仕舞いだ。

 中学でも高校でもバカ認定されて、ずっと引き摺ってる。一度バカ認定されると二度と覆すことはできない。

 女子ってのは減点評価しかしないからだ。決して加点評価はしない。

 そして妥協できる点数を下回ると挽回は永遠に不可能。


 進級して一週間程度経過した頃だろうか。

 珍しく親父が夕方帰宅した。週に二回しか帰宅しない上に、時間は午前様なのにだ。

 まあ、その方が気楽ではあるが。


「翔真。話がある」


 キッチンで飯の支度をしていたら、リビングで話があると言い出す。

 俺からは無いぞ。

 無駄に広いリビングルーム。都内の某地に居を構え十五年。昨年、屋根含め内外装を修繕して内も外もピカピカだ。

 リビングの家具も入れ替えた。家電も入れ替えた。金を使うことに躊躇が無い。


 まだ綺麗な状態のソファに腰を下ろす。

 親父はリビングの扉の前に立ち、ドアの向こう側を少し気にしている様子だ。


「なんだよ」

「お前にとっての朗報だ。もちろん、俺に取ってもだがな」


 何勿体付けてんだよ。さっさと本題に入れよ。野菜炒めを作ってる最中だったのに。途中で放置してるんだよ。野菜から水が出ちゃうだろ。


「入って」

「?」


 ドアを開けると、そこには見たことの無い顔が、ひとり……もう一個あった。


絢佳あやかさんだ。新しく俺の妻になった。それと」


 コブ一個だ。


「娘になる愛唯めいだ」


 母親の方が恭しく挨拶してきた。


「母娘共々、これからよろしくお願いしますね」


 ちょっと衝撃を受けたぞ。いや、ちょっとじゃない。一瞬で目を奪われた。

 見た目が若過ぎる。子どもが居るなんて信じられないくらいに。

 それと、だ。目の毒すぎる。

 ばるん、と揺れる胸元に視線が固定されてしまうだろ。エロい。実にエロい。

 お姉さんでも通用しそうな、そんな若さと美貌を兼ね備えている。

 エロ姉さんだ。

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