第9話 及ばず、遂に・・・

〝私たちの大切な友人であり、仲間のキョウヘイが心身に傷を負ってしまい、活動ができなくなってしまいました。 私たちは彼が復帰できるように支えていきます〟


レーナルズのSNSアカウントが発したメッセージは世間を賑わせた。


そしてその数日後、ゴシップ情報を発信するアカウントから、レイとキョウヘイのメッセージのやり取りをスクリーンショットしたものが投稿される。


その中で、レイはキョウヘイを脅迫するようなことを送っていたのだ。


――もちろん完全なデマである。



「もう早速、俺の個人情報を探るような動きをしている人もいますし、最近ではテレビや雑誌の記者から取材をさせてほしいってメッセージが来たりしてます。 もしかしたら皆さんの個人情報も晒されてしまうかもしれないです。 だから、俺はもう活動を辞めて、皆さんももう俺と関わらないようにした方がよいと思います」


俺はそう言って何度か頭を下げたあと、そそくさと店を後にした。


あまり長い話をして誰かに見られてしまってもまずい。





レイが去った後、三人はしばらく沈黙していた。


「こいつムカつく!」


「あんたなにしてんの?」


オーラはレイに対してひどいことを言っているアカウントに、メッセージを飛ばそうとしていたのだが、物凄くぎこちない動きをしている。


「――あんたもしかして機械音痴?」


「そんなことより、とても大変な事態になってしまいましたねぇ~」


当たり前だが、レイに関わるなと言われても関わる気満々の三人である。


「やっぱり、あのガキ今からでも殺した方が良いかしら」


オーラは眉間にシワを寄せてそう言い放つ。


「――待って、こういう騒動は下手に動くと火に油を注ぎかねないの」


「じゃあ、どうしろっていうの!? こんなくだらない嘘でレイが活動を辞めるって言ってんのよ!」


一瞬だけ、本来の姿に戻ってしまうほど、オーラは感情を高ぶらせている。


ネールはそんなオーラの肩に手を置き、魔力を安定させる。


「セナさん。 何か考えがあるんですかぁ~」


「――えぇ。 正直、これはレイにも迷惑が掛かってしまうけど、でもいい方向に進むこともあると思うわ」


「アンタに解決できんの?」


オーラは睨みつけるようにセナを見つめる。


「そうね、私はあなた達のステータス数値には到底及ばない。 でも、私はあなた達にも負けない数字を持っているの」




【数日後】


〝私はレイさんと友達です。 彼がこのようなことするのは信じられません。 本当なら悲しいですが、私は彼がするとはどうしても思えません〟


セナのある一つの投稿により、世間の風向きが一気に変わる。


たった一言で世間では大いに影響がある。


SENAは圧倒的な美貌をもち、モデルとしてデビューするもそこから歌手、女優としての活動をはじめる。


最初は見た目だけの客寄せパンダだと世間から言われていたものの、その実力は凄まじく、アルバムはミリオンセラー、俳優としても名だたる監督から高い評価を得る演技力。


しかも最近では魔法の適正もAと魔法面でも才能を発揮している。


複数やっているSNSの総フォロワー数は1000万人近くおり、しかし取材やメディアにはほとんど姿を見せず、投稿されるのは写真や出演するイベントの告知のみで、彼女のプライベートは謎に包まれていた。




そんな彼女がSNSではなったこの一言は、大きな波紋を生んだ。


レイは何者だという好奇の目を向けられることになったが、その反面本当にレイは悪い奴なのかという疑いを持つものも多くなった。




「なんだよこれ、んでSENAがアイツの事知ってんだよ!?」


リュウトは寝室のベッドの上で髪をぐしゃぐしゃに搔きむしる。


「――こいつが下手なことしたせいで」


リュウトは黒いつながりを利用してフェイクニュースを作る為に業者に手を回し、画像を偽造したのだが、それも少しずつ疑われ始めている。


「なんであんな底辺に、この俺が―――― クソ! クソ! バカにしやがって」


リュウトの声が部屋に響き渡る。


荒げた息を少し整えると、携帯のメモ機能を開く。


「くっくはははははははははははははははは!」


狂気じみた笑いを浮かべるリュウト。


「まさかあんな雑魚の住所までメモしてるとはなぁ」


夜が更ける頃、リュウトは家を出た。



【あとがき】


メインで書いている作品のあいまに思いつきで書き始めましたので、投稿頻度は不定期です。

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