ボク

みっちゃん87

第1話 静寂の目覚め

朝。光はいつものように部屋を柔らかく照らし、カーテンの隙間から漏れる日差しが「ボク」の目を優しく刺激する。しかし、この朝は何かが違った。目覚まし時計のアラームは鳴らず、いつも聞こえるはずの隣室からの生活音も、下の階から聞こえてくるはずの朝食の準備の音も、外の通りを駆ける車の音も、一つも聞こえない。


不安に駆られながらも、ボクはベッドから這い出る。部屋は整然としており、昨夜のままの静けさが保たれている。リビングに向かい、テレビのスイッチを入れる。しかし、画面はただの雪嵐を映し出すだけ。携帯電話を手に取るが、一切の通信が途絶えているようだ。無意識のうちに、ボクは深い不安を感じ始めていた。


家を出る決心をして、外に出ると、世界は静まり返っていた。車は道の真ん中に乱雑に停まっており、信号は無意味に色を変えている。人の姿はどこにもない。風が吹き抜ける音だけが、この静寂を破る。


ボクは近くのカフェへと足を運ぶ。扉は開いており、中には誰もいない。コーヒーメーカーはそのままにされており、未完成のコーヒーが冷え切っていた。店の外には、朝の新聞が配達されたままの束がある。日付を見ると、今日のものだ。人類が消えたのは、ついこの前のことらしい。


「ボク」は街をさまよい始める。スーパーマーケット、図書館、公園。どこもかしこも人の気配はない。ただ、動物たちはそのままの生活を続けているようだ。犬が公園を駆け回り、鳥たちは空を自由に飛び交っている。


最初の夜が訪れる。街の灯りはいくつかが点いており、星空が美しい。しかし、その美しさも、この状況の中ではボクにとっては何の慰めにもならなかった。家に戻り、ベッドに横たわるが、眠ることはできない。心の中は疑問と不安でいっぱいだ。


「一体、何が起こったんだ?」


物語は、この静寂の中で「ボク」が直面する未知への探求、そして自己との対話が始まるところで幕を開ける。

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