第6話 マジックショー

お化け屋敷を見終わった咲夜と友紀奈は、

体育館の出入り口で待っていた翼と悠に連絡して落ち合った。


次は、ステージで演劇部による

マジックショーが行われるようだ。


観覧席の後ろの方に

前に翼と友紀奈、後ろの列に悠と咲夜の並びで座った。女友達が4人も一緒で見るなんて小学生以来の人数だ。

咲夜は嬉しくてテンションがあがる。


「咲夜、どうした?

 なんか、嬉しいそうだね。」


「うん、マジックショー好きだから。」


 悠は暗転した体育館の中、

 子供のように笑った咲夜が可愛く見えた。


「そうなんだ。

 んじゃ、しっかり見ておこう。

 スマホで動画とっておこうかな。」


「それ、いいね。」


「でしょう?」


 黒いシルクハットと黒いスーツを着た

 演劇部が鼻つきメガネを装着して現れた。

 それだけでも笑いそうになる。

 コメディアンかっていうくらいに

 面白かった。

 定番のトランプにサインを書いて

 探すというマジックや、

 ハンカチを持って、

 縦縞か横縞か観客に聞くと

 縦縞!横縞と叫ぶ人が出て、

 ぱっと手を離したらなぜか

 チェックもように切り替わっていた。


 拍手が巻きおこり、

 帽子を持ってお辞儀をした。


 さらに盛大な拍手で締め括った。


 

「すごい、面白かったね。

 あれ、動画配信したらバズりそうだね。」


「確かに。」



 悠と紗夜は、余韻に浸っていた。

 そして、4人はステージの催し物を 

 終えると昇降口前に集まった。


「そろそろ帰ろうか。」

 翼が言う。


「そうだね。」

 それに友紀奈が答えた。


「私、自転車だから、方向逆なんだ。

 んじゃ、またね。」

 翼は、手を振って、

 学校の駐輪場に向かう。


「うん、またね。」

 友紀奈が返答する。

 校門付近まで3人は並んで歩いた。


「楽しかったね。

 今年の文化祭。」


 咲夜は嬉しかったようでキラキラな

 笑顔になっていた。


「うん、そうだね。

 来年も早く参加したいな。」


 悠も一緒になって笑顔になる。

 友紀奈はあたりを見渡して、

 右の方に指差した。


「咲夜と悠は電車でしょう。

 私は、歩きで反対方向だから。

 ここでお別れ。

 また来週学校でね。」

 友紀奈は手を振って、

 横断歩道をかけて行った。


「あ、うん。

 んじゃ、またね。」

 悠は言う。


「バイバイ。」

 咲夜が言う。



「てかさ、咲夜と一緒に帰るの

 初めてだね。

 まぁ、今日、

 仲良くなったみたいだもんね。」


「うん、そうだね。

 ご一緒でいいですか?」


「うん、もちろん。

 嬉しいよ。」


「本当?よかった。

 いつも1人で帰ること多いから

 一緒でよかった。」


「そう?

 いろいろ聞きながら行こうかな。」


「いいね。」


 咲夜と悠は横断歩道を渡って、 

 石畳の歩道を隣同士歩いた。

 車道では時々軽自動車やトラックが

 走り抜けていく。

 自転車通学の高校生も通り過ぎていった。


「咲夜ってさ、服買うのって

 自分で決めるの?」


「あ、うん、そうだね。

 お母さんと一緒に買い物して、 

 選んでもらうこともあるよ。」


「そうなんだ。

 私はさ、普段、スカートとか 

 履かないんだよね。

 いつも黒いズボンが多い。

 なんかさ、女なんだけど、女の子っぽい

 服好きじゃないの。わかる?」


「えー、私もひらひらした

 チュチュスカートは絶対無理。

 洗濯して縮めそうだから買わないよ。」


「あ、うん。もちろん、そういうのも。

 あとデニムのピシッとしたスカートも

 いやなんだよ。」


「え?そうなの?

 それはまっすぐになってるから

 ギリ大丈夫。あとレギンスとか

 トレンカ履くから見えないし

 平気だよ。

 そしたら悠はどんな服選ぶの?」


「ダボっとしたメンズものとかかな。

 黒いものとかグレーが多いかも。」


「ボーイフレンドっていうジーンズも

 あるよね。

 確かにメンズものもいいよね。」


「私ってそういう女の子になるメンズものは

 着ないよ。お兄ちゃんのお下がりとかで

 間に合うこともある。」


「悠は確かにそういうの似合いそう。

 かっこいいもん。」

 

 コンビニの横を通り過ぎると

 立ち読みしている同じ高校の

 男子生徒がいた。

 気にせず、通り過ぎる。


「そ、そうかな。」


「今度、服選びに行かない?」


「いいね。行ってみようかな。

 でも,本当メンズものしか興味ないよ?」


「似合ってるならいいじゃない?」


 咲夜は楽しみになってくる。

 駅のホーム横にならんで、

 電車を待っている間も悠との会話は

 途切れなかった。

 

 ずっと喋っていて安心できる人だった。

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