第2話(4)スーパーヒロインの実力
「さあ、ともに戦おう!」
「ええ……」
「レッツゴー!」
「―……」
「レッツジョイン!」
「ノー……」
「レッツファイト!」
「ノー!」
「ええっ⁉」
わたしの大声による拒絶に、功人さんは戸惑う。
「い、いや、すみません、大声出しちゃって……」
「そ、それは構わないが、何故にノーというアンサーなんだい?」
「いや、ノー一択でしょ、それは……」
「どうして?」
功人さんは両手を広げる。
「どうしてって……」
「もう一度言う、君は選ばれし存在なんだよ?」
「いや、そう言われても……」
「よく考えてもみたまえ……」
「え?」
わたしは首を傾げる。
「これは絶好のチャンスなんだ!」
「チャ、チャンス……?」
わたしは戸惑ってしまう。
「そう、チャンスだよ」
「チャンスって……」
「君はそのチャンスをみすみす逃してしまうというのかい? いいや、そんな馬鹿なことはあり得ないよね?」
「……逃します」
「ええっ⁉」
「ですから、みすみす逃します」
「ど、どうしてだい?」
功人さんが信じられないという表情でこちらを見てくる。
「どうしてって……別に望んだものではありませんから……」
「ちょっと待ってくれ、少し落ち着いて考えてくれ」
「え?」
「……ここで活躍すれば、名実ともにスーパーヒロインになれるんだよ?」
「嫌ですね」
「い、嫌⁉」
「はい」
「な、何故だい⁉」
「え……」
「理由を教えてくれないか?」
「いや、とくにこれといっては無いですけど……」
「な、無い⁉」
「は、はい……」
「い、いや、無いということは無いだろう? もうちょっと考えてみてごらんよ……」
「う~ん……」
わたしは腕を組んで考える。
「……」
「………」
「…………」
「ど、どうだい?」
「……一応ですがありましたね」
「あ、あったかい? 聞かせてもらおうか……」
わたしは理由を告げる。
「恥ずかしい」
「は、恥ずかしい⁉」
「ダサい」
「ダ、ダサい⁉」
「面倒臭い」
「め、面倒臭い⁉」
「……うん、大体はそんな感じですかね」
わたしは顎をさすりながら呟く。
「そ、そんな……」
功人さんが愕然とする。
「……大分ショックを受けられていますね」
「そ、それはショックだよ……」
「…………」
蜘蛛女がゆっくりとこちらに近づいてくる。
「ヴィ、ヴィランが接近してきていますよ」
「……共に戦えると思ったのに」
功人さんはがっくりとうなだれている。
「……………」
「エ、功人さん!」
「……!」
「……残念だよ!」
「!」
蜘蛛女が飛びかかってきたが、功人さんは視線を下に向けたまま、強烈なパンチを蜘蛛女のみぞおちに食らわせる。蜘蛛女は後方に思いっきり吹っ飛ばされる。
「つ、強い……!」
わたしは感嘆の声を上げる。
「君が協力してくれれば百人力だと言うのに……」
功人さんが顔を上げて、残念そうな表情でわたしを見つめてくる。目が潤んでいる。
「い、いや! 別に協力しなくても十分強力だと思いますが⁉」
わたしは困惑する。あなた一人で良いんじゃないかな。
「………………」
「あ、ヴィランが立ち上がりました!」
「…………………」
「ま、また近づいてきていますよ!」
「……‼」
「と、飛びかかってきた!」
「しつこい!」
「‼」
功人さんがジャンプキックを繰り出し、蜘蛛女の頭部を吹き飛ばす。蜘蛛女は地面に落下して、跡形もなく霧消する。わたしは唖然とする。
「な、なんという破壊力……!」
「今日のわたしは機嫌が悪い……運が悪かったね……」
蜘蛛女の霧消を見届け、功人さんは背を向ける。
「………!」
「どわっ⁉」
蜘蛛女の代わりに出現したものが口から糸を吐き出し、功人さんを絡め取ってしまう。
「功人さん!」
「くっ、油断した……」
「……………………」
「蜘蛛女の親みたいなものかなね……さながら蜘蛛男か?」
「功人さん、余裕ぶっている場合じゃないんじゃ……」
「うん、そうだね。糸に絡まって動けない……ミス静香、ここは君のヘルプを求めるよ」
「ヘ、ヘルプって……」
「まさか私を見殺しにするつもりかい?」
「い、いや、そう言われると困っちゃいますけど……」
「では、よろしく頼むよ」
「よろしく頼むって……」
「君の内に秘められたスーパーパワーを解放するんだ!」
「そ、そんなものを秘めた記憶は無いんですが⁉」
「選ばれし存在だ……きっと君の寝ている間にでも授けられたんだよ……」
「め、迷惑な話ですね⁉」
「………‼」
「う、うわっ⁉ こっちに向かってくる!」
「パワーを解放だ! 両手に力を込めて!」
「そ、そんなことを言われても⁉ ええいっ! ピ、ピロシキ!」
わたしはよく分からないことを口走ってしまう。すると、襲いかかってきた蜘蛛男の攻撃を弾き返すことが出来た。功人さんが叫ぶ。
「今だ!」
「マ、マンジュウ、ハンバーガー、お団子!」
「⁉」
わたしがまたしても分からない言葉を口走ると、爆撃、銃撃、斬撃が次々と放たれ、それをまともに食らった蜘蛛男は霧消する。
「い、今のは、『四か国語戦法』……意外なスキルを持っているね……」
「し、知らないスキルですけど⁉」
「やはりスーパーヒロインとしての才能があるね……」
戸惑うわたしをよそに、功人さんは深々と頷く。
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