第15話 ~本領発揮~
「近藤さん!!」
「道隆行くな!」
「離せよ!近藤さんが!」
「道隆…ありゃもうダメだ、あいつの為にも今は我慢しろ……」
助けに行こうと走る道隆を止め、竜之介は今は堪える様説得する、その言葉を聞いて少し考える様な素振りを見せ、その後SKKに視線を合わせる。
「絶対仇取ってやるぜ……近藤さん」
「みんな!また来るよ!!」
立木が声を上げた瞬間、キャタピラの駆動音が巨体と共にすぐ横を通って行った。
「早い!」
「くっ」
その巨体から繰り出される素早い動きに、辛うじて追い付いた世一と竜之介は、急いで後ろを振り向くが、既にSKKが薙ぎ払いのモーションに入っていた、それをまた辛うじて盾で防いだ世一は衝撃で吹き飛ばされる。
竜之介は世一よりもSKKから離れていたので、間一髪で避けれていた、だがそれを追撃するかの様に、薙ぎ払いの勢いのまま一回転し、2撃目の薙ぎ払いが竜之介を襲った。
「二度目は食らうかよ……よっと!」
先程とは違い、完全に視認出来ているので反応は容易くなっていたが、それでも視力強化系のスキルやパッシブを持っていない立木や道隆は、ギリギリ追い付けている状態であった。
「怒り状態のSKKってゲームの3人称視点で見ても速いのに、1人称とかムリゲーでしょ……こりゃ避けるので精一杯だね」
「悔しいけどそうだな、本領発揮って奴か……だが攻撃のチャンスはあるはずだ、必ず2人の仇取ってやる」
SKKの攻撃を捌く世一と竜之介を見ながら、2人はもう1つの弱点を探す。
SKKには2つ弱点が存在し、1つは先程破壊した胸のスピーカーで、2つ目は完ランダムで配置されたコアである、なぜ完全ランダムなのかと言うと、受注生産方式で販売していたSK系の設計を担当した機械設計士が、1つ1つに独自の名前を付け、『個性』と称しコア部分の設計をいちいち変える、という謎のこだわりを持っていた為、コアの部分がランダムになってしまったという設定がある、だがメタい話ゲームでそんな事をすると非常に面倒臭い為、ある程度決まりを設定し登場していた。
その決まりとは、コアが付いている場所は必ず布が被せられている、というものでそうする事によって、布を全部剥がしてコアを露出させ討伐するという力技を行使できるが、複数ある布を剥がす毎に、SKKのスピードが少しずつ上がって行くという特性がある為、不用意に布を剥がしてしまうと、全滅の恐れがある。
救済措置として、コアがある布は少し光っているので、それを探して狙えば少しスピードが上がるだけで済むというのがある、だがじっくり見ないと分からない為、救済措置はあまり意味を成していないのではないかと、プレイヤーから度々文句があるらしい。
「もう、やっぱこの距離じゃどうしても視認できない……何も出来ないのは悔しいけど、むやみに介入して邪魔になる方が嫌だな」
「くそっ、この盾じゃ衝撃までは殺しきれないな、このまま吹き飛ばされ続けたらかなりきついぞ!」
「何か手は無いのか!?」
「光ってる布を探せ!」
「了解、つっても無理だろそれ!全部剥げばいいんじゃないか?」
「それはダメだ――いや、もういい見つけた」
世一の視線の先には僅かに光った布を捉えていた、それはSKKの後頭部の布であった、だが捉えるのも厳しいスピードや5mの身長のせいで手が出しにくい場所である。
「みんな!奴の後頭部に弱点となるコアが隠れた布があります!」
「あんな高い所どうやって攻撃すればいいの……」
「俺なら、俺ならできるかもしれない」
「道隆さんそれは何なの?」
「俺には跳躍スキルがあるんだよ、それ使えばもしかしたあのスピードじゃ半分賭け見たいなもんだ、だが生憎賭けは大好物なんだ、と言っても流石に死ぬ気はねぇがな、だからあの2人を使う…俺に任せてくれ」
「でも跳躍のスキルって……」
「あぁあいつの高さには届かないさ、だが隣の部屋で見つけたんだ、クール0をな」
「なるほど、それなら行けるね!」
「おいお前ら!俺にはあの野郎を倒す作戦があるんだ!どうにかして動きを止められないか!?」
「何!?それは本当か!聞いたか世一!」
「聞こえました!しょうがないやるしかないですね!」
道隆が所有している『跳躍』というスキルは、生存者のスキルツリー内の中盤に手に入るスキルであり、発動すると3m程度跳べるというものである。
だが、SKKの後頭部の布を剥がすには5m跳躍する必要があるので通常では無理だ、が先程道隆が見つけたと言う『クール0』というポーションを使用したら話は別である。
クール0は、飲むとスキルのクールダウンをリセットし、即座にまた使える様になるという効果がある、だが攻撃系のスキルには使用できないデメリットが存在しているが、跳躍は攻撃系のスキルでは無いので使える。
そしてクール0を使用すると跳躍×2で6mも跳べる、つまりSKKの後頭部の布を剥がす事ができるという訳だが、どうしても相手が動いていると難しいので、世一と竜之介の手腕に勝敗が掛かっているのである。
「しっかし、どう動きを止めたら……」
「壁にぶつけよう!ここは建物の中だ、つまりぶつけるには持って来いの地形だ」
「なるほど、それなら何とかなりそうかもな」
「よしそれじゃあ構えてください、来ますよ」
壁を背に突進をギリギリまで引き付ける2人、瞬く間に目の前まで来たのを両側に避けた、そして2人の後ろから勢いを殺しきれずに壁に激突した音が聞こえてきた、SKKは腕が完全に埋まっており動きを止めていた。
「道隆今だ!!」
「任せとけ!」
掛け声と共にすぐ後ろから跳躍音がして、道隆が跳びポーションの中身を飲み干し、空を蹴りまた跳んだ、手には立木の棍棒が握られていた、どうやらそのまま刺し殺そうという魂胆らしい、そしてSKKの後頭部に棍棒を勢い良く突き刺した。
SKKの身体全体から一瞬火花が散り、その後煙を上げ、壁から抜け出そうと駆動するキャタピラの音が消え、完全に沈黙した。
「近藤さん、仇取りましたよ……」
「待って!まだ息あるよ」
「うぉおおマジか!ナイスな生命力!」
「とりあえずキャンプまで運ぶか」
戦闘を勝利で収めた4人は瀕死の近藤の腕を止血し、簡易的に作った担架に乗せてキャンプ地まで運んだ、残念ながら武はもう失血して死んでいた、なので武も運んで建物の敷地に埋めた。
キャンプに戻ると、既にあの4人は戻っており、くつろいでいた。
「マジか、近藤があんなになってるの何て初めて見たぞ」
「本当、随分と苦労して帰って来たようね」
「激ローじゃん、大丈夫~?」
「あちゃ~凄い怪我ね私に任せて頂戴」
真由美は近藤に近づき回復の巻物を使う、すると傷がみるみる内に良くなって、先程まで荒かった息も落ち着いていた。
「そういえば武はどーしたんだ?」
「あいつは……」
「あー…言わなくてもいいよ、分かったから」
「あら理恵あんた意外に素っ気ないのね」
「ウチは弱い奴に興味ないから……強い奴の方が好きだし」
「おい!今のどういう事だ?武を馬鹿にすんじゃねぇよ!」
「うるせー私はそこら辺探索してくるから付いてくるなよー」
そう言いながら理恵はどこかに行ってしまった。
「あ、そういえばボス達はまだ戻ってないんだな」
「あれ?あんた達と一緒にいると思ってたんだけど?」
「リーダー達どこ行ったんだろうね~」
「まぁお茶でも飲んで待ちましょう」
探索を開始して約50分、未だに戻らないボスチームを待ち、キャンプにいる7人はそれぞれ休憩タイムに入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます