寝て起きたら世界が荒廃してました

アスパラガッソ

第一章 デパート編

第1話 〜異変〜

 主人公『荒田世一あらたよいち』はいつもの様に、夜遅くまでネカフェでゲームに没頭していた。



『Desolation World』

 このゲームは世界が謎の災害に見舞われてから大体100年後、生き残る術や技術を習得し、生き残りの子孫達が荒廃した世界を仲間達と生き抜き、生存者や略奪者になって、生存を賭け奪い合いをする、MMOサバイバルゲームである。



 このゲーム内で所謂廃人として、狂った様に遊び、やり込むプレイヤーのことを荒廃人と呼んでいた、彼もその中の1人であった。



 大学を1年で中退してまでゲームに没頭した世一は親に見放され。

 家から追い出される直前、親から投げ付けられる様に渡された15万円を手に、ネカフェ難民に。



 個人経営の居酒屋の店主に、奇跡的に雇ってもらった世一は、ギリギリながらもバイト先の仲間達や、ゲーム内のギルドの仲間達と共に日々を謳歌していた。



 ある日、いつもの様に生活費を稼ぐ為、居酒屋で接客のバイトをしていた世一は疲れ果てていた、その日は週末のせいかやけに客が多く、多忙な1日だった。





 帰り道、いつもならコンビニに寄り道して、腹を満たしネカフェに帰るのだが、先の仕事がかなりキツかったせいで、そんな体力も気力も無く、どこにも寄り道をすることなく帰路に着いた。



 鍵を開け、部屋の中に荷物を放り、狭い寝床に倒れ込み、不用心に施錠もせず泥の様に眠りに入った。





 次に目を覚ました時、世一は電気が消え薄暗い状態の部屋の現状に少し驚いたが、またいつもの停電だろうと思い深くは考えなかった。



 と言うのも、世一はこのネカフェを主に暮らしているのだが、度々やれ停電、やれ断水と陸な事を体験していない、このネカフェに宿泊している人達は慣れきっていたが、原因は謎のままであった。



 流石にこのまま停電を続けられてもゲームが出来ずじまいで、せっかくの休日をドブに捨てることになってしまう。



 今現在起きているこの問題をネカフェにいるであろう店員に、文句でも言ってやろうと思い扉を開けようとした、だがいくら力を入れても扉はびくともしない、鍵のことも考えたがそもそも掛けていなかった。



 世一は遂に扉までイカれたのかと思い、助けを呼ぼうと大きな声を出す。



「おーい!誰か!いないか?扉が壊れてるのか開かないんですけど!」



 そう叫んでみるが誰1人来る気配が無い、そもそも先程からこのネカフェ内に人の気配が皆無なのである、世一は俺の寝ている間に何かおかしな事でも発生したかと考えたが、そんなもの起きているなら流石の自分でも必ず目が覚める筈だと思った。



 であるならばなぜスタッフやらが来ないのか考えるも、そもそも現状を把握出来ていない世一は、意味の無い仮説しか立てれない。



 しばらく薄暗い闇の中で、この状況を打開すべく思考していた。



 そして、この部屋には換気を促す為に部屋を隔てる壁の上部に、人が通れる様な隙間が空いている事を思い出す、と同時にこのネカフェのプライバシー的な何かは、疾うに失われている事を再確認した。



 即座にその隙間から出ようと思い、先程まで寝ていたベッドを踏み台にして、隙間に手を掛けた。



 一応非常時なので荷物を持って行こうと思い、隣に誰もいない事を確認して、先に隣の部屋に荷物を投げ、その後世一も部屋へ転がり込んだ。



 その後扉から出て自分がいた部屋の方を見てみると、瓦礫が積み上がり見事に扉を塞いでた。



 とりあえずここから出ようと思い、ネカフェの入り口があった方に目をやると、瓦礫が完全に入口に繋がる通路を塞いでしまっていて、向こう側が見えなくなっていた。



 このネカフェは1本道が3本、左からABCとなっていて奥行きが部屋単位で10、世一がいたところはBである、そしてその1本道にそれぞれ左右に部屋が振り分けられているスタイルなので瓦礫に完全に閉じ込められたと思ったが、さっきの様に部屋の上部にある隙間から、何度も移動していけば入口に辿りつけるのではないかと考えた。



 その瓦礫の手前の右の部屋に入ろうと思い、ノブを捻るが鍵が掛かっているのか開かない。



 仕方無いので左の部屋も試しに捻ってみるがダメだった、最終手段でどちらかの部屋のノブを壊し開けようと思い、リュックサックに入ったマンモス印の水筒をノブに打ち付けた。



 何度も何度も打ち付けるうちに、ノブが変形していき遂には壊れた。



 扉を押して中に入り、隙間を何度かよじ登り部屋を横断して行く、そして例の瓦礫があった場所の部屋に入る直前、何か臭く生暖かい風が顔に当たった。



 どうせ食べ物か何かが腐っているのだと思い、特に警戒もせずにその部屋に転がり込んだ。



 そして臭いの正体が判明した、何らかの災害で落ちた天井の下敷きになって生き絶えた人間の臭いだった。



 少しでも天井が落ちる場所が違えば、自分もこうなっていたのかもしれないと思い寒気がした。



 後は何事も無く出口に辿り着いたのだが、A側から助けを呼ぶ声が微かだが聞こえて来た。



 このネカフェ内に、まだ取り残されている人がいるなら助けなければと思った。



「大丈夫ですか!?何番に閉じ込められてますか!」



 とA側に向かって叫ぶと微かに


「A-9です!」



 と聞こえて来た、Aを見ると天井が派手に崩れており、ネカフェがある雑居ビルの上の階層に繋がるかの様に完全に崩れさっていた。

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