勇者召喚って誘拐じゃないですか? 16
我が身は、この国の中枢を担う方々を召喚することになってしまいました。
「皆様、夜分遅くに申し訳ありません。勇者諸君も来ていただきありがとうございます」
「リベラ子爵。これはどういうことかね?」
傍聴席に呼び出した王様が我が身に問いかけて来られます。
マリアンヌも我が隣に座っていることに驚いた顔を見せました。
「今より、勇者召喚を企てた犯人と此度の一連の事件について関係者一同を集めて行っていきたいと思います。その前に傷を負われた第一王子様、第三王子様の治療を行います」
どうやら第一王子様は死なずに生き残っておられたようです。
召喚に応じて腹部に受けた傷が深く意識を失われています。
同様に、第三王子様も足に怪我を負われていましたが、お二人の治療を行って、準備が整いました。
傷が癒えて王様の元へお二人をお返しすると、王様は二人を強く抱きしめておられました。意識を取り戻されたお二人も驚いていましたが、私の回復魔法は、法廷内でしか使えません。
ですから、誰から構わず救うことができないのが、悲しいところです。
「さて、皆様、此度の勇者召喚に始まった一連の事件。法務省襲撃事件。第一王子及び、異世界勇者襲撃事件。第三王子視察時襲撃事件。この四つの事件はある闇組織が関与しておりました」
私は公爵様と黒衣の男に視線を向けます。
王様や宰相、勇者や王子たちも二人に視線を向けました。
「そして、それらの陰で警備隊に紛れ込んだスパイや、冒険者ギルドへの関与なども確認されました。警備隊長のケビンさん」
「はい!」
緊張しているケビンさんが証言台に立ちます。
「まずは、皆さんに事件の経緯を話していただけますか?」
「わかりました」
我が身の願いに応えるように、ケビンさんは、法務省襲撃事件を受けた後の我が身と警備隊で起こったとを報告してくれました。
「ありがとうございます」
説明してくれたケビンさんに下がってもらって、今度はシビリアンに登場してもらいます。
「続いて、シビリアン様、闇ギルドの解散以降の足取りをお願いします」
「ああ、闇ギルドは、王国に解散を強制され、生活が困窮したところを公爵様によって救われてギルドの存続はできなかったが、各地の王国貴族から仕事を受けることで細々と生きながらえていたようだ」
「その元締めは公爵様であるとご自身で自白してくださいました」
事情を知らない王族や勇者たちに、説明を終えたところで改めて彼らの顔を見ます。
「さて、此度の事件、勇者召喚が行われてから猶予時間が経過しようとしています。勇者様方もそれなりに自分たちの力を使うことができるようになり、今後はますますの活躍が期待されることでしょう。そして、王族が傷ついたということは王国の名誉に関わります」
我が身は第一王子、第三王子を見て王様を見ました。
「もしも、これが他国が関与していると言われたなら、王様。あなたはどうされますか?」
「謝罪を求めた、上で相応の報いを求めるであろうな」
「はい。ですが、これが身内の画策で行われていた場合はどうされますか? 例えば、宰相閣下が権力のために王族を根絶やしにして、実験を握ろうとしているとか?」
注目が宰相閣下に集まる。
だが、宰相閣下は首を振るだけで言い訳一つしない。
宰相閣下はそういう方だ。
推測として、公爵様があげた内容は我が身は違うと思っている。
「どうやら違ったようです。首を振ったとしても我が耳は嘘を見抜くことができます。宰相様は、ご自身が犯人ですか?」
「違うよ」
「はい。どうやら犯人ではないようです。我が身もそうだと思っていました」
これは一つの仮説に対して、答えを出しただけです。
宰相閣下が犯人だとは思っていません。
ですが、宰相閣下の手下をしていた者が何者かに命令されて、闇ギルドに依頼を行い一連の事件を起こしたことは事実です。
それができる人物は限られています。
「さて、以上がここまで我が身が知り得た情報であり、ここからは状況証拠や辻褄合わせを行いながら犯人を特定していきたいと思います。王様。よろしいでしょうか?」
「不敬に当たるとは考えなかったのか?」
「もちろん、考えました。ですが、法律上は問題ありません。王族であろうと公爵であろうと法の下では平等であり、等しく罪人は裁かれます」
王様の言葉に対して、我が身は一歩も引くつもりはありません。
威厳がありながらも、どこかクリス第二王子のように抜けたところを感じる王様に、我が身が情状酌量の余地を残すつもりはありません。
「それとも王様。あなたが犯人ですか?」
「なっ! 無礼であろう!」
声を荒げて怒りを表す王様。
どうやら嘘は吐かれていません。
「失礼しました。ですが、我が身はサラサ様を操れた人物は近親者であり、その者は勇者召喚が成功しても、失敗してもどうでも良かった。それはサラサ様の命が危険に晒されても良かったと思っているような人間です。我が身も容赦をするつもりはありません」
王様は私の言葉に、グッと奥歯を噛み締めて黙り込んでしまいました。
どうやら近親者といった言葉に腹を立てておられるようです。
ですが、そんなことはどうでも良いのです。
この中にサラサ王女を危険に晒し、多くの者を傷つけた犯人がいるのですから。
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