第169話 残された悲しき三人娘
「ブ、ブラストさんが……ライアン将軍が……」
「お、お、お、落ち着いて、ティアナ。ま、まずは、ここから離れないと」
「お、お嬢様!」
「ティアナ! ここで私がラトリースに辿り着けなかったら、それこそ黒幕の思う壺よ。皆の犠牲が無駄になるのよ!」
「そ、そう! そうですわよね! 取り乱してしまい、申し訳ございません、お嬢様。すぐに出立の手配を致します」
「そうよ! 頼むわね! ティアナ」
「畏まりました。ルーノさん、すぐに馬車を出してください」
「いや、私、馬車なんて扱えないんですけど。というか、馬車は壊れてるし、馬も皆、死んでるか逃げてますね」
「「……」」
遡る事、少し前。
『鑑定させて貰うぜ』という、凄まじい爆弾発言しやがったケチチ仮面には、速攻顔面パンチをお見舞いして頭を爆散させて倒した。魔石無し発言=妖魔=魔物なので問題無し。
そんな事より、今は今後の事である。
「というか、ここは何処なんですかね?」
「いや、いや、ルーノさん? それはちょっと酷くないですか!? 護衛なのに現在地を知らないって!?」
「いやだって……全然教えて貰ってなくてですね……」
打ち合わせとか、全く参加して無かったからね。それに、私も余計な事を知らない様に、極力情報を得ない様にしてたからなぁ……。
流石に何処に行くかや、その経路の確認はしておくべきだったかな?
でも、行き先や経路を知ろうとすれば、間者と疑われそうで嫌だったんだよね。
「今はアストの町を出てテッブガトスの町へ向かう途中です」
「そうでしたか」
聞いても結局何も分からなかった。どっちも知らない町だわ。
だけどとりあえずは、ラックス領に戻るべきだろう。
「恐れながら……引き返しませんか? この三人で旅は――」
「――それは出来ないわ。共和派は混乱を立て直した実績で今は優勢だけど、この国は長い君主制によって王家重視の傾向は根強い。非常に危うい状況下で、私のラトリース行きが遅くなる訳にはいかないわ」
「は、はあ……しかし」
「……馬車が壊れてしまっても足が有るわ。歩いてでも進むわよ。馬車は途中で手に入れましょう」
「畏まりました。お供します。お嬢様」
うーん。
決意は固い様だし、ラトリースまでは護衛する契約だし、仕方ないね。
「せめて殉職した方達を埋葬する時間を頂けますか? ここに野晒しというのは、いたたまれないので」
「そうね。当家の為に戦ってくれた彼等をよろしくお願いするわ。私とティアナは今後の経路等を打合せしましょう」
「はい。お嬢様」
そう言ってマリアンローズ嬢とティアナ嬢の二人は、壊れた馬車の中で打ち合わせを始める。埋葬を手伝う気は無い様だ。
ふむん。
なんというか……私も大概現場力の低い人間なんだけど、あの二人は高い低い以前に”現場レベルの事はしない”って感じだな。
マリアンローズ嬢はともかく、ティアナ嬢は侍女なんだから、もう少し現場力があって欲しかったが……ティアナ嬢も伯爵令嬢だしなぁ。
私の礼儀作法の勉強の件も、教師の手配はしていたけど、彼女自身はたまに様子を見に来るくらいだったし。手配や指示はするけど、現場の事はしていない感じだ。
この現場力の無いメンバーで今後大丈夫なのだろうか……。
生活魔法で穴を掘って、その穴に遺体を埋めていく。
どれが敵で味方か分からない遺体も有るけど、皆平等に埋葬する。ここは日本人式の死ねば皆平等の精神。
ブラスト氏にビショット隊長改めライアン将軍……。
あんた等……ここであっさり退場しちゃうキャラだったのかよ……。
異世界転生系小説では、強者ムーブかましておいて、あっさり退場する笑いネタキャラが居るけど、実際は笑えねぇよ。
ここで退場されるとか、マジ困るわ。
……と、これ位の愚痴は言わせてくれ。
無念は有るだろうけど、安らかに眠ってくれ。少なくともラトリースまでは、頑張ってあの二人を送り届けるように頑張るよ。
南無阿弥陀仏。
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