第97話 最凶
◆ 妖魔王ディスロヴァス視点
ぬぅあああああ!
く、苦しい。
苦しい? この妖魔王たる余が?
何なのだ? この纏わり付いた禍々しいオーラは一体?
何なのだ!? あの小娘は!?
温い殺気、見え見えの重心移動。分かり易い予備動作。全てが素人。奇襲を狙っておったのが明確に読めたわ。
しかしその後の爆発的なスピード。
準備済みだった故に間に合ったはずの余の結界や『ダークネスランス』の無効化。
どういうカラクリなのだ?
奴の立ち振る舞いや立ち方等も初心者以下の素人だった。長年強者を見てきた余だ。どんな熟練者が素人を装おうとも見抜ける自信があったのだが……その余を欺いたというのか?
確かにスタンピード前のダンジョン最深部まで来た程の者を侮ったのは、余とした事が抜かったわ。しかし余りにも強者の気配を感じなかった。
仲間を呼ぶ様子が無かったのも……いや、そもそも仲間の気配を感じなかった。
しかしどう考えても魔石無しが一人で、魔物の溢れるスタンピード前のダンジョン最深部にたどり着けるはずが無いのだ。
あの男ならば……あるいは可能性はあるかもしれぬが……奴はこの地にはおらぬはず。
この余が……訳が分からぬ……。
「……ぐぅう」
――っうぬ。
身体がどんどん腐っていく。今は早急にこれをなんとかせねば。
何故にこの禍々しいオーラは、余の本体にまで纏わり付いておるのだ!?
いや、余の憑依体全てにこの禍々しいオーラが纏わりつき、侵食されておる!
あの場でこのオーラが纏わり付いた憑依体を自爆させ、あの魔石無し諸共消し去ったはずだ。
それでもなお、本体や憑依体全てに影響を及ぼすとは!
更には術者を殺しても消えぬだと?
それともあの自爆攻撃を喰らってなお、奴は生き残っておると言うのか!?
「ぐぬぅ……お、おのれぇ……こ、これでも……解除出来ぬ……だと?」
あの魔石無しは『回復魔法は効かないですよ』等と見当違いな事を言っておったが、余が行っておったのは回復魔法では無く、魔素を霧散させ、魔力要素による攻撃や状態異常を解除する技だ。
しかし、いくらやっても解除されぬ!
今現在、魔力を高める魔法陣の上で解除を行っていてもだ!
魔力的な攻撃では無いというのか!?
いやっ――違う!
干渉が弾かれる程に魔力強度が強いのだ。強過ぎる!
解除は……不可能。
「おのれぇぇっ!」
忌々しいがこの体はもう駄目だ。
本当に何なのだ? このオーラは。様々な計画が台無しだ。
だが考えるのは後だ。この体も憑依体も全てを捨て、すぐに新しい肉体に転生するしかあるまい。
魔力増強の魔法陣にありったけの魔石を投入する。
魔法陣の上に立ち、培養中の肉体を召喚する。
そしてすぐに転生を開始する。
合成中の肉体――まだ早い上にまともな手順を踏んでいない為、弱体化は避けられぬがやむを得ん。
魔法陣に魔石から魔力が供給され、魔法陣が輝きを増す。
「
――ドクン――。
意識が新しい肉体へと宿る。
転生が終わり立ち上が――
「――ぬぅあああああ!」
――れずに、崩れ落ちる。
新しい体も左足がすぐに腐って黒い塵となり、先程の続きと言わんばかりに、禍々しいオーラが身体の侵食を再開する。
……馬鹿な……。
……余が……死ぬ……のか?
長い時を……生き抜いた……妖魔王たる余が?
……幾多の……勇者を……聖女を……退け……出し抜いてきた……余が。
……魔王も……
そ……そうだ……思い……出した……。
……これは……魔王……の……。
◆ 主人公視点
【レベルが上がりました】
【レベルが上がりました】
【レベルが上がりました】
【レベルが上がりました】
【レベルが上がりました】
【レベルが上がりました】
【レベルが上がりました】
【レベルが上がりました】
【レベルが上がりました】
【レベルが上がりました】
【レベルが上がりました】
【レベルが上がりました】
【レベルが上がりました】
【レベルが上がりました】
「うわお!?」
いきなり物凄いレベルが上がった!
一気に十以上上がった?
嘗てない程の力が溢れだす。ヒャッハー!
レベルが上がったと言う事は、さっきのローブ骸骨、ちゃんと倒せたみたいだな。
なんか『確かにこの体は終わりでしょうな。この体は――』みたいな事を言ってた辺り、本体は安全な場所に居て、分身体とかで活動するタイプなのだろう。自爆攻撃してくるくらいだしね。
普通に考えたら倒しても倒してもキリの無い厄介なタイプなんだろうけど、相手が悪かったね。魂を直接攻撃出来る『破魂』持ちの私相手に、意志――所謂魂を共有している分身体で対応するのは逆に悪手だ。自ら当たり判定を増やす様なものだよ。
しかしAランクの魔物を大量に倒してもレベルが上がり難くなってたのに、あのローブ骸骨を倒したらこの大量レベルアップだ。
あのローブと骸骨仮面の下はメタルな感じだったのかね?
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