第73話 アンデッドダンジョンクリア

 という訳で地下五階のボス部屋。

 ここまで来たら、もうこのダンジョンをクリアしてしまおう。


 重厚な扉を開け、ボス部屋に入ると、目の前には宙に浮いている鎧の胴体部分。

 胴体の腕の辺りから魔力の流れが見える。

 その魔力の流れの先には、宙に浮いた二組の剣。


 リビングアーマーというBランクの魔物である。

 リビング系ってアンデッド系だったっけ?

 このダンジョンで最も強い魔物である。

 そしてこのダンジョンで、最も見た目が怖くない(重要)。鎧と剣がふよふよ浮いてるだけだし。

 普通に考えたら剣と言う刃物が浮いてる状態ってかなり怖いとは思うのだが、私も大分自分の頑丈さに感覚が麻痺してきた様だ。


「おっと! ほっ」


 私が近づくと、二本の剣が私に襲い掛かって来る。それを躱す。

 二本の剣は一見して宙に浮き、縦横無尽に斬りかかって来るように見える。

 しかし魔力の流れが見える私には、本体である鎧から剣へと繋がっている魔力の線がまるで腕の様に見える。

 剣は飛んでるのではなく、魔力の腕によって振られてる様だ。

 魔力が見えない人には、剣が飛んでる様にしか見えないだろうね。

 とはいえ、魔力の腕は長くてしなやかなので、実際の人の腕の様な動きでは無いから、中々に縦横無尽。腕と言うより鞭と言った感じかな。


 剣を躱しながら、本体の鎧へと肉薄する。

 本体は距離を取ろうとするが、私の方が早い。


 そして本体にパンチを放つ。

 リビングデットはパンチを防ぐ為に、二本の剣を交差させて防御態勢を取る。流石Bランク。

 しかし私の拳は防御した剣を砕き、そのまま鎧をも砕き、吹き飛ばす。

 砕けた鎧が床に転がり、ガラガラガラと鎧と剣の破片が崩れ落ちる。


「倒したのかな? おん?」


 砕けて吹き飛んだ鎧に近づいてみると、鎧の中の赤黒い球体が点滅していた。

 少し色合いは違えど、ゴーストに似てる……というかゴーストにしか見えない。

 だからアンデッドなの?

 

「お? おおおん?」


 眺めていたら、粉々になった鎧や剣がラガラガラガと再生していく。

 壊れた時の映像を逆再生してるかの様だ。

 成程、鎧の中に居るゴーストみたいなのが本体で、あれを倒さないといくらでも復活してくるのね。


 復活し、再び襲って来たリビングアーマーを再び殴って粉々にした後、再生中の剥き出し状態の赤黒い人魂に魔力纏いの棍棒でスイカ割的な一撃を与えると、再生中の剣と鎧がガシャンと地面に落ちてダンジョンに吸収されていった。


【レベルが上がりました】


 久し振りのレベルアップ。体に力が湧いて来る。


「ひゃはははははは! これこれこれぇ!」


 久しぶりのレベルアップの高揚感! 良いね!

 ルタの村を出て以来、気分的に沈む事が多かったからね。

 今の私に必要なのはこれだよ!


 しばし、レベルアップの余韻に浸る。


 これでこのダンジョン踏破である。

 まともに狩りをしたのが、スケルトンナイト&スケルトンソーサラーだけとはいえ、半日かからなかったね。

 正直、ボスが一番楽に感じたな。

 そして一階層のゾンビが一番辛かった。あそこを乗り越えるのに二日掛ったからなぁ。

 ……というか、まだ乗り越えた訳では無いか。無視して駆け抜けただけだ。


 不思議と下に行けば行くほど(精神的に)楽なダンジョンだったなぁ。

 

 私だけ?

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