第46話 悪魔の権能
「――! こ、これは……契約魔法……なのか? しかしこんな心臓を鷲掴みされるような感覚は……」
私の能力の発動を受けて、男は何かしらの契約をされた事を感覚的に感じた様だ。
私が悪魔に転生した時に獲得した能力が二つ有る。
『腐適性』と固有能力の『魂』だ。
『腐適性』と違い、固有能力『魂』は転生した直後から感覚的に使い方が分かっていた。
使えるのが悪魔のみであるという事も。
文字通り種族固有の能力なのだからだろう。
固有能力『魂』には複数の権能があって、今回使った『魂契約』はその一つ。
その効果は契約を相手の魂に刻み込むというもの。
契約の成立や強制力の強さには細かい条件が有る。
私から条件を出し脅迫して無理やり条件を飲ませる契約よりも、今回の様に相手から提示した要望を私が了承する形の方が、より強力な契約になるのだ。
取引や隷属の為に一般的に使われる契約魔法に関して私は詳しく知らないが、魂を対価としている部分以外は似た様なものなのかもしれない。
といっても普段使いにするのは無理だな。
私の能力について誰にも漏らさない事が必須になるし、私の異常性に気付かれてしまうので、その後の付き合いに影響するだろう。
今回は他に誰も見てないし、この男とは金輪際関わる事は無いだろうし、特別だ。
「それでは契約はくれぐれも遵守するように。私はこのままリーアムに行きますので、リーアムには近寄らないでくださいね」
そう言って男から手を放し、距離を取る。
「わ、分かってる。すぐこの国から出るよ。じゃあな!」
男はすぐに立ち上がり、走り去っていった。
ちゃっかりと自分の荷物を持って……。
……まあ、いいか……。
彼等の荷物を頂こうにも、一人じゃ持ちきれないしね。
今の私の身体能力なら重さはどうにでもなるが、嵩張るのはどうにもならない。
それに下手に『誠実の盾』のメンバーの所有物を持ち歩くのも不味い事になるかもしれない。
「さて、とりあえずこれで良しと」
そう呟いて振り返る。
目に入るのは、男の惨たらしい死体が二体。
……良くねぇよ。
い、い、いや、逆だ。
よ、良かったんだよ。こうするしか無かったじゃん。
……。
いきなりの展開で、てんやわんやだったけど……。
人、殺しちゃったな……四人も。
う、うん……思ったよりあっけなかったな……初の人殺し。
こんな人攫いが身近にいる世界だぞ。日本とは違い過ぎるんだ。
訳分からないうちに最初の殺しをサクッと体験出来て、むしろ良かったんだよ。
別に罪なき人を殺した訳じゃないんだし。
そう、そうだよ。
私が殺したのは、人攫いという罪人なんだ。
「今は後始末の事を考えよう……こいつ等の遺体と荷物どうしようか……」
どうしようか悩んだ結果、痕跡を消す為に『誠実の盾』の遺体と荷物は全て腐攻撃で腐らせて消滅させる事にした。
「南無阿弥陀仏」
一応、成仏するようにと祈りながら、二つの死体を腐攻撃で腐らせ消滅させる。
この供養の仕方で良いのか分からないが……。
「さて、これからどうしようか」
……出発するか。
もう今夜は寝れそうにないし、ここで寝るのはなんか嫌なので、このままリーアムを目指す事にする。
荷物を持って街道に戻り、それから走る。
私なら闇夜でも見えるし、無尽蔵のスタミナがあるしね。
街道沿いに走り続け、朝日が昇り、周囲に木が無くなって長閑な草原に出る。そして二日目の夕方に到着予定だった小さな宿場町に到着した。
流石、私の身体能力。早い!
これなら一人で走った方が早かったかな?
そこで宿を取り……。
寝込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます