第44話 初めての
「「ぎぃやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」」
「「「ひぃいいいいいいいい!」」」
私の腐攻撃を喰らった『誠実の盾』の二人が、凄まじい断末魔を上げる。
腐のオーラが纏わり付き、蝕んだ箇所はどす黒く変色し、ゾンビの様になり、黒ずんだ肉片が付いた骨だけになり、最後は黒い塵となって消える。
その余りに凄惨な光景に『誠実の盾』の生き残り二人……と私の三人が思わず悲鳴を上げる。
人間相手に初めて使ってしまったが、これはエグイ……。
蟲と違って、人だと苦しんでるのがよく分かってしまう。
即死しないというのが、却って残酷だ。
――時をさかのぼる事、つい先程。
隷属の首輪を付けられ、男に犯されそうになるという、前世男として超絶恐怖の事態に直面した私は……暴れた。
抵抗しようとすると、首輪から不快な感覚が頭に響くけど、そんなの無視。無視出来るレベルだし、それどころじゃない。
暴れる私の手加減なしの裏拳がのしかかってきた男の側頭部に直撃し、男は頭を爆散させてテントを突き破って吹っ飛んだ。
それを見たクラウさんが焦った顔で「な、なぜ《命令》が!? 聞こえてなかった? ――もう一度、《命令》動くな!」と叫ぶと再び不快な感じが頭に響き、更に別の男が一人、私を取り押さえようとして来た。
テンパった私は、全身から腐属性のオーラを出してがむしゃらにオーラを撒き散らし、クラウさんと、私を取り押さえようとした男がそのオーラに触れてしまった。
そして冒頭の状況になった、という訳だ。
それにしても、先程から不快な感覚を頭に送り続ける首輪……うぜぇ……外せるかな?
首輪を両手で掴み、思いっきり引き千切る。
――ボンッ!
「――ばぷっ!?」
首輪が爆発した。
び、びっくりした。
破かれたローブの残りが吹き飛び、首輪が巻かれていた魔装服の襟の部分が黒く焦げ、少し損傷したみたいだ。
魔力を流していなかったとはいえ、素の状態でもこの魔装服はかなり頑丈なのに、なんて威力だ。
私自身はノーダメージだが。
……最近、自分の頑丈さが怖い。
「う……ぅわあああああ!」
「な、なんだよ、こいつはぁ!」
「む?」
生き残った二人が逃げ出す。
こいつ等には私の腐攻撃見られたし、逃がすわけにはいかない。
ダッシュで逃げる男の一人に一瞬で追いつく。
私の身体能力を舐めるな!
追い付いた男の背後から、首筋に手刀を軽くトンッと当てる。
――メキャ!
「――っごぉ……」
「あ」
ぐでっと倒れる男。
意識を刈り取るだけのつもりだったんだけど……なんか音と感触が……。
そ、それよりもう一人だ。
もう一人にもダッシュで追いつき、今度は軽めに軽めにかる~く足払い。
――ボギッ!
「うがぁぁああああ!」
「あ」
……なんかまた音と感触が……。
男の足の関節が一箇所増えてる……。
「うがぁぁああああ!」
関節がもう一つ増えた足を抱えて、男はもがき苦しんでいる。
う、うむ……痛そう。
でも、これで逃げられないだろう。
痛みに転げまわる男をその場に放置して、もう一人の男の元へ。
首筋に手刀を当てた男は、うつ伏せに倒れてピクピクと痙攣してた。
良かった……死んでないようだ。とりあえず回復体位にするか。
うつ伏せ状態の男を転がして、仰向けにする。
「――っう……」
男は目から眼球が飛び出していた。
そして仰向けにした時に、全身をビクンと振るわせた後、動かなくなった。
……し、死んだ?
……わ……私が……殺した?
……ち、違うんだ。
こ、これはその……そんなつもりは無かったんだ。
よく漫画とかアニメで見る、手刀で意識を失わせるアレをやったつもりで……。
でもアレって漫画やアニメでは簡単そうにやってるけど、実際は凄く高度な技術だよね?
絶妙に意識だけ失う程度の衝撃とか分かんないよ……。
そもそも、今更だ。既に三人殺してるし。
ていうか、どうせ二人とも口封じで――そ、そうだ。
あともう一人、どうしよう?
「――あっ!?」
足を折った男が居た場所に目を向けると、そこに転がってるはずの男の姿が見えない。
「ええ? な、なんで? やばい! 逃がす訳には……」
まだ遠くには逃げてないはず。
唸れ! 私のPER!
意識を音や臭いに向ける。
僅かに聞こえる布擦れの音、自然物とは思えない薬品の匂い……見つけた!
草むらに潜む男に駆け寄る。
「――くっ! ま、待ってくれ! 殺さないでくれ!」
「ほ?」
見つかって、もう逃げられないと観念したのか、下草の中に隠れていた男は両手を上げて投降してきた。
……あれ?
両足で立ってるぞ?
「足はどうしたんですか?」
「……とっておきの中級ポーションで回復させたんだ」
あ、そっか! この世界には骨折を一瞬で直す回復薬が有るんだ。
足を負傷させただけで油断しちゃ駄目だな。
だけど、逃がさずに捕まえれて良かった。
さて、この男どうしよう……とりあえずは色々聞き取りかな。
というわけで、両手を上げたポーズで座らせる。
そして思いつく限り尋問。
その結果、色々な事実が判明した。
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