第13話
そんなある日。いつものように神殿に
「芽依様おはようございます」
「おはようございます」
聖堂には既に聖女の側付けの巫女がいた。
「
「あ、はい」
崩壊してしまった宝珠を修復するのは不可能なので、神の御力をお貸しして頂き、新しい宝珠を
緊張と期待で胸が
ある扉の前まで来ると、巫女は立ち止まって、芽依に道を譲った。
「ここから先は聖女様しか入れません。真っ直ぐ前へお進み下さいませ」
「分かりました」
礼を言い、扉の中へ入る。階段を降り、地下へと進んでいく。階段は整備されているが、なるべく自然の空気を入れる為に他はそのまま。つまり、
「ーーーー……すごい」
石床の先には
湖の手前に、少女が一人。
芽依の声に気付いたのか、少女がこちらを振り返った。
「ここは我が国で唯一、神域と呼ばれる場所です。私も、特別な時でなければ立ち入りません」
芽依は頷き、ゆっくりと少女の元へ進んだ。
隣に立つと、幼い聖女は
「準備に時間がかかってしまって申し訳ありません。では、始めましょう」
「ーーーーはい。お願い致します」
* * *
その日の夕刻。
儀式は無事に終わり、新たな宝珠を
「…………終わった……」
神の御力をお借りするのは、想像以上に体力を持ってかれる。ドッと疲れが出てきて、
「明日帰国するの?」
「ん……うん、そう」
眠気と闘いながら、トキの質問に答える。
目的は宝珠だったから、役目が終わった今、ここに長居は出来ない。早めに帰国して、今度は
やることは
「……ねぇ、芽依」
「…………え!?は、はい」
パチッ、と芽依の眠気が吹き飛ぶ。
トキに名前を呼ばれる事に慣れ無さすぎて、毎回少し緊張する。
起き上がって、トキの正面に座る。
トキも、部屋の中に入って芽依と同じく座った。
「なら、あの悪魔も連れて行こう」
「え?悪魔って……ケイルの事?」
芽依の言葉に、トキは頷く。
「フィリアの言葉が本当なら、あの人とケイルは一緒に居ないほうが良い。じゃないと、たくさんの人が死ぬよ」
「え……それってどういう……」
トキは少しだけ顔を下に向けた。
「……魔王の分身は、産まれた時から負の感情を押し付けられる。……でも、深い闇と対照的な光の存在にも出会う。その光を目の前で失わせる事で、魔王の力を発動させ、力の
……トキも、そうだったのだろうか。孤独の中で出会う、大切な存在。それを、失った事があるのだろうか。
それを聞くことはしなかった。けれどーーーー。
「私はそれでも、ケイルとフィリア様は一緒にいるべきだと思う」
「…………」
「もちろん、トキくんの言ってる事も分かるよ。大切な人が目の前で死んでしまったら、寂しいし、つらい」
芽依も、目の前で、父親を亡くした事があるから、……分かる。当時の状況は、
「でも、2人を引き離しても、それは同じことだよ。大切な人が目の前から消えてしまうのは、ツラい。だからこそ、一緒にいるべきだと、私は思う。……だって、ただ悲しみや孤独に包まれて一生を終えるより、大切な誰かと居られるほうが、きっと幸せだから」
芽依はトキを真っ直ぐに見る。
「トキくんも。……大切な存在に出会えたからこそ、今のトキくんが、あるんだよ。きっと、その人との光があるから、トキくんは
トキの瞳が
「だから、2人は絶対、一緒にいるべきだと思う」
「ーーーー……」
ーーーートキは、昔の
産まれてすぐに瞳の色を
トキに食事は必要ないのに、
……そして、トキが十を
恐ろしくて、助けて欲しくて、叔父に話を聞いてもらいたかった。けれど……。
彼はボロボロの姿で地下牢にやってきた。
地下牢に通っていることが、教会の人々に知られてしまったらしい。
彼は、教会に黙ってトキに会いに来ていたのだ。なぜ、そんな事を、と、聞きたかったけれど……ーーーー彼の笑顔を見たら、何も言えなくなって……。
階段を上がるとすぐに見つかり、囲まれた。怒りと恐怖に満ちた人々は、叔父の話など耳もくれず、矢を放つ。
ーーーーバッ、と抱き締められ、叔父の背に矢や剣が次々と刺さる。
ーーーーいや、だ。
トキは初めて
『……トキ、ごめんな。ずっと、寂しい思いばかりさせて、遠くでお前を見ていることしか出来なくて……こうして、お前を抱き締めてやることも、してやれなかった……本当に、ごめんな』
『……おじ、さん』
ーーーーいやだ。
トキの声の震えが伝わったのか、叔父はトキを見つめる。そして、同じくらい震えた声を出しながら、暖かい笑みを浮かべた。
『ーーーー……大きくなったなぁ、トキ』
ーーーー死なないで。
パタ……ン、と、叔父の体が倒れる。それを見て、トキは感情と共に、力が爆発した。
ーーーーいやだ!
そして、その暴走した力は教会の人々を皆殺しにし、その後、トキも
あの時の、叔父の存在も、きっと魔王が
それが魔王の導きで、全ては魔王の
だから
でも、トキが死神になった事はきっと、魔王も予想していなかったはずだ。
それは、テヌートの存在があったからで……。
魔王の導きを上回るほどの光を、彼女にもたらせられれば、もしかしたら……ーーーー。
「……分かった。でも、どちらにせよ、もうすぐフィリアは死ぬ。その前に、芽依が想う事をやって、帰ろう」
「ーーーー……うん。ありがとう、トキくん」
彼女の笑顔に、トキも表情も少しだけ、
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