転生したらダンジョンがある日本でした。超実力主義の家に生まれたけど俺には才能が無かったので追放されましたが超強い魔剣に好かれたので人生イージーモード。「帰ってこい?かわいい義妹が泣くので無理」
にこん
第1話 名門からの追放、新たな生活
転生したらダンジョンが出来た日本にいた。
前世は普通の日本人だった。
そんな俺が10歳の誕生日を迎えたその日、実の父に告げられた。
「お前をこの家から追放する」
「えっ……」
「
俺は呆然と立ち尽くした。
周囲からはクスクスと俺を嘲笑うような声が聞こえた。
笑っているのは俺の兄弟たち。
「ゼロのやつ追放だってよ」
「ま、残念ながら当然だよな」
「生まれた時点で才能なかったもんなぁ」
「だから名前も零だもんな」
そんなことを言っている兄弟たちの左手の甲が視界に入った。
剣の紋章が浮かんでいた。
2本や3本。
それ以上の者もいた。
あれは【剣の紋章】。
才能ある者に現れる勝ち組の証。俺が暮らしていた前世の日本にはなかったものだった。
父親の一条 正は俺の左手を取ってきた。
俺の手の甲には何も無い。
前世があった俺にとってみれば手の甲に何も無いのは普通のことなんだが。
未来では手の甲に何も無いのは才能なしの代名詞だった。
「ゼロ。お前にその名前を与えていて心底良かったと思っているよ」
父は俺を心底バカにしたような顔をしていた。
「才能ゼロだからお前には零という名前をくれてやった」
「……」
初めて聞いた。
俺の名前の由来。
バカにされるような由来の名前だなんて思ってもいなかった。
「立ち去れゼロ。お前は一条家には必要のない人間である」
「そ、そんな……」
目の前が真っ白になった。
でも、こういう人がこの場で冗談を言うようなことは無いって俺は理解していた。
だから悔しくても俺は答えた。
「はい」
父は言ってきた。
「ゼロ。分家がお前のことを欲しがっていた。そちらに行け」
父は俺の目の前にメモを落とした。
「まぁ。あんな貧弱な分家など、分家と認めたくないがね。一条の恥だ。お前はそんな恥の分家に言って恥同士傷の舐め合いでもしておくといい」
カツカツカツカツ。
父は俺の前から歩いていった。
俺はその場に残されたメモを拾って抱きしめた。
前世では思ってた。
(日本でもダンジョンとかできたらいいのになぁ。ワクワクするよなぁ)
って。
でも実際にダンジョンができてみたらとんでもない競争社会がそこには待ち受けていた。
俺は才能がないせいで、その競争に参加する権利すらなかったのだった。
試合を始める前から……負けていたようなものだった。
とんでもなく悔しかった。
まだ何も始まっていないはずなのに。
俺の人生は終わったような気がした。
◇
俺はその後メモに書かれていた通り指示された場所にやってきた。
少しだけ大きな駅のロータリー。
そこで待ってると声をかけられた。
「一条 零くんだね?」
顔を上げるとそこには優しそうな男の人とそれから俺と同じくらいの歳の女の子がいた。
「はい」
「良かった。私は五条 勇気。一条家の分家の者だよ」
自己紹介をすると五条さんは説明してきた。
「前々から君のことで君のお父さんからは話を聞かされていてね。それで引き取ることにしたんだ」
「あ、ありがとうございます」
ぺこり。
頭を下げると五条さんは女の子の方に目をやった。
「ほら、結衣も挨拶しなさい」
結衣と呼ばれた女の子は一歩前に出て頭を下げた。
「は、初めまして。五条 結衣です」
ぺこり。
頭を下げると勢いが強すぎたのか、背負ってたリュックから物が飛び出てきた。
「あっ……」
結衣は動けないようだったが俺は手を伸ばして飛び出てきたものを掴んだ。
それはクマのぬいぐるみだった。
(クマが好きなのかな?)
「はい。返すね」
返すと結衣は笑顔になった。
「あ、ありがとうございます!えーっと……零兄さん」
兄さん……か。
この子俺の事をもう家族として認めてくれてるんだろうか?
なんだか家族の一員として認められたことが嬉しくなってきた。
元々いた家ではこんな扱いを受けていなかったから。
『おい、そこのゴミ』
『おい、ゼロの無能』
こんなことを言われるのは当然だったからだ。
そんなことを思っていると勇気さんが俺に言ってきた。
「車で来てるんだ、着いてきてくれるかい?」
「はい」
俺はその後勇気さんの車に乗り込む事になった。
俺と結衣が後部座席で勇気さんが運転席だった。
俺が会話内容で困ってると勇気さんが話しかけてくれる。
「お父さんに言われたことは残念だったね。でも一条家は超実力主義だからね。そういうこともあるさ」
一条家は現在の日本を引っ張っていく超名門のひとつだったのだ。
俺はそんな名門で才能なしとして生まれてしまった。
だから酷い扱いを受けていた。
俺がそんな日々を思い出していると勇気さんは言った。
「僕のことはお父さんだと思ってくれていいよ。父さんって呼んでくれるとうれしい」
「はい」
お父さんに敬語というのも変な気もするがこの世界ではこれが普通なようだった。
少なくとも一条家ではこうだった。
勇気さんもそのことは分かっていたようで特に何か言ってくる様子はなかった。
「それから五条家も一応探索者を排出してるけど、本家ほどガチガチじゃないからさ。そこまで気を張らなくていいよ。のんびり行こうよ人生は長いんだからさ」
この人は優しい人だ。
でも……。
「いえ、俺には夢があるんです」
「夢?」
「七剣王、その1人になりたいんです」
この世界には七剣王と呼ばれる存在がいる。
読んで字のごとく、七人の剣の王のことだ。
俺がこの世界に生まれついたときから憧れていた。
(漫画やアニメに出てくるような、7人の英雄たち)
俺はその夢をできれば叶えたいと思ってる。
勇気さんはミラー越しに俺の手の甲を見てきた。
「剣王になるには最低限紋章が5ついるって話じゃ?」
「努力じゃ才能の差は埋められないと思います。でも、努力なしじゃなにも始まらない。だから俺はこれからも努力を続けるつもりです、勇気さん」
俺がそう言うと勇気さんはそれ以上何も言うことはなかったけど、結衣は話しかけてきた。
「剣王になるつもりなんですか?すごーい!!」
彼女は目をキラキラとさせていた。
だが、俺と勇気さんだけはその道の険しさを知っているのでそんな目なんて出来るわけもなかった。
それからしばらくして……俺たちは山の中の道を進んでいくことになった。
やがて大きな家が見えてきた。
武家屋敷というやつだった。
山の中にぽつんと1軒だけ立っていた。
「ついたよ。ここが五条家」
どうやらここが五条家らしい。
中に入ると、「かこーん」って、ししおどしの音が聞こえてきた。
すごい和風な家って印象だ。
(こんなのもあるんだな、ししおどしかぁ、初めて見たな)
それから俺は大きな屋敷を見た。
本当にでかかった。
(ここで俺の新しい人生が始まるんだな、とにかく、頑張ってみよう)
そう決意したときだった。
ザッザッザッ。
足音が聞こえてきた。
そっちに目をやると黒髪の男がこっちに向かって歩いてきてるのが見えた。
(歳は……俺より少し年上くらいか?それよりも……剣の紋章があるな)
その男の左手の甲には3本の剣が【米】の字みたいに交差するマークの紋章が刻まれてあった。
ちなみにこれは……【
もちろん剣の一本もない俺より才能がある。
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