第113話 七人の幹部
神器玉堕によって空中要塞を作った俺たちは、アジトの会議室の方で話し合いをしているサフランとロズリッダの元へと戻ってきた。
以前スラム街攻略の前に使った会議室とは別の部屋のようで、広い部屋の中央に一つの円卓があるだけだ。サフラン達はそこに座っている。
「ただいま。おや、何人か増えてるようだけど…話し合いはどうなったの」
部屋にはサフランとアザレアだけでなく、リーメルとメアとガーネットも呼ばれて着席していた。メアは何やらソワソワしているようだ。
「戦場に皆を残してきたから、早く要件を済ませてほしいのです」
「そうですね。フール様たちも戻ってきましたし、話をまとめましょうか」
サフランに席に座るように促されたので、俺たちも席に着いた。それと同時にサフランの話が始まった。
「アザレアの意見なのですが、この革命軍の発足時からメンバーが増え、指揮系統を調整することになりました。具体的には正式に幹部の位を設定することにしました」
「いいアイデアだと思うよ。聖教の神聖騎士団も近衛っていう幹部格がいたし」
「そしてその幹部というのが、ここにいるフール様以外の7人です」
円卓には俺の他にはサフラン、リーメル、ナッカ、ガーネット、ロズリッダ、アザレア、メアが座っている。
「彼女たちにも私と同じように、他の部下への命令権を与えます」
「これによってサフランへの負担も減るし、各自が自分で判断して動くこともできるようになるだろう」
「具体的な役割みたいなのはないの?」
サフランとアザレアが淡々と説明する中、ナッカが質問をした。
一応大雑把には決めいるようで、サフランが今までの総指揮、リーメルは主に騎士団を使っての諜報などの機動任務、ナッカは生産部門の責任者、ガーネットは戦場での魔法遊撃、ロズリッダがアジトの守護、アザレアが軍部総指揮、メアが軍部副指揮にして竜人族の部隊長という役割を想定しているようだ。
もちろん状況によっては臨機応変に別の仕事をする必要もでてくるが。
「私も幹部でいいのかな」
ガーネットが困った顔でサフランに訴えていた。ガーネットはこの中では年も浅く、自分は幹部にふさわしくないと思っているのだろう。
「大丈夫ですよ。あなたは魔法のセンスはありますし、権能も持っています。強く頼りになる人間なら部下が支えてくれるはずです」
たしかに弱い人間より強い人間の方が頼りになるだろう。その点でいえば、権能持ちのガーネットは申し分ない。
「最初から完璧を目指さなくていいから、頑張ってやってみたらいいよ」
「…うん。やってみるよ。でも困ったら助けてね」
リーメルの助言を受けてガーネットは幹部を引き受ける覚悟を決めたようだ。リーメルを始めとして、他のメンバーは幹部に任命されても動じた様子はない。リーメルとナッカは最古参なだけはあるな。
「メアはお姫様なのに戦場に出ていいのか。ターニャに代わってもらうって手もあるだろ」
「竜人族の皆は王の元でこそ士気が上がるのです」
「だからターニャにはメア直属の副官として支えてもらうことにした」
メアが姫なのに幹部として指揮官をしていいのかというロズリッダが抱いた疑問は、すでにメアとアザレアによって話がついていたようだ。しっかり者のターニャがいるならメアが暴走することもないだろう。
「じゃあこれで幹部という仕組みができたということで。次はこれからの作戦について…」
「その前に最後にフール様にお願いがあります」
俺が話を区切ろうとしたところで、サフランに止められた。
「お願いって?」
「せっかくなので私たち7人の幹部格の名称をつけていただけませんか」
「名称って…神聖騎士団でいうところの”近衛”みたいな?」
「そうです。フール様に名前を頂けたら、私たちの士気がさらに上がるので」
そんなの名付けても変わらないだろうと思い、同意を求めて周囲を見渡すが、全員が期待に満ちた目で俺を見ていた。どうやら全員が幹部の名称を欲しているようだ。
「幹部の名前か。でもそんな急に言われてもな…」
俺は7人に見つめられる中、一つのアイデアを絞り出す。
「7人…
「悩んだ割に普通」
「もうちょっとひねるかと思ったわ」
リーメルとナッカに小言を言われてしまった。だが二人も他の5人も、この名前に対して反対ではないようだ。
「ではこれから私たち
他6人からもそれぞれよろしくと言われる。彼女たちのこれからの努力や働きに見合うボスでなければならないと、俺にもプレッシャーがかかる。
7人の幹部格が誕生するほどの組織になったと感慨にふけりながら、俺たちは次なる帝国突入作戦についての話を始める。
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