第38話 能力確認1

「おはようございます。霧島さん、ですか?」


「はい。霧島志鶴です。今日はよろしくお願いします」


報告配信をした翌日。

ぼ……私はマジックヘルパーさんに訓練場がある施設へ送ってもらっていた。

今日は六華のリーダーと一緒に私の能力の検証をする。


「では、早速行きましょうか」


「よろしくお願いします」


車に乗り込むと静かに発進する。

まだ20代に見えるけど運転上手いな。

僕も前世では車の免許は取ってたけど、あんまり運転は上手くなかったからなぁ。


「霧島さんは今日の予定をご存知ですか?」


「はい。私の能力の確認、ですよね?」


「はい。本来なら操るものが分かったら似たような能力を持つ魔法少女を師匠として修練をするのですが……霧島さんの能力は特殊ですから」


「あはは……概念系でしたっけ?」


「はい。ですから同じ概念系の魔法少女、ソフィアンさんを師匠として能力の開拓をして頂きたいのです」


「ソフィアンさんって六華の方ですよね?私なんかのために時間を使わせてしまうのは申し訳ないですね」


「霧島さんもこの訓練が終われば六華入りですから。是非仲を深めて欲しいですね」


「え?私、六華になるんですか?」


「ええ。あれ?昨日に聞きませんでした?」


「聞きましたけど……てっきり冗談かと」


「冗談ではないですよ……霧島さんの能力があれば移動の問題が一気に解決できるんですから」


「あははー、すごい期待されちゃってますね。頑張ります」


「あ、すみません。プレッシャーをかけるつもりではなくて……」


「ふふ、分かってますよ」


「……もう。あ、着きましたよ」


「ありがとうございます。意外と街中にあるんですね」


「そうですね。元々あった建物を再利用してますから。

でも近隣の家には人はあまり住んでません。ここは前線に近いですから」


「そうなんですね」


「こちらです。ついてきてください」


「はい。お願いします」


マジックヘルパーの人に連れられて施設の中に入る。

受付をして、地下へ下る階段を歩く。

地下には遊具のない大きい公園のような場所があった。


そして、そこには人が一人立っていた。


「もしかして……」


「はい。あの方が六華、創造の魔法使いソフィアンさんです」


入り口の方で話していたのでソフィアンさんも気づいたようで、こちらに近づいてくる。


「初めまして。あなたが霧島さん?」


「はい。初めましてソフィアンさん。霧島志鶴と言います」


「今日はよろしくお願いしますね。ちなみに今日は何をするのか……?」


「はい。私の能力の検証と聞いています」


うん。とソフィアンさんが頷く。

そのまま振り返って訓練場の中心の方へ歩いていく。

慌てて私も追いかけようとするが


「あ、霧島さんはそこにいて下さい」


と言われたので、その場で待つ。

10メートルほど離れた場所でソフィアンさんは止まる。


「聞こえますかー?」


「はい、聞こえます!」


「では、能力を使って私の肩を叩いてみて下さい」


「分かりました」


あ、そういえば宣誓の内容考えてなかったな……。

うーん、出来れば霧島志鶴の背景に合った宣誓にしたいな。

………あ、そうだ。


「希望もなき世に彩りを」


体が薄く発光して魔法少女コスチュームになる。

そして能力発動。

空間に穴を開けてソフィアンさんの肩を叩く。


「……知ってはいたけど、驚きです。

本当に転移できるなんて」


「厳密には転移とは違うんですけどね」


「あ、そうなんですか?ちなみにどう違うのですか?」


「うーん……上手く言えないんですけど……私は転移って量子テレポーテーションみたいな現象だと思ってるっす。もちろん体を再構築してってわけじゃないっすよ?私の能力みたいに空間に穴が空いて、そこに入れば遠い場所に一瞬で移動できる、みたいなのは転移ではないと思うっす………あ、すみません」


「いえ、どうか楽な口調で。それでは霧島さんは自分自身の能力についてどう思われてますか?」


「ありがとうございます。では……私の能力は入り口と出口を作るって認識っす。例えるなら何もない空間にドアを付ける感覚っすね」


そういえ、この説明って前にもやったな。

その時もだけど、この説明どこか違和感があるんだよな。

実際にはポイントで交換した魔法だから特にイメージも理論も要らないんだけどね。


「………それはおかしいですね」


「おかしい、っすか?」


もしかして、魔法少女の能力じゃないって意味?

いやいや、今の説明からは絶対に分からないはず……。


「ええ。霧島さんの認識がそれなら、空間に現れるのは穴ではなくドアのはずです。でも能力自体は発動してますから、何処か被っている場所があるはずです」


「そう言われも……今まではこのイメージでやってたっすから、別のは全然思いつかないっす」


「ふふ、そうですよね。では気分転換に私の能力でも見ますか?」


「……いいんですか?」


まさか六華のリーダーの能力が見れるなんて。

情報としては知ってるけど、実際に見ればまた感想が変わるかもしれない。


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転移に関する理論を調べ漁ってました。

量子テレポーテーションって実際にあるんですね。SFの世界の中だけだと思ってました。理解しようとしましたが、10分で諦めました。


とりあえず体を量子的な何かに分解して、向こう側で再構築するらしいです。

技術の発展とはすごいですね。

作中で使う転移はもっとずっとシンプルで簡単なのにします。

ちなみに、宣誓はとある辞世の句を弄ったものです。原型はほとんど残ってませんね。

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