演目:甘美な毒

第31話 ゲリラ配信

目を覚ますと知らない天井が目に映る。

耳を澄ますとピッピッピッと規則的な電子音が聞こえてくる。

頭を動かして周りをみると白いカーテンで仕切られていている。


うん。病院のベットの中だね。

よーし第一関門は突破だね。

もしかしたら見つけられないかもと心配してたけど杞憂だったね。


問題は一つ。配信をするか否か。

これの答えはすでに出ている。

もちろんする一択だ。


こんな面白そうな場面は中々ないからね!

よーしタイトル適当に決めて……配信スタート!


【ゲリラ】ふふふ………【戦えない配信者】


113柱が試聴中 公開中

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:来たあぁあ!!

:前の配信すごかったよぉおお!!

:うわああ!!

:ただ叫んでる奴いて草

:タイトルw

フェシズ:これは……どういう状況かしら?

古参の神その1:病院にいるんじゃないか?

古参の神その2:確かに

古参の神その3:メルヘスくん怪我してるぅぅ!?

:その3……w


「あれ?名前がついてる神増えてる。もしかしてママがしたのかな?」


フェシズ:そうよぉ。最初からメルヘスの配信にいて応援してた神達。

ご褒美ってわけじゃないけど変えさせてもらったわ


「なるほどねぇ。古参の神達いつも見てくれてありがとね」


古参の神その1:アッ

古参の神その2:アッ

古参の神その3:アッ

:かろうじて声は出せたが、しかし………

:無理もない。あれは刺激が強すぎる………

:ああ、俺たちも直接銃口を向けられたら危なかった……

:何この茶番w


「さ、じゃあ配信に戻ろうか。その1さんが言ってた通り、ここは病院だと思う。

僕もさっき目覚めたばかりだから確証はないけど合ってると思うよ」


:それでその怪我は?

:怪我が気になる

その3:怪我大丈夫ぅ!?


「怪我は本当に負ってるよ。魔物たちに軽くね。

ちゃんと死なない程度に調整してるから大丈夫だよ」


:というか何で怪我負ってるの?

:これも例の計画なの?

フェシズ:ところでそのかっこは?


「そうそう、怪我は計画の内だよ。そしてこの姿は変装してる。

しばらくはこの姿がメインになるかな?」


僕は前の配信や月に一度のポイント支給によって得た変装アイテムで変装してる。

莫大な数のポイントが手に入ったから他にも交換してるけどね。

現在、僕は黒髪を腰の半分くらいまで伸ばしている。


普段は謎に包まれている性別も完全に女性型に変えていている。

ワンポイントはチラチラと見える八重歯。

イメージはイタズラ好きな後輩キャラって感じ。


:一体何が始まるというのだ……!

:まーた何か面白そうなことやってくれそう

古参の神その3:計画の内ならいいけど……気を付けてねぇぇ!

:その3……なんか残念お姉さんって感じだな

古参の神その1:普段のメルヘスとはまた違った良さがあるな

古参の神その2:可愛い!!

:その1はしっかりしたお兄さんだな

:じゃあ、その2はメルヘスちゃんを溺愛する次男か?

:つ フェシズお母さん その1お兄さん その3お姉さん その2次男 メルヘス次女

:は?ヘルヘス三男だろ

:はいはい性別戦争は別でやれー

:どちらにしろ弟妹キャラなのは決定なのねw


コメントを見て笑っていると、コツコツと足音が聞こえてきた。


「ごめん誰か来たかも。コメント無視するからごめんね」


:おっけー!

:了解であります

:分かった〜


足跡はどんどん僕の方まで近づいてきて、カーテンがシャッと開けられる。

おそらく看護師さんが少し驚いた顔をするがすぐに切り替えて質問を投げかけてきた。


「おはようございます。体調はどうですか?」


「……大丈夫です」


「そうですか。今から先生を呼んできますので安静にしていてください」


「はい」


改めて自分の体を見る。

右足にはギプスが付けられていて、腕は包帯で両方ぐるぐる巻き。

頭や顔を触ってみると包帯やらガーゼやらがいっぱい貼られていた。


チラリと病院の服の中を見るとお腹から鎖骨の辺りまで包帯がぐるぐる巻きだ。

きっと他にも打身やら小さい擦り傷とかもあるんだろう。

どうりで痛いわけだ。


まぁ魔物を支配下に置く時に体半分無くなった時に比べればなんて事ないけどね。

あれはもう痛いって表現じゃない。

痛いわけじゃないよ?熱いし、意識は半分飛んでるし、もちろん激痛だし。

なんていうんだろう?こう、あ、やばいって感じがするのよ。


「お待たせしました。無事に目が覚めてよかったです。体調は大丈夫とは伺いましたが念のため軽く検査しますね」


来た先生は女性で検査は色々体を触られた。

包帯を剥がして傷の具合を見たり、聴診器を使ったりね。

一通り終えると先生はうんと頷いてカルテらしきものを書き終える。


「経過は順調ですね。回復してます。それでですね」


「はい」


先生はそこで言葉を区切ると僕の方を見る。

どうした?


「貴方に面談を申し込んでいる人がいるんですが、どうしますか?」


「面談、ですか?一体誰が?」


「対未確認敵対生物対策省。通称魔法少女省です」


その言葉に僕は表情には出さないが、ニヤリと笑った。

掛かった、と。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

久しぶりに配信コメントとメルヘスの掛け合いを書きました。

作者は骨折した事あるんですが、骨折した瞬間って痛いんですけど30分もしたら痛みがなかったんですよね。


だから体調はどうか?と聞かれて大丈夫と答えたのですが、不自然ではなかったですかね?

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