第17話 戦闘訓練(終了)

背の低い植物が風に揺れる。

乾いた空気に赤い砂の混じるだだっ広い荒野。

辺りには生物の気配が無く、いや生命体はいるのだが、危険を察知して遠くに逃げている。


そんな荒野に少女が二人。

片方の少女が手を前に翳す。それと同時にもう片方の少女も手を前に翳す。

すると空に一条の赤いレーザーが走り、少女に迫る。


しかし、レーザーが少女に到達する前に爆発が起こり、打ち消し合う。

レーザーを打ち消した少女、バルニアは手を振って爆発によって生じた土煙を払う。

が、土煙が晴れた先にはレーザーを打ち出した少女、フィリアは居なかった。


フィリアは右に大きく回りながら接近していた。

その手には赫赫と光る短刀が握られている。

バルニアは咄嗟に爆発を起こして距離を取ろうとして、やめた。


爆発を起こすには遅すぎたからだ。バルニアとフィリアの距離はすでに槍の間合い程に近かった。

フィリアは短刀を構え、バルニアも徒手空拳で迎え討とうと構える。

しかし、バルニアは視界の端に赤く光るものを見つけた。


頭で思考するよりも早く反射で後ろへと跳んで下がる。

その判断は正解だったようで、バルニアが一瞬前にいた場所に二つのレーザーが降った。

しかも嫌らしいことに、一つのレーザーは肩を、もう一つのレーザーは足を狙っていた。


つまり移動せずに、しゃがんだりしての回避を選択しても確実に当たるようになっていたのだ。

バルニアは更にバックステップをして距離をとる。

フィリアはそのままのスピードで距離を詰める。


バルニアはあまり近接戦が得意ではない。

魔法少女としての能力は『爆発』なので、近接戦で使おうものならそれは自爆だ。

時にはそんな選択が必要になるかもしれないが、それは置いておく。

魔法少女として高い身体能力はあるが、オキの様に技を持っているわけでもない。


対してフィリアは魔法少女としての能力は『火』である。

魔力量の少ない彼女は魔力操作を鍛え、意識して能力を使わないと敵を害する程の火力を持たない。

最初は中々コツが掴めず、成長が止まっていたが、コツを掴んでからは早かった。


最初にできたのは『火』を寄せ固め、刀の形にした通称“赤刀“。

中々の切れ味で、斬った断面や切り傷を『火』で焼き、ダメージを稼ぐ。

敵が弱かったら擦り傷から炎が吹き出し、そのまま全身を焼く事もできる。


次にできた技は赤いレーザー。通称“鮮火“。

これは理科の虫眼鏡実験を参考に作った技。

仕組みは簡単で『火』を限界まで圧縮して待機。


発動させたい時に小さい穴を開ければ、そこから勢い良く『火』が飛び出してレーザーになる。

他にもいくつか技を作ったが、よく使うのはこの二つだ。

話が大きく逸れたが、要するにフィリアは遠近両方の技を持っている。


しかしバルニアは近接戦で『爆発』は使えないので、近接戦に弱い。

遠距離では経験の差や様々な技に翻弄され、勝てないと判断したフィリアはなんとしても近接で戦いのである。今回は“距離を詰める“と言うことを意識し、そのために策を弄し、技を行使する。


近接戦のことはその時に考えれば良いと思ったのだ。

しかし、忘れてはいけないのはバルニアの経験だ。

自分の弱点など百も承知。模擬戦も多くこなしている彼女は距離を詰められることなど慣れている。


もちろん、どう対処するかも熟知している。

距離を詰めようと足に力を溜めて、一気に加速しようとするフィリア。

ドンッ!と大きく足音を鳴らしながら一歩目で加速………する予定だった。


実際にはドンッ!と言う効果音に代わり、ドッカーン!!と言う音が響き渡った。

吹き飛ばされるフィリア。致命判定で模擬戦終了だ。



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「あぁー!また負けたー!!」


「いやぁ今日はひやっとしたなぁ」


はぁ……今日で28連敗目………。

バルニアさん強すぎ!!


「ていうか、いつ地雷仕掛けたんですか?

全く気づきませんでしたよ」


「バックステップで後ろに下がった時だね。あの状況なら変に迂回せずに真っ直ぐ詰めてくるって思ったから仕掛けるのも簡単だったよ」


「あー、あの時ですかぁ。あの地雷強すぎですよ。爆発する瞬間までどこにあるか分からないですし」


「そーゆーコンセプトで作ったからねぇ。でも本当に今日はひやっとしたよ。特に接近した時のあのレーザー。ほんと、勘に頼って正解だったわぁ」


あれか。あれは確かに上手く出来たと思う。

避けられるとは思わなかったけど。

本当はしゃがんだ所をレーザーをヒットさせて、近接戦に持ち込むはずだったのに。


「やっぱり経験の差は大きいですね」


「そうだねぇ。でも明日からは最前線行くんでしょ?」


「はい。もう半年ですからね、私が魔法少女になってから」


そう、魔法少女になってからもう半年経った。

長かった………ここまで来るのは本当に長かった。

魔法少女になったわーい。って言ってた頃が懐かしい。


「さて、じゃあ今日の訓練終わろうか。どこの戦線になるか分からないけど、安全に、命大事に行動するんだよ?」


「はい。死にたくありませんからね」


「うむ、よろしい。じゃあ次会うときは一緒にご飯でも食べに行こうね」


「はい。バルニアさん、半年間本当にありがとうございました!」






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「ふぃい………これで全部の支部に仕込めたかな?」


:近畿支部は……仕込んでたな

:東北も仕掛けてた

:九州も大丈夫

:四国支部とか北海道支部はいいの?


「あー四国と北海道ね。あそこほぼほぼ魔物の領域だし、良いかなって。ぶっちゃけ疲れちゃった」


:でも、そんな場所にこそに強い魔法少女とかいるんじゃない?

フェシズ:確かにそれはありそうね。油断はダメよ?

:まぁでも疲れたって気持ちは分かるかも


「でしょぉ?本当に疲れたんだって………事故に見せかけて色々するの本当に大変なんだから……。でも強い魔法少女がいるって意見も分かるんだよ。公式では六華がどこにいるかなんて書いてないけど、領域の支部にいる可能性は高い」


:魔法少女の情報が手に入りにくいのがしんどいな

:ほんと、徹底してるわぁ

フェシズ:ポイントで何か買ってみるのはどう?


「ポイントは温存かなぁ。欲しい魔法があるんだよ。あーやっぱり不安になって来た。

四国と北海道も仕込んで………いや、もう魔物に襲わせよう。奥の方から強いやつを連れてこれば良いや」


:適当www

:急に雑になりおったw


「はいはい、適当言うなー。これで配信は終わりね。お疲れ様ー」


:乙〜

:お疲れー

:またねー

フェシズ:また来るわ!


『配信を終了します。お疲れ様でした。

ポイントは後日計算されて支給されます』



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ども、祓戸です。自動車学校で怖い先生に怒鳴られながら運転してきました。

そんな怒らなくても良いじゃん………。

あとまた期間が空いて本当にすみません。春休み、色々忙しい……。

休みとはなんぞや?

他の作品を読ませて頂いて思ったのが、面白い作品はコメントの人との掛け合い(?)も面白いですね。憧れます。

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闇堕ち魔法少女の作り方@配信中 祓戸大神 @haraedoookami

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