第10話 天使と精霊

「で、皆今の状況を一言で表すならどうする?」


:ピーンチ……?

:何故こうなった??

:どうなってんの?


神様たちも困惑しちゃってるねぇ。

あ、どうもメルヘスです。

つい先程、魔法少女に虫籠を目の前に掲げられ、ゴッツイ機械に放りこまれました。


そして色々混乱してるうちに検査が終わったらしく、三人の女生徒と一緒に車に揺られ、何処かの施設に入りました。

なんか色々ロックが掛かってる扉をいくつも抜けて現在、自然が豊かな部屋にいます。


コメントと同じ事を言っちゃうけど、敢えて。


どうなってんの??


あ、ちなみに今の僕は透明人間です。

実はピンチの時用にとギフトカタログから買っていた物があって、それが月隠しの飴。

効果は飴が溶けてなくなるまで見つかりにくくなるという、ちょっと効果が怪しい一品。


いやまぁ神様たちが売ってるやつだから効果はあるけどね?

一応怖いから精神魔法を掛けてます。

軽く『恐怖』しとくと無意識で僕に目を向けないんだよ。


ちなみにお値段5000ポイント。

え?お前そんなにポイントなかっただろって?

そこはマジで運が良かった。


ほらポイントをゲットする方法っていくつかあるでしょ?

その中のチャンネル登録者数×2ポイントってやつ。

あれのポイント支給が月に一回、月末なのよ。


で、支給日が一週間くらい前にあったってわけ。

まぁ効果が見つかりにくくなるだけだから、かなり強引なフェードアウトだったよ。

多分あっちの認識はいつの間にか僕が消えてて、しかも誰も行方を知らない。


まさに狐に摘まれたって感じだね。

幸運だったのは誰も深くは突っ込まなかったことかな。

多分、政府には僕の容姿とかを報告されるだろうけど、まぁ許容範囲だ。


「で、何ここ」


:うーん、これは壮観

:だねぇ

:凄い協力的ね


何だか僕の認識と神様たちの認識に隔たりがあるような。

僕には雄大な自然しか見えないんだけど。


「みんな何か見えてるの?僕は自然しか見えないけど」


:あれ、天使って見えなかったっけ?

:進化すれば見えるよ

フェシズ:精霊がいるのよ。それも引くくらいに


「精霊?あーもしかして選ばれし人しか見えない的な?」


:適正ないと見えないね

フェシズ:見えなくても精霊に気に入られれば見えるようになるわ

:ギフトカタログで見えるようにあるアイテム買えるよ


「あーポイントはなるべく使いたくないからパス。というかないし。進化したら見えるようになるんだったらいいよ」


それで、精霊が引くくらいいる部屋に連れてこられたわけだけど、何すんの?


「あの、そろそろ説明してもらえませんか?いきなり連れてこられて混乱しているんです」


お、ナイス女生徒A。

まさに僕が聞きたかったことだ。


「はい、これから説明させていただきます。まずは何の説明もなしに連れて来て申し訳ございません。

機密保持のためにこうした対応を取りました」


「機密保持?なんや物騒な単語が出て来たなぁ」


機密保持だぁ?

精霊の存在は世間に知られてるんじゃないの?

こっちについて図書館で調べてた時思いっきり出てたじゃん。


「申し訳ございません。特に契約書などの書面にサインなどは求めませんのでご容赦を。

では、この部屋について説明します。この部屋にはたくさんの精霊がいます。

あなた方にはこの部屋で精霊と契約していただきます」


「精霊ってえ?この部屋にいっぱいいる小さい生き物って全部精霊だったんですか?」


「はい。あなた方は先程の検査の際、虫籠の中に何かいると答えましたよね?

魔法少女になる適正のない人達には何もないように見えるのです」


「ということは私たち魔法少女になる適正があるってことですか!?」


「はい、その通りです」


んー……でもそれはおかしいよね?


「でもウチら前の検査んときは何も見えんかったんやけど?」


そう、本当に見えてるならもっと早い段階でここに連れてこられてるはずだ。

けど実際にはこうやって新しく魔法少女候補が出てきてる。何でだ?


「それは私どもにも分かっていないのです。精霊の方が何かしているという仮説未満の仮説はあるんですけど」


:精霊が気に入ったからよね?

:それしか考えられない

:アイツらの選定基準は本当に謎だ


僕が色々何でたらコメントの方で答えが出てた。

なるほど。精霊に気に入られたからなのね。

そして選ぶ基準は分からないと。


神様と精霊に直接の関係はないのか?

精霊が何のために存在しているのかは知らないけど、魔法少女に一枚噛んでいるのは確定だ。

そして、その魔法少女は恐らく天使の肉体に近い。


転生した天使天使に似た魔法少女。転生させた神様。魔法少女に関わっている精霊。

これの関係は………


「お話は分かりました。それで精霊と契約と仰っていましたが、具体的な方法は?」


思考の海に沈んでいた僕を引き上げたのは女生徒の一言だった。

女生徒は先程の警戒を解いたようで先程のトゲトゲさが消えていた。

うんうん。僕も気になるな。


「方法は簡単です。あなた方が気に入った精霊に契約を求めてください。

ただし契約を持ちかけるのは自身に寄って来ている精霊だけにしてください」


「それは何でなんや?別にどれでもええんちゃうん?」


「寄って来ている精霊の方が相性が良いのです。寄って来ていない精霊に契約を持ち掛けてもいいですが、その場合大幅に戦闘力が落ちてしまいます」


へーえ、いい事聞いちゃったなぁ。

メモしとこ。いつか使えるかもしれない。


:メルヘスが悪い顔してるw

:絶対碌でもないこと考えてるw

:魔法少女逃げて〜w


碌でもないとは失敬な。

碌でもないって値打ちがない、つまらないって意味なんだよ?

配信を面白くするために色々考えてるってのに。


「じゃあ私はこの子!ビビッと来たの!」


「あなた……もっとちゃんと考えなさいよ」


「ウチはこいつやな」


「で、神様。この子達どんな精霊選んだの?」


:最初の子が火の精霊

:次が風の精霊ね

:あ、最後は水みたい


見事に基本属性だな。

土がいればコンプリートじゃん。


「皆さん選べましたね。では後は魔法少女としての登録についてのアレコレです。

正直大変だとは思いますが、ご協力ください」


「あのー……ちなみに具体的には?」


「中々な量の書類の確認とサインですね。現在、ご家族の方達をお呼びしているので一緒に頑張ってください」


うわぁ、かわいそ。

僕も前世での高校とかでちょっと書類作業してたけど、そんなのの比じゃないよね?

流石にそこまで一緒するのは嫌だなぁ。


「流石に書類を確認してサインするだけの作業を眺める気はないので撤退します」


:それはそうwww

フェシズ:良いの?その書類に何か情報があるかもよ?

:俺らもあんまり見たくはねぇw


「だよねー。あ、ママの言うことも分かるけど、飴がもう無くなりそうなんだよね。

この飴買ったからポイントすっからかんだし、最終手段を消費し尽くすのは勘弁だよ」


フェシズ:それもそうね


「じゃあ、撤退…………これどうやって出よう……」


:www

:そういや行きは人間について行って入ったんだったw


結局、女生徒たちについて行って撤退した。

締まらないなぁ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


読んでいただきありがとうございます。これで一章の陰謀詭計は終わりです。

この章の名前の通りメルヘスが情報を集め、悪巧みする感じ……ではなかったですね。文章にはしてませんが、この時点で色々考えていると言うことで。

次章の名前は考えてませんが、一章とは大幅に、そして元の予定より大幅に変わります。タグの暗躍が生きて、きたら良いなぁ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る