DEATH ANGE

アカツキ千夏

Prologue

 今日こんにちから少しだけ未来となった日本。時間が進むにつれて科学の発展と共に人々はある能力の存在に気づく。その能力に名前が付けられることはなく人間の眠れる能力と言う意味を総称して潜在能力せんざいのうりょく

 潜在能力は、一人一人が秘めている能力。しかし、誰もが秘めているというだけで全ての人間が能力を自由に操れるわけではない。どのような理由、どのような経緯で能力が覚醒するのかは不明であり、能力の大きさも、属性も個人差がある。

実際に能力があるということを知っているだけで扱うまでは至らずに普段通りの生活をしている人々が九割を占めている。

―――――ぽちゃん、ぽちゃん。

 真っ暗闇の中、遠くで水が滴る音が聞こえる。

『水の音、一体どこから』

 少女と思しき甲高い声が響く。

―――――ぽちゃん、ぽちゃん。

 次第に大きく響く水音。近づいている様に感じる。しかし、どこから聞こえているのか検討がつかない。何故なら視界で判別しようにもここは暗闇の中。目を開いているのかさえ分からない。確認をする術がない。ただ立ち止るには勿体無いそう思った少女は歩き始める。

――――――ぱちゃっ、ぱちゃっ。

 すると足元から水の音が聞こえた。不思議に思い足元を確認する。そして手を足元へと伸ばす。途中、手に布の様な物に触れる感触を得る。布に気付くとそれは真っ白で身に纏っているようだった。意識が鮮明になると暗闇に光が射した様に触れた白い布は少女が身に纏っているシンプルなワンピースだと分かった。同時に足元からは冷たい感触。音から想像するに水だとわかる。

『ここは、一体』

 少女は不思議に思う。右も左も無い。ただ広いだけの水の上。訪れた記憶など当然、無い。何より何故、水の上に立っていられるのか疑問が残る。

「助けて」

「もう大丈夫だよ」

 ふと誰かの泣いている声が聞こえる。小さい女の子だ。だけど知らない子だ。見たことも会ったこともない。だが必死に助けを求めている女の子を放置する事は出来ない。少女は手を差し伸べる。少女の手を掴む女の子。すると女の子は姿を変える。まるで急速に成長するかの様に。

「ここにいてはだめ」

 少女へと姿を変えた女の子。顔は白い靄が掛かっている様で判別が出来ない。ただ成長した女の子は少女の手を引きながら水の上を走る。早く優しく腕を掴みながら。突然の事で動揺する少女。しかし成長した少女は構う事なく、「ここにいてはだめ」と言いながら光指すほうへ向かい走る。

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