二度目の青春は

@abcd_abcd

第1話

突然だが俺には前世の記憶がある。

前世での名は斎藤和真、今世では中野という姓に健太と名付けられた。


前世では高校を卒業した後、町工場に就職。

それからすぐに交通事故によって俺はおそらく死んだ。

激しい衝撃とともに意識を手放した。


そして、気が付くと俺は中野健太として3歳児となっていた。

正確に言えば、斎藤和真の記憶が完全に蘇ったのがこのときということである。


はじめは戸惑いはしたが、中野健太であるということを自分でも不思議とすんなり受け入れることができた。


恐らくだが、この身体は斎藤和真のものではなく、中野健太のものであるからということであろう。


月日が経ち、俺は中学3年となった。

現在は14歳で、今年で15歳。

前世も合わせれば、32歳くらいである。

おっさんに片足突っ込んだやつが中学生というのも中々キツイものがあるなと自分でも思う。


そんな俺は悩んでいる。進路についてだ。

前世では高校に進学したが、今世ではどうするか。


前世では高校に進学せず、就職する者もそこそこにいたが、今世では去年の1年先輩で1、2人いたかどうか程度で、殆どの者は高校に進学している。


因みにだが、中野健太が生まれたのは斎藤和真が死んで10年後くらいである。

時代は変わったものだなと少し複雑な気分になる。


今世での両親だが、特別に裕福であると言えるわけではないが、前世での両親と比べればかなり裕福である。

少なくとも、学費等の面で苦労するということはなさそうだ。

両親も俺が当然高校に進学すると考えているようだ。


俺がなぜ悩んでいるのかというと、簡単に言ってしまえば後ろめたさからである。

俺は今世での両親を大切に思っているし、ちゃんと親孝行をしたいと思っている。


たが、俺は中野健太であると同時に斎藤和真でもあると言える。

こんな半端者で、中野健太のなり損ないとも言える俺が両親2人からの愛情を受け取る資格があるのだろうかと、俺は一刻も早くに収入を得て2人に恩返しを、罪滅ぼしをすべきではないかと考えている。


答えは出ない。

いや、自分の中での答えは決まっている。

高校には進学しない。就職する。

だが、両親は当然進学すると考えている。

説明しなければならないであろう。

進学しない理由、前世の事を。


どう話そうか、話したらなんて言われるか、受け入れてくれるだろうか、拒絶されるだろうか。

わからない。正直恐い。


そうして、今日は眠った。

明日は学校だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る