第2話 図書館を狙うもの

 彼らが駆け出すと、図書館の内部は彼らが最初に歩いた時よりもさらに複雑で多様な世界に変わっていたように感じられた。


 書棚が生きているかのように移動し、通路は織り成す迷宮のように変化していった。


 しかし、アルバスは迷うことなく、確かな足取りで進んでいった。


 晴人はその後を追いかけるしかなかった。



「この図書館は生きているんですか?」


 晴人が息を切らしながら尋ねた。



「ある意味ではね。図書館はここに集められた知識と物語によって形成されている。そして、それらは常に変化し続けている。」


 アルバスは説明した。


 彼らが目指す場所に近づくにつれ、空気が震えるような感覚が増していった。


 そしてついに、目的の場所に到着した時、二人は目の前に現れた光景に息をのんだ。



 一冊の貴重そうな本が浮かんでおり、その周囲を不気味な影が取り囲んでいた。


 影は本を手にしようとしているが、本が発する光によって阻まれている様子だった。


「こいつらが図書館を狙う者たちだ。」


 アルバスが静かに言った。


 彼の手からは輝く光が放たれ、影たちに向けられた。



 晴人は何をすればいいのか分からなかったが、アルバスの横で力を貸す準備をした。


 すると、彼の内からも未知の力が湧き上がってくるのを感じた。


 それはまるで、この図書館が彼に何かを託そうとしているかのようだった。


 アルバスと晴人が力を合わせて影たちに立ち向かうと、部屋には激しい光と影の戦いが繰り広げられた。


 戦いは短かったが、二人の守護者にとっては長く、厳しい試練のように感じられた。


 最終的に、影たちは撃退され、本は無事その場所に戻った。


 晴人は深く息を吸い込みながら、自分が何者かの力に触れたことに驚愕していた。


「よくやった、晴人。これが守護者としての最初の勝利だ。」


 アルバスは彼を褒め称えた。



 晴人はまだ全てを理解しているわけではなかったが、この異世界図書館での彼の役割が少しずつ明らかになってきたように感じた。


 この日を境に、晴人は図書館の守護者としての道を歩み始めた。


 未知の冒険と出会いが彼を待っているが、彼はもはやその運命から逃れようとは思わなかった。



 戦いが終わり、図書館の静寂が再び訪れると、晴人は自分の内に湧き上がる新たな感覚に驚き、同時に深い満足感を覚えた。


 彼とアルバスは、本を守り抜いた場所から図書館の中心へと戻る道を歩いた。


 その途中で、晴人はアルバスに多くの質問を投げかけた。


「アルバスさん、僕たちが戦ったあの影たちは一体何者なんですか?」


 アルバスは深く息を吸い込みながら答えた。


「彼らは、この図書館に蓄えられた知識や物語を悪用しようとする者たちだ。彼らは、知識が持つ力を自分たちの欲望のために利用しようとしている。」


 晴人はその言葉を噛みしめながら、彼らの戦いがただの偶発的な出来事ではなく、図書館とその守護者にとって重大な意味を持つことを理解し始めた。


「でも、なぜ僕が守護者に選ばれたんですか?他にもっと経験豊富な人がいるでしょうに。」


「それはね、守護者はただの力ではなく、心が選ぶのだ。」


 アルバスは晴人の目をじっと見つめながら言った。


「君の純粋な好奇心と、知識への尊敬が君を選んだ。そして、君が持つ未来への希望が、この図書館にとっても大切なのだよ。」


 その言葉に励まれ、晴人は自分の新たな役割に対する自信を少しずつ感じ始めた。


 彼らが図書館の中心に戻ると、そこは晴人が初めてこの世界に足を踏み入れた時に見た、壮大なホールだった。


 床から天井まで書棚に囲まれ、その中央には大きな机があり、古い地図や書類が散乱していた。


「これから君の訓練を始めよう。」


 アルバスは宣言した。


「守護者としての責任は重大だ。しかし心配するな、私が君のそばにいる。」


 訓練の日々が始まった。


 晴人は異世界の知識を学び、守護者としての技能を磨いた。


 彼は魔法のような力を扱い、さまざまな世界の歴史や文化について学んだ。


 そして、図書館を訪れる多くの訪問者たちとの出会いが、彼の世界観を広げていった。


 晴人の冒険はまだ始まったばかりだった。


 彼はこの広大な図書館の秘密を解き明かし、守護者としての使命を果たすために、未知の挑戦に立ち向かっていく。


 そして、その過程で彼は自分自身の真の力を見つけ、図書館とともに成長していくのだった。

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