第22話 アリゲルト王国へと
「国王陛下。奇襲です。敵が攻めてきました」
兵士が国王に告げる。鬼気迫った声で。
「何だと? いきなりか?」
「はは、そうでございます」
「何国だ?」
「新興国、ランスハルトです」
ランスハルト王国。魔族の国で三年前にでき、今猛威を奮っていると有名な国だ。
そうまさに今人間の国を滅ぼして回っていると有名な国だ。
そんな国が攻めてきた。
だが、ありゲルト王国は違う。他の国に比べ得t軍事力があるのだ。
その自負を持って、
「なるほど。あの魔族の国か。兵を率いて敵国を打て!」
そう王様は強く言った。自信満々で。
「さてと、数十年前の恨み返してもらおうか」
「魔王様もなにかされたのですか?」
「いや、言ってみたかっただけ」
やりたいことはやらなくちゃ気が済まない性分なのだ。魔王側として戦う。大いに結構だ。悪役も一回やってみたかったんだ。
「そうですか」
「まあそんなことはどうでもいい。私は君たちと違って楽しめればいいんだから。そうこれはお遊び。アリゲルト王国には悪いがな」
そんな中二病感のあることを言ってみる。心なしか異世界に来てから中二病感のある発言が増えているような気がする。異世界だからかな? 魔王気分に浸ってるからかな?
まあそんなことはどうでもいい。
今から自分の召喚された場所、その国を滅ぼせるのだ。そんな楽しいことはない!!
「さてと、もう見えてきましたね。あの国が」
「ええ、魔王様。今からあの国を滅ぼすのが楽しみです」
「そうか、私も楽しみだ。今から起こる残劇が」
なかなか悪者っぽい感じでできてるな。やったー。なんせ私魔王様だもん。
「行けええええ! 滅ぼせ、殺せ、人間どもを駆逐しろー!」
号令をかける。さーて楽しみだ。
その言葉に合わせわあつぃの部下たちが地上に降り、その場に待機していた人間兵たちに襲い掛かる。
「ぐあああああ!」
「きゃああああ」
「うわあああああ」
どんどんと私の部下によって人間が殺されていく。その光景はまさに私を興奮させてくれる。最高だ、この景色は最高だ。
「さて私も行くか」
「魔王様がいくような場面ではございません」
「いや、私が行きたいだけなんだ」
定石なんて関係ない! 楽しまなきゃそんそん!
「なら任せました。どうかお気をつけて」
「お気をつけて? 私がやられるわけないじゃない」
「そうですね」
「ふふ。行ってきます」
そして私は楽しさを追い求めて出撃する。
とはいえ、私は別に国を滅ぼしに行くわけではない、楽しみを探しに行くのだ。
そして一人の人間を見つけた。私が放った魔獣に追いかけられているようだ。「うわわあああ。助けてくれー!!!」と叫びながら。
……面白いな。これから起こるイベントがすらすらと頭の中に思い浮かばれる。
「よーし君に決めた」
そして私は岩陰から飛び出す。
「ねえ、魔物に襲われているの?」
「はい、そうです。あ、あなたは?」
「私は詩織。そんなことはどうでもいい。私がしびれさせてるけど、長くはもたないわ。私がいい逃げ場所を知っているからついてきて」
「は、はい」
私はなんか主人公を助けるキーキャラクターみたいな感じで案内した。流石に自分が放った魔獣を殺すなんて残虐な真似はしない。雷で一時的に動きをマヒさせただけだ。
しかし、詩織という偽名も我ながらシンプル過ぎるな。一文字しか変えてないんだもん。
そして走りながら軽く会話をする。
その中で彼は多くのことを話してくれた。急に魔族が侵略してきたこと、その際に大量に魔獣が来て、否どんどんと殺されたこと、そして今私によって救われたこと。
聞けば聞くほど、面白おかしくなって笑いを抑えるのが大変になった。
まさか私があの魔族、魔獣たちの親玉とは思っていないだろう。
「ここが安全よ」
そう言いながら周りの魔物にここには来るなという指示をした。
敵の親玉といた方が安全。皮肉だな。
だけど実際にこれでこいつには数十分の安全が確保されたという訳だ。
「ほかのみんなは無事ですか? 俺には家族がいるんです。あいつらも助けてやんないと」
ああ、そう言えば皆ちりちりに逃げたと言っていたな。
「無駄よ。今の状況ではたぶん殺されたわ。殺されてないとしても今の私たちにはできることはない。私はただあなたが目に見えたから助けただけ。家族まで助ける義理はないわ」
「そうですか」
そもそもその家族の生死に興味が無い。
「さてとお茶しましょう。少しでも気を紛らわせるしね」
呑気にティータイムしている場合か!? と私ならツッコむだろう。
「はいお茶よ」
「あ、ありがとうございます」
「こういう時冷静さを保つためにお茶はいいわよ」
「そうですね」
さてと外の状況はどうかな。こちら側が優勢みたいだ。それは当たり前だろう。主力がいない時を狙ってきたんだから。
「今は暇でしょ?」
「……そうですね」
「これでもしない?」
そして私が取り出したのはボードゲームだ。この世界で人気のあるボードゲームで、感じとしては将棋に近いらしい。
将棋のルールは知らないが、これのルールは知っている。
「いいですね」
そしてボードゲームやらカードゲームで遊んだ。
「はあ、こんな国が窮地に陥っているのに、幸せでいいんでしょうか」
「幸せでいいんだよ。だって、不幸な人間なんてこの世に居てはいけないと思うし」
「ありがとうございます」
そろそろ空間に出した粒子も濃くなり、アルコールが回ってきたころかな。
そう、何を隠そう。私は魔法でアルコールを巻いていたのだ!!
「一緒に寝ませんか? もう夜も遅いですし」
「そうね……」
そして二人で横になる。
「ねえ、触っていいよ」
そして私は服を脱ぎ始める。そして私の裸体が彼の目に映る。今更裸体を見られようが何ら関係がない。女性の裸体に興奮しない男などいない。それがどんな危機的状況でもね。
「え? いいんですか」
そしてその後、私は一八禁ワードなどを口に出し、興奮しているようにふるまう。私は別に興奮なんてしてないのだが。
「さて始めましょうか」
「さてとあなたに一つ言わなければならないことがあるわね。私は実は魔王よ」
数時間後。目覚めた彼に私は話しかける。
「は?」
青年はわかりやすく固まる。なかなかに面白い。
「では、理解出来ないまま、苦しんでもらいますか」
「ぬああああああああああ」
「しんどいでしょ。私はね拷問用の魔法をいくつか開発したの。これがそのうちの一つよ。現代で言うところの電気に近いものを発してるの。しんどいでしょ」
電気なんて知らないでしょうけどね。
「なんでなんだ。ならなぜ俺を助けたんだ」
「助けてなんてないわ。ただの玩具を拾ったに過ぎないの。でもあなたに同情するわ。別の相手だったらすぐにあの世に行けたのに、私に会ったせいでこうなってしまったんだから」
希望を与え、ふるい落とす。絶望を見るための常套手段だ。
「うわあああああああ」
彼は相変わらず泣き叫ぶ。
「ねえ、苦しい? 苦しいでしょ。苦しんでもらえて本当にうれしいわ。私の長年の努力も報われたわけね」
「なんで、昨日はあんなことをしたんだ」
「ああ、それね。楽しませてから苦しめようと思っただけよ。でももう悲鳴以外喋らないでくれる?」
一緒にボードゲームやらをした相手を拷問する。これはこれで楽しいことだ。
「さてとお茶を飲みましょうか」
苦しんでいる彼を横目にお茶を飲み始める。
「ぐああああああああ」
「ねえBGM、うるさい。もう少し小さく苦しんで。私が満足する苦しみ方をしたら解放してあげるかもしれないわ」
「ど、どのように?」
「そうねえ、死にたくないとか連呼してくれたらいいわ」
「し、死にたくない。助けてくれ。嫌だあああ」
「うん。そんな感じ」
はあ気持ちがいい。癒される。
「ああでも飽きたわ。死んで」
「え?」
私が拳を握りしめた瞬間に青年の身体が分解する。
この音が気持ち良すぎる。
「よし! 行くか! 次なるおもちゃを探しに」
そして周りを千里眼で見る。すると戦いの主戦場が見えた。
「めっちゃ苦戦してるじゃん」
所詮は烏合の衆。私がいなきゃダメか。
「はああああああ!」
手に魔力を込める。
「行け!」
そして魔力を解放して、空に上げ、魔力の雨を起こす。もちろん落とす場所は王宮の前、主戦場だ。
「グアア!」
「きゃあああ!」
「ひいいいいいい」
何人もの人が断末魔を上げる。それを聞いて愉悦感に浸る。
「よし! いい感じ!」
戦場を遠距離で荒らし、そして私は主戦場に向かう。流石に舐めプをして負けるわけには行かない。
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